近年問題化することが増えてきている「パワハラ」。問題が表面化すればパワハラを起こした当事者が責められるケースが圧倒的に多く、例えば上司なら「ダメ上司」とのレッテルを張られてしまうことも。
もちろんパワハラを起こすこと自体がダメと言えるが、「パワハラ上司」の中には、仕事はできる有能な人も少なくないようだ。
「やることに誰も口をはさめない状況」が問題
YOMIURI ONLINEに、労働ジャーナリストの金子雅臣氏の解説による「有能なのに...『パワハラ上司』になってしまう人の3つの特徴」という記事が掲載された(2016年1月8日)。
「どうしようもない部下」を持った上司がパワハラを咎められ、「『指導は正しく』『仕事熱心で、部下に高い水準の仕事を求める』ことのどこがいけないのか」と考え込むケースがままあるが、こうしたパワハラ上司には、
「これまでの仕事で極めて高い評価を受け、かつ実績のある人(仕事の実績)」
「仕事熱心で仕事に対する並々ならぬプライドと自信を持っている人(プライドと自信)」
「第1、第2の点に支えられて、彼や彼女のやり方は他人からも一目を置かれ、やることは間違いないと周囲からも思われがちな環境になっている(職場環境への影響)」
という3つの特徴があると指摘。
第3の点が「彼のやることに誰も口をはさめないような状況」が作り出す環境で、「他人の意見を受け入れない独善性を生み出しがち」だとし、
「相手の気持ちを理解したり、相手の意見を受け入れたりすることができれば、指導のやり方も相手に合わせて変えることができます」
「他人からの『やり過ぎ』との指摘や意見に耳を貸すことができれば、謙虚に指導方法も変えられるはずです」
とアドバイスしている。
気に入らない人間を退職に仕向ける
ネット上では、こうした「パワハラ系有能上司」についての声が度々書き込まれている。
Q&Aサイト「人力検索はてな」では、仕事ができる上司が、理想通り仕事ができていない時に怒って「仕事で使う工具(モンキーレンチやハンマー等)や箱等を投げたり壊したりします」との被害報告が(2010年2月28日)。
「発言小町」でも、「業績はよくて上層部にはとても気に入られている」という上司が、
「怒鳴ったり人を罵倒したりというのもありますが、気に入らない人間や自分を慕わない人間を、まわりに悪口を言ったり、そのまた上司に報告して評価を落とすようしむけて、仕事をまわさなくしたり、結果退職にしむけていきます」
と、なかなかヘビーな例が寄せられている(12年7月7日)。
その他、ツイッターを見ても
「上に媚びるのうまくて仕事は尊敬するくらいできる上司のパワハラに抗う術がわからない...」
「前の会社に、誰からも尊敬されて、凄く仕事が出来る上司がいて、その人に気に入られて同じ部署に引き抜かれたけど、何でも自分基準で考えて、私のやるコト全てにダメ出ししてきた。結果、酷いパワハラ受けた末に辞めたけど、その人は最後までそれがパワハラだとは思ってなかったな」
といった投稿があり、少なからぬ人が悩まされているようだ。
「仕事ができても上司失格」
社員研修・人材開発の情報サイト「PHP人材開発」では、パワハラ事例を紹介するコーナーで、「完璧主義者の上司が、期待通りの成果を出せなかった部下を長時間糾弾する」というケースを掲載。
「能力があり、仕事のできる上司は、部下にもそれを要求することから、パワハラを犯しやすい傾向があります」としつつ、
「管理職の職務は、部下たちに成長を促して集団としての力を増大させることです。(中略)がんがん叱責するのではなく、『こうすればよくなる』と具体的に改善指導を行うことが求められます。また、叱るときでも、必要以上に部下を追い込んでは上司として失格です」
と、厳しく指摘している。(MM)