誰かが無断で使っている痕跡が! 社用車の私的利用を大目に見ていいのか

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   そろそろ、夏を予感させるような日差しが眩しい季節になってきました。ドライブなど、この時期が一番気持ちいいですよね。皆さんは、ご自身でお車をお持ちでしょうか。地方では「一人一台」が当たり前。都心部だと、逆に免許すら持っていないという人もいるかもしれません。駐車場や維持費などの問題もあって、車をあきらめているという人も少なくなさそうですが、「若者の車離れ」などと言われつつも、やはり車はあると便利ですよね。

   今回は、車は車でも「会社の車」を私的に利用した場合について、ご相談をもとに詳しく解説していきましょう。(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)

事例=社用車の不正利用、上に対処してほしいのだが、先輩が......

ここに停めたはずなのに、だれかが......
ここに停めたはずなのに、だれかが......

   僕の勤務している事業所には営業用の社用車が3台あります。もちろん私的利用は禁止なのですが、どうも私的に使っている同僚がいるようなのです。休日の前、最後に使って駐車場に戻したのは僕だったはずなのに、休み明けになぜか駐車の位置がズレていたり、女性の営業社員はいないのに女性用のアクセサリーが落ちていたり。1台だけガソリンカードの給油回数が妙に多いと経理から指摘されたこともあって......。

   営業チームの先輩に相談してみたのですが、「まぁ、うちの事業所は成績もいいし少しぐらい大目に見てやってもいいんじゃないか」とあまり真剣に取り合ってくれません。僕としては、悪いことはしないでほしいので、上にはきちんと対処してほしいのですが、先輩が黙認している以上、どうすることもできないのでしょうか?

弁護士回答=業務上横領罪が成立、会社には厳格な管理が求められる

   ルールを守っている人からすると、社用車の私的利用は見過ごせませんよね。同僚もどうせバレないだろうと安易な気持ちで使用しているのではないでしょうか。

   社用車の私的利用が禁止されているにもかかわらず私的に利用した場合には、会社のものを権限なく使用したことになりますので、刑法上、業務上横領の罪に問われる可能性があります。仮に、私的利用分のガソリン代を自腹で払っていたとしても、勝手に車を利用していることにはかわりないので業務上横領罪が成立します。

   もっとも、会社が、個別の事情から、ある従業員に社用車の私的利用を認めていた場合には、業務上横領罪は成立しません。しかし、会社の社用車の利用方法について権限のない先輩が、社用車の私的利用を黙認したとしたら、業務上横領罪が成立することにかわりはありません。

使用者責任や運行供用者責任が問われる可能性が

   会社は、社用車が私的に利用されていないかどうかについて、厳格に管理する必要があります。というのも、従業員が社用車を私的に利用している最中に事故を起こした場合、会社が責任追及される可能性があるからです。

   まず、民法では、会社には「使用者責任」があると定められております。

   「使用者責任」とは、従業員が仕事中に誰かに損害をあたえた場合には、会社も責任を負うことをいいます。ここでいう「仕事中」とは、実際に従業員が会社の仕事をしているときだけでなく、第三者から見て、その従業員が仕事中であると見える場合も含まれます。

例えば、宅配業者の従業員が業者の制服を着て運転中に事故等を起こした場合には、実際には宅配業務のための運転ではなく、仕事の合間に買い物に行くための運転中であっても、第三者から見ると、その従業員は宅配業務中に見えるので、会社は使用者責任を負う可能性があります。

逆に、出張先から自家用車で帰る途中に事故を起こした場合には、第三者から見ても、その従業員が仕事中であるようには見えないため、会社は使用者責任を負わないこととなります。

   次に、会社が社用車を管理支配し自動車の運行により利益を得ている場合、自動車損害賠償保障法という法律で、会社は運行供用者として責任を負うこととされています。これを「運行供用者責任」といいます。

   「運行供用者責任」も、仕事中の事故である場合に限定されず、会社が責任を負う可能性があります。

   同僚の行為は犯罪行為に該当する可能性がありますし、万が一事故を起こしてしまった場合は、会社にも迷惑がかかります。同僚や先輩は社用車の私的利用について軽く考えているようですが、決して「営業成績がいいから」という理由で許されることではなく、場合によっては処分が下されることもあります。きちんと上司に報告し、指導してもらうようにしましょう。

ポイント2点

●社用車を無断で私的に利用した場合には、仮に私的利用分のガソリン代を自腹で払っていたとしても、刑法上、業務上横領の罪に問われる可能性がある

●従業員が社用車の私的利用中に事故を起こした場合、仕事中の事故である場合に限らず、会社が責任を負う可能性がある

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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