2019年 12月 6日 (金)

終身雇用がなくなって困るのはだれか 若者向け政策を読むポイントを

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多くの労働者には果実が与えられぬ

   とはいえ、中にはこう考える人もいるだろう。

「たとえ長時間労働しなければいけないとしても、自分はずっと雇用が保証されるほうがいい!」

   そう言い切る前に、自分の勤めている会社を冷静に見てみよう。誰もが知っている大企業なら、そういう働き方をすれば確かに65歳まで雇用は保証されるかもしれない。銀行や東電みたいな、潰れられると社会が困る大企業なら、いざとなったら国が税金で何とかしてくれるだろう。

   でもね、恐らく読者の過半数が在籍しているような、世に知られていない中小企業っていうのは、たとえ身を粉にして働いても、経営が危なくなったらすぐに社員を切るし、かりに訴えても、危ないのは事実なんだから不当解雇には多分ならないし、国も見向きもしないだろう。要するに、会社の9割を占める中小零細企業で働く労働者は、終身雇用という果実が与えられぬまま、滅私奉公という負担だけが押し付けられているわけだ。

   なんのことはない、その度合いのひどい会社がいわゆるブラック企業というやつで、それを根絶したいのなら、法律をこういう風に変えるしかない。

「労働時間に上限を設ける。あわせて、一定の金額を払えば解雇できるように規制緩和もする。そして、大手企業から中小零細企業まで、必ず守るべき同一のルールを作る」

   同一労働同一賃金も、そうやって労働市場を流動化した末に実現されることになるはず。そもそも解雇に際して一定の金額を支払うようルール化することは、現状、そうしたものの少ない中小企業の労働者にとって有利な、実質的な規制強化であり、強力なセーフティネットになるはずだ。大手の"終身雇用"という看板を守るために中小企業の労働者が反対する義理など何もない。

   これから参院選が近づくにつれ、各党とも若者の耳に心地よい様々な政策をアピールするだろう。すばり、ホンモノとニセモノを見分けるポイントは、その政策が「痛みを伴うものかどうか」だ。

   世の中にただ飯は無いのだから、誰かにとってメリットのある政策は、必ずどこかしらに痛みが伴わないとおかしい。誰も痛みを感じず、みんながハッピーになれる式の魔法の政策というのは、たいていは効果が無いか、若者がもっと苦しくなるオチしかないということを、元祖氷河期世代としては警告しておこう。(城繁幸)

注※=筆者は特定の政党を推薦はしないが、そのシンポジウムにおいて、おおさか維新の会のみが「長時間労働やブラック企業対策には終身雇用にメスを入れることが必要」と明言していたことは、事実として明記しておきたい。

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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