黒字だけど目標に届かない 社長の悩み、元はこんなところに

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「自分が社長に就任してからというもの、毎期毎期どうしても目標を達成できないのですが、どうしてなのでしょうか」

   副社長時代からお付き合いのあるシステム開発販売Y社のH社長から相談を受けました。

  • どうすれば目標に手が届くのか
    どうすれば目標に手が届くのか

高すぎるということはない

   H社長は創業者である先代を継いで8年になります。社長就任直後にリーマンショックがあり、いきなり試練のスタート。そのドン底状態からの回復過程において今度は先代が亡くなり、平時の業績管理について教えを請うべき存在から十分な引き継ぎがされないまま、手探りで業況の回復に努めてきました。

   基本的に同社の開発力の強さもあって黒字体質に戻りはしたものの、なぜか目標には毎期届かないという状況が続いているというのです。目標が高すぎるのかと思い少しそれを下げてみても、結果は同じなのだと。

   「社内の営業部門にヒアリングをして、8年間連続で目標に届かない原因とその改善策について所見を聞かせてほしい」と社長に頼まれ、Y社を訪問しました。はじめに目標設定の妥当性判断を検討しましたが、目標そのものが高すぎるということはなく、ストレッチ目標(背伸びをすれば届く程度の目標)として妥当と判断できる水準でした。

   となると、疑ってみるべきは目標管理の方法になります。管理者に担当者の行動・実績管理をどのようにしているのかを聞いてみて、どうやらここに問題がありそうだと気づきました。ありがちな管理の抜け穴が見えてきたのです。

月次や週次の管理に不備が

「基本は週次で担当者の行動を管理しています。実績管理は毎月末に締めて、年度目標に対する進捗率をチェックし社長に報告しています」

   通常、目標の管理の方法としては、年次、半期、クオーター(3か月)、1か月、1週間、1日と期間の取り方にバリエーションがあります。どこの会社でも当然実施しているであろうものが年次管理。企業の年間業績目標と営業部隊の年次目標が完全リンクするのは当たり前です。しかしY社の場合、その後に続く月次の実績進捗管理と週次の行動管理において、本当の意味で実績管理ができているとは言えない状態だったのです。

   Y社のようなBtoBのビジネスモデルの場合、業種特性や主要クライアント特性に応じて、まず季節性を加味した期間別目標設定をする必要があります。

   例えば、公共団体が主なクライアントなら年度末近くに受注が大きくなるとか、遊戯施設相手ならゴールデンウィークや夏休みといったクライアントのピーク時前1~2か月が自社の稼ぎ時になるとか、です。それを踏まえて、基本はまず半期、そしてクオーターの目標を立て、さらにそれを受けて、月々の目標設定とそれにリンクした行動管理を実施していく必要があるのです。

   ところがY社の目標実績管理は、大きく年次のみ。あとは月次の結果管理と、それとはリンクしない週次の行動管理。これでは担当者が短期の目標を捉えにくく、「いつまでに何をどれだけやらなくてはいけないのか」について把握しきれず、漠然とした1年後の姿しか見えないのも当然です。

   目標は最低でも月ごとに設定されるべきで、仮に積み残しがあれば、それを翌月以降にどう割り振って繰り越すかを含めた、月次目標の再構築も必要になります。すなわち、常に明確な目前の目標を意識して担当者が活動できていないことに問題がある、と私は思ったのです。

   日本でも話題になった『やってのける~意志力を使わずに自分を動かす』の著者で、目標達成メカニズム研究の第一人者であるハルバーソン教授は、こんな実験レポートを紹介しています。

達成期限が長くなるほど

   「ダイエットをする」を志す場合、「食べる量を減らす」という目標を立てた人よりも、「摂取カロリーを、1日1500キロカロリー以下にする」という具体的計画を立てた人のほうが、食べる量が早期にかつ確実に減る。

   「レポートを提出する」ことに対して、単純に提出期限だけを伝えた学生よりも、「いつ、どこで、どのくらい作業をするか」の計画を立てさせた学生のほうが、期限内かつ早期提出率が圧倒的に高い。

   実験を通じてハルバーソン教授が結論づけたことは、ハードルの高い目標、あるいは長期にわたる目標は、その達成に向けて行動計画や期間目標を具体的に細かく設定するほうが、行動率も目標達成率も上がるということでした。我々も目標管理に関しては、経験則として「目標は達成期限が長くなればなるほど、締切直前追い込み型になり、達成が危うくなる」と感じてはいるところですが、まさに理論的にそれを裏付ける研究であると言っていいでしょう。

   「御社の営業はまず、毎月毎月何をどれだけやるべきなのかを担当者にしっかりと提示し、月次の管理を単なる進捗報告で終わらせないことが年次目標達成への第一歩でしょう」とH社長、および営業管理者をはじめとするY社営業チームにお伝えし、月次目標の組み方、管理の仕方を簡単に指示させてもらいました。

   翌日、H社長からメールが入りました。

   「ぼんやりとしか見えていなかった『今やるべきこと』が見えると、どうやら楽しさが増すようで、営業のスタッフは熱気にあふれて皆で改善に取り組み始めました」

   社長念願の年度目標達成は今年度こそ実現できるかもしれません。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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