2024年 4月 25日 (木)

ハンコ押しといて「知りません」 組織のラストマン精神、何処へ

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枠が増えるほど無責任の連鎖に

   ハンコといえば、筆者が新卒として入った銀行業界は、ハンコ社会の最たるものだろう。伝票、稟議書、契約書、受取証などあらゆる書類に押印欄があり、最低でも「作成者」「承認者」の2人、重要な稟議書になれば、支店⇒本部⇒役員と10人以上のハンコが見事に並ぶことになる。

   そのハンコの「重み」について、新入行員の研修でベテラン行員から次のように叩き込まれたのを、30年近く経った今でも鮮明に覚えている。

「これから君たちは、何度となく印鑑を押すだろう。最初は小さな担当者印だが、管理職になると一回り大きな検印になる。当然責任も一回りも二回りも重くなる」
「印鑑を押す時には、心して押すように。脅かすようだが、君たちが印鑑を押した書類について何か問題が起きたら、何年経っていようが必ず追いかけられて責任が問われるぞ」

   ハンコを押す枠が増えれば増えるほど、無責任の連鎖が広がりやすくなるという。承認印を押す際に、部下に対して「ホントに大丈夫だろうな。何かあったら君の責任だぞ」などと口走る上司は論外だが、「誰かがちゃんとチェックするだろう」「みんなで渡れば......」と内心思ってしまうのが人情ではないだろうか。

   しかし、ハンコを押した以上は「知りませんでした」は全く言い訳にならない。特に、意思決定権限と責任をもつ者は、重要事項を知らなかったこと自体が職務怠慢であり、懲戒処分または法的処罰の対象となるということを肝に銘じなければならない。そのために担当者よりも高い報酬をもらっているのだ。

   もちろん、ラストマンとして気概は、担当者にも必要だ。自分の作った文書、自分がチェックした文書にハンコを押して上に回す時、自分の真価が問われる瞬間となる。

   「盛り土」問題については、築地から豊洲への移転が長引くことにより生じる損失や不便も無視できないが、小池知事には都議会も含めて組織の膿(うみ)を徹底的に出し切ってもらいたい。原因を徹底的に究明し、不正行為の責任者を厳正に処分しなければ、不祥事は必ず再発する。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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