2024年 4月 20日 (土)

新海誠ご縁の会社「君の名は」 【知っておいてもいい企業6】

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   「知っておいてもいい企業」シリーズ6回目は「新海誠」がテーマです。2016年8月に公開された「君の名は。」が大ヒットの新海誠監督、かつていくつかの企業のCMなどを手がけたことがあります。

  • 新海誠制作のCMを紹介する大成建設のホームページ
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CMデビューは地元有力紙

   CMは信濃毎日新聞(2007年)、大成建設(2011年~2014年)、サントリー(2016年)の3社。このうちサントリーは「君の名は。」とのコラボレーション作品。

   また、野村不動産グループのイベント企画用ショートフィルム・アニメーション作品「だれかのまなざし」(2013年)と、教育事業のZ会とのコラボレーション企画「クロスロード」(2014年)をつくっています。

   今回はCMの2社(サントリーを除く)とショートフィルムの2社を紹介します。

   新海誠監督が初めて企業CMを製作したのは2007年。信濃毎日新聞のものでした。

   同紙は、長野県でトップシェアを誇る地方紙で、地元出身の新海監督(同県小海町生まれ)を起用した格好でした。CMのテーマは「大切なことを、伝える」。

「小海線から見える朝日、夕日が好きだった(中略)日が沈みかけて、水を張った田んぼに夕焼けが映っていた。東京だと高層ビルに空がそのまま映りこむ。長野県だと田んぼに映りこんでいた、と気づいた」

   当時、地元テレビ局のインタビューにそう答えた新海監督。作品はわずか15秒(2パターンあり)ですが、その15秒に長野県の風景と、伝えたいというまっすぐな気持ちを詰め込んだ名作CMに仕上がっています。

   余談ですが信濃毎日新聞、戦前の主筆桐生悠々による反軍的社説をはじめ、その反骨精神で知られています。60年安保闘争の報道では、政府寄りの論調に傾いた朝日・毎日・読売など主要紙7社に同調せず、北海道新聞とともに反権力の姿勢を貫きました。

   そのため1960年代、左翼系のマスコミ志望者はこぞって信濃毎日新聞と北海道新聞を目指したそうです。私の父もこの2紙を志望し、信濃毎日新聞は最終選考で落ち、北海道新聞に入社したのでした。

「ずるいCM」とライバル社がため息

   次にCMを製作したのが大成建設です。2011年12月に「ボスポラス海峡トンネル」編(トルコ)、2013年12月に「スリランカ高速道路」編、2014年8月に「ベトナム・ノイバイ空港」編がそれぞれ制作・公開されました。キャッチコピーは、同社で1992年以来使用されている「地図に残る仕事。」。

   3作品に共通しているのが、主人公となる技術者とその来歴。「遠い記憶→現在の仕事」という流れになっています。

   ボスポラス海峡トンネル編では、女性の技術者が登場。学生時代はハイジャンプの選手でしたが、目標の高さを飛ぶことができませんでした。

「あの頃、飛べなかった1メートル65センチを、今、海底60メートルで思い出す」

というナレーションでボスポラス海峡トンネルの工事を紹介。

「どんな時間も、どんな彼方も、私は、今度こそ絶対に超えるんだ」

と締めくくるCMは、わずか30秒とは思えないほど深い名作となっています。

   公開当時、このCMを見たあるライバル企業の採用担当者は、こう言ってため息をつきました。

「『地図に残る仕事。』というキャッチコピーもずるいけど、あのCMもずるいよね。うちだって大成さんと同じ汗まみれの仕事なのに......。あのCMで何人、内定者を取られるのか、考えただけで頭が痛い」

   大成建設は大林組、鹿島建設、清水建設、竹中工務店の4社と合わせて「スーパーゼネコン5社」の一角とされています。売上高で言えば業界4位。5社の中では唯一の非同族企業であり、現場に与える権限も「他社より大きい」(ライバル社採用担当)。

1日インターンを予定するZ会

   Z会とのコラボレーション作品「クロスロード」は、瀬戸内海の島に住む女子高校生と、東京都心に住む(おそらくは豊かでない)男子高校生が、それぞれZ会の通信添削で学びながら東京大学受験に挑戦、合格する、という内容です。CMよりも長い120秒(15秒・30秒バージョンもあり)。

   通信添削の担当者が、顔さえ知らない(知るわけがない)高校生2人を、添削というコミュニケーションを通して温かく見守るというエピソードも、いいアクセントになっています。

   増進会出版社が展開する教育事業の「Z会」は、以前から通称として使われていました。2006年に増進会出版社が持株会社となり、子会社に教育事業を移して社名をZ会としました。通信添削が主力ですが、他に予備校、出版などの事業も。

   通信添削、予備校とも、難関大志望者が主力。2015年には東大個別指導教室プレアデスを東京・渋谷に開設し、2017年現在、東京・本郷にも教室をオープンしています。

   2017年2月に実施される同社の1日インターンシップ「あらゆる業界で役立つ!お客様の心を動かすプロモーション企画」(東京、大阪で合計3回実施)では、マーケティングの基礎が学べます。学生同士でプロモーション企画を立案するグループワークでは、企画書に赤字で修正を入れるとか入れないとか。

   野村不動産のイベント限定作品として2013年に製作された「だれかのまなざし」は、6分40秒の長さで「家族との絆」がテーマ。その後、劇場用作品「言の葉の庭」と同時上映され、企業サイトでも配信されていました(現在は終了)。「うる星やつら」のラム役で有名な声優の平野文がナレーションを担当し、作品に厚みを加えています。

   同社は「プラウド」ブランドで展開する高級マンションの開発、分譲が主力。不動産業界では5位です。持株会社の野村不動産ホールディングスは東証1部上場。Yahoo!ファイナンスによると、社員の平均年収は1015万円(45.4歳)。ただ、これは社員数32人のホールディングスのものであり、グループ全体(6546人)の平均はこれより下回るだろうと想像されます。

   今回は、紹介が大企業ばかりになりました。「君の名は。」の大ヒットから、新海誠監督を次に起用する企業はどこになるのか、そして、その作品でどんな世界観が描かれるのか、想像するだけでちょっと楽しみです。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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