苦しみ伴う大人のバレンタイン 「感謝」に値付けをするようで

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   もうすぐバレンタインデー。松屋銀座が20~40代の独身女性に対して行ったアンケートでは、「仕事関係の義理チョコ」にかける予算は「1つあたり870円」だそうだ。毎日イヤイヤ会社員をやっていた頃は、「会社で配るチョコなんて10円でも惜しい。バレンタインなんて男女差別のイベントは即刻中止にすべきだ」とすら思っていたのに、今年は870円どころか、8000円かけてチョコを配ろうと目論む私である。8000円で自己演出ができるのなら、安いではないか。

  • 予算でいくつ買えるだろうか
    予算でいくつ買えるだろうか

会社員時代の500倍をはたく

   なぜドケチな私が8000円も予算を割こうとするかといえば、14日は朝からテレビ出演の予定が入っているからだ。スタッフの皆さんに日頃の感謝を込めて、チョコレートを配ろうとニヤけているのである。

   継続的にオファーを頂いている、唯一の番組だ。スタッフの方々には公私共に助けられているので、どうにか「ありがとう」を伝えたい。ふだんは生放送の時間に追われて、なかなか感謝の気持ちを伝えられないので、バレンタインは良い機会である。30歳の「大人の女」らしく、格好良くキメたいではないか。予算は8000円。1年分の感謝としては安いかもしれないが、これでも会社員時代の500倍だ。

   早速、通販サイトを眺めて驚いた。「ゴディバ」や「デメル」「ロブション」などのド定番を狙おうと考えたものの、ロブションの「ボンボンショコラ」は、6粒で3400円(!)。20人以上いるスタッフさん全員に一箱ずつ配ろうと思ったら、合計6万8000円である。予算の8000円は軽くオーバーし、1か月の家賃並みの出費だ。完全に出鼻をくじかれ、がっくりと肩を落とす。

「感謝」に予算なんて、苦しくて

   よく、「芸能人の誰それさんは差し入れ上手で......」みたいなネット記事を見かけるが、芸能人の誰それさんはきっと、何万円もかけて「印象に残る差し入れ」をしているのだと思う。そうでもしないと、普段からいろんな差し入れに触れている人たちの印象には、とても残らないだろう。もちろん、自分は芸能人ではないが、テレビの現場でお世話になっている1人ひとりに思いを込めて配ろうと思ったら、8000円じゃすまない気がしてきた。

   スタッフさんたちの顔が思い浮かぶ。感謝の気持ちを、1人あたり数百円ですまそうなんて、なんだか申し訳ない。会社員の頃と違って、本気で感謝の意を表したいと思っているのは確かだが、心からの「感謝」に予算をつけようとすると、ひどく苦しいのだ。好意をお金に換算するのが苦しい。

   そもそもがプライスレスなものだから、予算は青天井になってしまう。お金をかければかけただけ、豪華な演出と表現ができるし、実際お金をかける人もいるが、私には感謝の気持ちを伝えるために何万円も使う度胸がない。結局ケチなのだ。ドケチな人間が、予算のことばかり考えながら選んだチョコなど、あげないほうがまだマシではないか。

   バレンタインまであと少し。一体、どうすれば我が胸中の「ありがとう」を昇華させられるのか、本気で悩んでいる。「1人あたり10円の駄菓子チョコでいいだろう」と、ドケチを貫いていた会社員時代の方が、まだ迷いはなかったかもしれない。(北条かや)

北条かや
北条かや(ほうじょう・かや)
1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。近著『インターネットで死ぬということ』ほか、『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』などがある。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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