誰もが悩んでいる難題 ニコリ愛想よくがコミュ力ではない(江上剛)

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   入社3年目です。取引先の方々と一度きりの名刺交換で終わってしまい、なかなか思うように関係が深まりません。おそらく、わたしの引っ込み思案の性格に原因があると思うのですが、このままではマズイという焦りもあります。いわゆる交流会や懇親会、情報交換会にも参加するようにしているのですが、自分を成長させ、ビジネスにも繋がる人脈を築くためには、どのようなコミュニケーションが有効なのでしょうか、教えてください。

   これも多くの方が悩む問題ですね。

  • お愛想はいらない!
    お愛想はいらない!

コミュニケーションは双方向

   コミュニケーション力は、採用の時や上司となって部下を管理する際、また部下として上司に仕える際と、すべてに問題になります。

   ですから、人事評価においてコミュニケーション力を重視する会社が多いのも事実です。

   では、コミュニケーション力とはなんでしょうか。

   ペラペラ、にっこり愛想よくしゃべることなのでしょうか。これは絶対に違います。薄っぺらい内容のことを、いくら喋っても相手の信頼は得られません。

   営業においてもペラペラしゃべる人は信用されず、むしろ無口の人のほうが信用され、成績も伸びることがあります。

   コミュニケーションとは一方的に話すことではありません。双方向です。

   昔、沢庵和尚が、お殿様から国を治める方法を教えてほしいと問われました。

   沢庵和尚は「上中下三字の説」を唱えます。要するに、上(殿様)と下(民衆)を繋ぐのは、「中」だというのです。「中」という字は「口」に縦棒「|」です。これが意味するのは口から出る縦棒、すなわち言葉で繋がねばならないというのです。

   上ばかり見ても下ばかり見てもダメ。口で上と下とを言葉、すなわち「|(縦棒)」で繋ぐ、すなわちコミュニケーションをしなければならないというのです。

   今も昔もコミュニケーションは悩みの種だったわけです。

「信頼」を得るためにする、大事なことは?

   東芝の不正会計事件がありましたが、あの問題も上と下とのコミュニケーションが原因です。上は「チャレンジ」と言ったのです。「がんばれ」の意味だったかもしれません。しかし、下は「不正をしてでも成績を上げろ」と解釈したのです。それが不正会計に繋がったのです。

   ですから、偉そうにあなたにコミュニケーション力を磨けと言っている上司も、じつはたいしたことがないのです。

   あなたは引っ込み思案であるとか、交流会に行くとか、コミュニケーション力を磨かねばならないと焦っておられるようですが、そんなことは考えないで、自然体でいいと思います。

「剛毅朴訥仁に近し」という孔子の言葉があります。要するに不器用でも正直で飾り気がない人物のほうが信頼できるということです。あなたは正直な人のようですから、信頼されることを心がければいいのです。

   また、「巧言令色鮮し仁」という言葉もあります。口が達者な人は信頼、信用できないという意味です。コミュニケーション力は口ではなく心なのです。

   どうしたら信頼されるのか? それは、第一に約束を守ること、第二に、できないことはできないということ、そして第三に相手のことをよく知ることでしょうね。

   第一、第二は言わずもがなですが、第三はなかなか実践が難しいです。

   あなたは、人と会う時に、相手のことを勉強してから会っておられますか? 相手のことを勉強するというのは、相手に関心を持つということです。

   関心を持たれているとわかれば、相手は喜びます。あなたに信頼を寄せるでしょう。

   徹底研究しなさいというのではありません。わかる限りのことを知ったうえで、相手に会うようにすればいい。

   そして相手の話を、静かに「聞く」のです。この「聞く」という姿勢が大事です。知ってますよという、いかにも調べてきました的な態度をとる必要はありません。「聞く」という姿勢、時折適切な質問を挟み込めば、相手は「おっ」と思い、「こいつ、俺のことを調べて来たな」と思うはずです。

   その「聞く」という謙虚な姿勢があなたの信頼を増し、それが最高のコミュニケーションとなるのです。ぜひ、実践してください。(江上剛)

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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