その26 電車内の通話禁止【こんなものいらない!?】

印刷

   埼玉の自宅から東京・池袋に出るとき、僕がいつも使う東武鉄道の東上線では決まって「電車内の通話禁止」の放送が流れる。

   「携帯電話のお願いです。車内ではマナーモードに設定のうえ、通話はお控えください。また混雑時、優先席付近では電源をお切りください」――。車内の壁にも同様の「注意」が貼ってある。

  • 「マナーモード」を呼びかける電車内の表示。
    「マナーモード」を呼びかける電車内の表示。

日本の電車は息が詰まる!?

   そういった案内は、東上線だけではない。池袋で乗り換える地下鉄・丸ノ内線では、そんな放送はないが、やはり車内の壁に「通話はご遠慮ください」とある。

   JR山手線も放送はないが、次に止まる駅名などを表示している液晶画面に、ときどき同様の注意が現れる。新幹線では確か「座席ではマナーモードにし、通話はデッキで」と放送しているはずだ。

   乗客のほうも、電話が掛かってきたら、たいていの人は「いま電車の中なので、あとで掛け直します」と言って電話を切る。僕もそうしている。そうしないで話し続ける人もたまにはいるが、そんな人には周りの「白い目」が集中する。

   どうやら、(新幹線のデッキを除いて)電車内では携帯電話で通話はしない、通話するのはマナー違反だという「国民的合意」ができている感じである。

   だが、どうして(とりあえず、優先席付近では別として)電車の中で通話してはいけないのだろうか。確かに、大声でしゃべられては周りが迷惑だろう。でも、巨体が疾駆するあの轟音の中で、小声で話すぐらいは許されるのではないか。

   それもいけないというのなら、ふたり、あるいは数人で談笑するのも、遠慮してもらわないといけないことにならないか。

   中国では、列車の中でも人々は大声で電話している。それを聞いた周りの乗客が電話の内容に割って入り、話の輪ができる。そんな場面に出くわしたこともある。中国人から「日本の電車は息が詰まる」と言われたこともあった。

   どうやら私たち日本人は、電車の中に限らず、公衆の集まる場所では携帯電話で話してはならないという「固定観念」にとらわれているのではないか。

日本人は「ちょい騒音」過敏症かもしれない

   いつだったか、僕はビアホールでひとりでジョッキを傾けていた。周りでは酔客が騒いでいる。やかましい。そこへ、携帯に電話が掛かってきたので、小声で話していた。しばらくすると、従業員が寄ってきて「携帯はご遠慮ください」と言う。

   えっ、僕はいったい誰に迷惑を掛けているの? 従業員は「あちらのお客様がそうおっしゃるので」と、少し離れた席にいる年配の男を指差した。このあと、ちょっともめたのだが、それは別として、人の集まる場所で携帯電話で話している者を見ると、反射的に文句をつける連中もいるようである。

   さらに言えば、私たちは「静か」であることに、少し固執し過ぎているのではないか。たとえば、幼稚園の子供たちの「ワイワイガヤガヤ」を「騒音」だと言って嫌がる。それが電車内の通話禁止につながっているようにも思う。もっと「ワイワイガヤガヤ」に慣れたほうが、人生は豊かになり、楽しくなると思うのだけど...... (岩城元)

※ 「こんなものいらない!?」委員会は、みなさまからのご意見をお聞きしています。ぜひ、下記のワンクリック投票にご参加ください。

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
  • コメント・口コミ
  • Facebook
  • twitter
コメント・口コミを投稿する
コメント・口コミを入力
ハンドルネーム
コメント・口コミ
   

※誹謗中傷や差別的発言、不愉快にさせるようなコメント・口コミは掲載しない場合があります。
コメント・口コミの掲載基準については、コメント・口コミに関する諸注意をご一読ください。

注目情報PR
追悼

お知らせ

電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中