2024年 4月 26日 (金)

イマドキ「10年我慢しろ!」はない 若手に「権限移譲」しなさい(江上剛)

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   離職率が高く、社員(とくに若手)が居つきません。そのため1年中、採用活動をしているような状況です。最近は売り手市場で、なかなか人が集まらないこともありますが、おかげで業績は悪くないので、給与を上げることができます。ただ、人手不足で満足いく休日を与えてあげることができません。福利厚生といっても、中小企業ではやれることが限られています。なにか、いい繋ぎとめ策はないでしょうか。

   昨今の人手不足の状況は深刻で、さすがによいアイデアは思いつきませんね。

  • 退職者が絶えません……
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給料が高くても社員は満足しないもの

   そんな即効性のあるアイデアがあるならどの企業も採用していますからね。

   若手社員は、大企業でも1年から2年で3割は辞めてしまうと言われていますから、中小企業だから若手が定着しないということはないと思います。

   私が勤務していた銀行でも、入行後1年か2年では1割は辞めていました。やっと入社した銀行ですが、どうしても行風に合わない人がいるということですね。

   繋ぎ止め策で考えられるのは、第一に給料、第二に処遇です。

   でも、どんなに給料を高くしても社員は満足することはありません。だいたい自分に対する評価というのは他人の評価の2割増しと言いますから、たとえば月給100万円(こんなにもらえれば何も言うことがありませんが)支給しても自分の評価は月給120万円なのです。だから不満をいいます。

   あなたは「こんなにしてやっているのに」という「のに」病にかかってしまいます。

   この「のに」病は苦しいです。「○○したのに」「○○してあげたのに」と、何事につけて「のに」と思ってしまうと、腹立たしくて悔しくて夜も寝られなくなるんです。

   次に処遇ですが、これも給料と同じで休みを増やしても、社宅を充実させても、これで満足ということはありません。

   ここでもあなたは「のに」病に苦しむことになるでしょう。

会社解散、タイムシェア...... 苦労の中からアイデアが浮かぶ

   これでは、解決策はないじゃないかということになりますね。

   それぞれの会社が苦労、工夫するしかない。その中でいいアイデアが浮かぶということでしょう。

   たとえば、一たん会社を解散(仮にです)して、全員を再雇用してみる。荒療治ですが、この会社を愛している者だけ残れというものです。

   破たんした会社が、再建に向かって強く歩みだし、以前とはまったく違う様相の会社になることがありますが、それはこの再雇用がひとつの要因だと思います。本当にこの会社を立派にしたいと願っている社員は必ずいますから。

   あるいは働き方改革で、誰もが空いた時間をシェアして働くことです。朝から夕方まで働くのではなく、自分の働きたい時間を登録して、それを会社側で調整して仕事を進めていく方法です。

   タイムシェアとでも言うのでしょうか、こうした働き方をする会社も出てきています。

   一見、非効率のように思えますが、上手く運営すればそうでもありません。

   働く人は、自分の空いた時間で仕事をし、時間給、あるいは成果給をもらえれば、その他の時間に別の仕事をすることができるのです。別に他の会社で仕事をしていてもいいじゃないですか。

   パートタイマーというのではありません。ちゃんと福利厚生の処遇をする正社員であっても、タイムシェアで働くことがあってもいいと思います。

   自分の趣味、他社での仕事、いろいろと幅の広い社員が集まり、生産性が向上する可能性が高いです。

若手からベテラン、役員も、コンパで意見交換

   さらにこんなのはどうでしょうか。

   ベトナムで働く日本企業の若手社員を見たとき、「やっぱり権限移譲が必要だな」と思いました。

   ある会社がベトナムに進出しました。その責任者は30代の若手社員です。それはそれは生き生きと働いていました。感動しましたね。本部にいちいち相談して指示を仰ぐことは不要。自分がよいと思ったことは、即実践。求められるのは、ベトナムでの成功だけ。

   日本企業は、意外と若手に権限委譲しません。雑巾がけを要求するんです。それがおもしろくなくて、若手が辞めていきます。自分の能力を高く評価しているのが、今の若者です。

   私などは新入社員の頃、「10年我慢しろ」と言われたものですが、今の若手社員にそんなことを言えば、すぐに「10年も我慢できません」と言って辞めてしまうでしょう。

   思い切って、新しいプロジェクトを若手に任せればいいんじゃないですか?

   また若手のアイデアを募り、そのアイデアの実行を、提案した若手に任せてみる。それで成功の見込みがあれば、社内ベンチャーとして資本金を援助して、独立させてあげる等々。

   いろいろ申し上げましたが、一度、若手社員と忌憚なく話し合ったらどうでしょうか。

   JALの再建物語「翼、ふたたび」(PHP文芸文庫)に描きましたが、京セラから来た稲盛和夫さんをモデルにした佐々木会長は、「コンパ」と称して若手からベテラン、そして役員たちと車座になって酒を酌み交わし、意見交換会を何度も開催したそうです。

   その中で「会社とは」「仕事とは」「自分たちとは」など、社員たちが自らの哲学を深めることで気持ちをひとつにしていきます。こんな「コンパ」も、必要ではないでしょうか。(江上剛)

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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