2019年 9月 21日 (土)

近くて遠い「デフレ脱却」 黒田日銀総裁が探る「物価2%上昇」の落としどころ(鷲尾香一)

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政府の「デフレ脱却」宣言は近い?

   とはいえ、安倍首相の携帯電話料金の引き下げ検討指示に対して、黒田総裁は当時、「消費者の選択の余地を拡大し、実質所得を増やすことは、長い目でみて、物価を好循環の下で2%に向けて引き上げていく面でもプラスになる」と支持する発言をしている。

   ところが、その効果はまったく現れず、黒田総裁は消費者物価の2%上昇の達成時期の先送りを繰り返し、現在は「2019年頃になる可能性が高い」と言う。こうなると、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ではないだろうが、藁をもつかむ思いで「携帯電話料金の引き下げ悪者論」を展開せざるを得なかったのかもしれない。

   ただ、携帯電話の料金引き下げとともに、黒田総裁が消費者物価の上昇しない理由としたのが、スーパーなどの値下げ合戦とインターネット通販の普及だ。消費者が低価格を選択していることを端的に表す「スーパーなどの値下げ合戦とインターネット通販の普及」が消費者物価上昇の阻害要因になっているのであれば、それは取りも直さず「デフレ経済からの脱却が遠い」ことを示している。

   黒田総裁が目指す消費者物価2%上昇が、デフレ経済からの脱却からの象徴だとすれば、その達成時期を何度も先送りしていること自体が、目標そのものに無理があることの証左であろう。

   折しも、国民総生産(GDP)が7四半期連続で前期比プラス成長となり、2019年1月には戦後最長で73カ月続いた「いざなみ景気」を追い越す可能性が出てきた。これを受けて、政府では黒田総裁のいう「消費者物価の2%上昇」の目標達成をかなぐり捨てても、「デフレ脱却」を宣言すべきとの声まで出はじめている。

   黒田総裁が目指したものは、いったい何だったのだろう。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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