2018年 6月 19日 (火)

【2018年を読む】データ改ざん、品質偽装...... 日本版「世界標準」をつくるスタート 企業アナリストの大関暁夫氏に聞く

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   東芝、神戸製鋼、日産自動車、SUBARU、三菱マテリアル、東レ...... どれも日本を代表する有名な老舗企業だが、いったい、いくつの企業で不正が行われているのか。というくらい、続々と「膿」が噴き出している。2017年は、日本企業の信用が大きく揺らぎはじめた。

   日本企業の信用力は回復するのか、なぜ、このような事態に陥ったのか、2018年にその処方箋はあるのか―― J‐CASTニュース会社ウォッチで「社長のお悩み相談室 ~オレの話を聞いてくれ」を執筆する企業アナリストの大関暁夫氏に話を聞いた。

  • 大関暁夫氏は「いまの『コンプラ至上主義』は見直すべき」という。
    大関暁夫氏は「いまの『コンプラ至上主義』は見直すべき」という。

職人気質とグローバルスタンダードのミスマッチ

   ―― 2017年はデータ偽装など不祥事の数々がありました。今年もまだまだ続くのでしょうか。

大関暁夫氏「もう、いろんな企業で問題があるんじゃないかって感じですよね。最近は、一時の食品偽装のようになってきた。ここぞとばかりに膿を出し切ってしまおうといった様相です。しかし、それは出し切ってしまったほうがいいので、きっかけはどうであれ、もし不正が見つかったのであれば、すぐに公表すべきです」

   ―― それにしても、名前があがる企業はどれも名門で世界的な、日本を代表する企業ばかりです。なぜでしょう。

大関氏「ひとつは上場企業だからです。コンプライアンスを守らなければ、株主に見放され、株価が下がります。逆にみると、株主による『監視の目』が行き届くようになってきているといえ、『守るべきものは守る』という企業風土が評価されているわけです。ですから、法令遵守の姿勢はまったく問題ありません」

   ―― これまでは守られていなかったということでしょうか。

大関氏「いや、守られていなかったわけではありません。不正が明らかになった企業に共通しているのは、『製品の安全性には問題がありません』ということ。そう口をそろえています。確かにそうなのかもしれません。製品の安全性を支えてきたのは、おそらくは技術力というか、日本人の職人気質があったのでしょうから。よく言えば、昔気質の日本企業らしさなのでしょう。
そういったものは、日本のかつての高度経済成長を支えてきたものでもあります。それがグローバルスタンダード(世界標準)の中で、余裕がなくなってきた。合わなくなってきたといえます。それを無理やり合せてきた結果、知らず知らずのうちに取り残された部分が残っていたのではないでしょうか。
見方を変えれば、『コンプライアンスの遵守』という言葉だけを懸命に守ろうとして、急いだり、無理したりしてきたといえます。その一方で、株主重視するあまり、数字をつくること(業績)ばかりを気にしてきたことが、さまざまな不祥事の温床になってきたのではないかと考えています」

   ―― 2018年はどうなりますか。

大関氏「日本人はマジメですから、コンプライアンスを遵守しなければならないというと、隅から隅まで、きちんと守らなければならないと考えます。決まっているルールを守ることに間違いはありませんが、『コンプラ至上主義』のような、凝り固まった考え方は見直したほうがいいと思いますね。
グローバルスタンダードといっても、結局のところ、米国スタンダードですからね。場合によってはルールが間違っているのでないか、合わなくなっているのではないかと、考えてみることも必要です。誤りを正すことは言うまでもありませんが、日本らしさがもっと世界に通じるルールで、その下で健全な企業経営ができるようになっていってほしいと思います。2018年は米国の押し付けではない、仕事の勘どころ、経験でOKの部分を生かした新たな日本版のグローバルスタンダードをつくる時代と考えます。
そのためには、まず膿を出しきってしてしまうことが必要。悪い風習は断つ。でも、日本らしさを失わないようにする改革が必要です。
メディアにも注文があります。不正を公表した企業を、ただ責めたり、重箱の隅を突っついたりするだけでなく、不正を糺すためにルールを見直すというのであれば、それを歓迎してもらいたいですね」

人材や技術を、長い目で育てていく

   ―― 日本企業らしさとは、どのようなことでしょうか。

大関氏「モノづくりの現場に合った職人気質。いわば、クルマのハンドルの『遊び』のようなものではないでしょうか。管理強化が正解ではありません。難しいところもあると思いますが、現場主義に立ち返ることも大事ではないでしょうか。
たとえば、東京・大田区の金型工場の技術が、世界に通用するという話がありますよね。『下町ロケット』(池井戸潤・著)の世界です。マネしたくてもマネできない、職人の技術をもっているわけですが、それは厳しい管理の下で培われたわけではありません。そこには目先ではなく、将来を見据えた方針や戦略があったはずです。
参考になるのは、北海道日本ハムファイターズ・栗山英樹監督の大谷翔平選手の起用法です。『二刀流』を認め、2016年は投げて15勝、打っても3割、本塁打20本を達成しました。大谷選手は、17年はケガをして休養を取りましたが、そのとき、栗山監督は目先の1勝にとらわれることなく無理使いしませんでした。『打つだけなら、使える』などと、その起用法には批判もありましたが、17年にパンクせず、18年は大リーグでその姿を見られるのは、栗山監督のおかげともいえます。日本ハム球団も大谷選手の移籍によって大きな利益を得ています。いまの日本企業に必要なのは、これに学ぶような、いたずらに目先の利益を追いかけない、そういった視点をもったマネジメント力ではないでしょうか。大谷選手は、きっと大活躍しますよ」
「必要なのは、長い目で人材と技術を育てていくことです」(大関暁夫氏)
「必要なのは、長い目で人材と技術を育てていくことです」(大関暁夫氏)

   ―― 企業の業績については、どうのようにみていますか。

大関氏「2017年の企業業績は総じて、よかったといえます。なかでも、輸出企業を中心とした大企業が好調だったのは、円安の恩恵です。しかし、周知のように下請け企業の業績は追いついていません。金融面では、現状はメガバンク(三菱UFJフィナンシャル・グループ)が収益の4割を海外で稼ぐ時代ですから、地域の中小企業はもっと疲弊するでしょう。多くの中小企業の潤わないと消費は増えませんし、日本経済も回復したとは言えません。2018年、政府にはここを手当てしてもらいたいと思います。
 一方、中小企業にも、もっと考えてもらいたいことがあります。その一つが、アライアンスです。たとえば、銀行などはその最たるものですが、銀行はいまだに自前主義を尊びます。与信情報や個人情報の保護などを考えてのことであるのはわかります。しかし、もう銀行が単独で、新たな業務やサービスを開発できる時代ではありません。フィンテックがいい例です。IT技術がなければ、もはや業務がうまく回らなくなるかもしれない時代なのです。中小企業が置かれている立場も同じと考えます。自分たちの技術を見直し、優れた技術は伸ばし、足りないモノは他の企業と協力しながら、必要な技術やアイデアを取り入れていくことを考えたほうがいいと思います」

プロフィール

大関暁夫(おおぜき・あけお)

   スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業「青山カレー工房」「熊谷かれーぱん」)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。
近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代の洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。

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