東京五輪で「英語でボランティア」を目指すと決意したら、2020年の夏に向けて必要なスキルを鍛えていきましょう。では、英語を「話す力」と「聞き取る力」、真っ先に鍛えるのはどちらでしょうか?五輪ボランティアの業務内容を知ると、学習のポイントが見えてきますよ!「おもてなし英語」は、相手のニーズを「聞きとる」ことから五輪ボランティアで英語力が求められるのは、「世界中から訪れる選手や大会関係者、観光客をサポートする」場面でしょう。問い合わせやリクエストに応えたり、道案内をしたりと、「尋ねられたことに的確にこたえる」業務です。困っている人を助けてあげることがミッションで、まさに究極の「おもてなし英語」だと言えます。では、英語を「話す力」と「聞き取る力」、どちらを先に鍛えるべきでしょうか――。次の英会話文を見て下さい。(1)WherecanIbuythis?(これは、どこで買えますか?)Youcanbuyitatthesupermarket.(スーパーマーケットで買えますよ)(2)HowcanIbuythis?(これは、どうやって買えますか?)Youcanbuyitbycreditcard.(クレジットカードで買えますよ)例文の(1)と(2)は、冒頭の疑問詞が異なるだけでその他はまったく同じ英文です。ところが、冒頭のたった一語が違うだけで、答える内容がまったく異なることに注目してください。場所を教えてあげるのか、それとも支払い方法を教えてあげるのか......つまり、冒頭の一語を聞き取れるか聞き取れないかで、「どうもありがとう」と御礼を言われるか、「何をトンチンカンなことを言っているのか?」とあきれられるか、運命がキッパリと分かれるのです。冒頭の一語を聞き間違えると、たとえばこんなチンプンカンプンな会話になってしまいます。WherecanIbuythis?(これは、どこで買えますか?)Youcanbuyitbycreditcard.(クレジットカードで買えますよ)さあ、もう答えはおわかりでしょう。五輪ボランティアを目指すなら、まずは英語を「聞き取る力」から鍛えてください。相手が何を尋ねているかがわからないと、おもてなしどころか、単なる迷惑行為になるだけです!聞きながすだけでは「聞き取る力」は上達しない!使う場面によって、求められる英語のスキルは異なります。たとえば、英語でプレゼンやスピーチをする時は「話す」スキルが大切です。話し手の意図を「伝えること」が目的ですから、出席者の意見や質問を「聞き取る」ことよりも「話す」ことが重視されます。逆に、ボランティアのようなサポート業務は、相手の要望や質問に「答えること」が仕事です。ある意味、受け身のスタンスです。相手が何をやりたいのか、何に困っているのかを正確に把握することがスタートになります。真摯な姿勢で相手のことば(ニーズ)に耳を傾ける、つまり「傾聴」がすべてと言っていいでしょう。極論ですが、聞かれていることが理解できれば、「supermarket」(スーパーマーケットで)、「creditcard」(クレジットカードで)と、単語で返答するだけでも十分です!相手が知りたいことを的確に教えてあげる、これが「おもてなし英語」の神髄ですからね。では、どうすれば英語を「聞き取る力」を鍛えられるのでしょう。これには、正解は一つしかないと私は思っていますし、多くの専門家も同じ指摘をしています。集中して英語を聴く「精聴」です。英語を「聞き取る力」は、聞きながすだけでは絶対に上達しません。意識的にトレーニングをして、聞き取れる英単語を一つずつ増やしていくしか方法はないのです。最後に、2012年のロンドン五輪で「Gamemaker(ゲームメーカー)」として大活躍した大会ボランティアのコメントをご紹介しましょう。「100メートル男子決勝の会場の外で、誘導業務についていた。会場の中から観客の大声援が聞こえた。テレビで試合を観戦するだけでは味わえない一体感に興奮をした」(トーマス、23才)「夜、帰宅する地下鉄の中ではくたくたに疲れきっていた。でも翌朝は、会場に行くのが待ち遠しくなる。間違いなく、私の人生で一番のビッグイベントになったわ」(サラ、46才)次回は、英語を「聞き取る力」が飛躍的に伸びるトレーニング法をお伝えします。(井津川倫子)
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