2024年 4月 24日 (水)

接客業を悩ます悪質クレーム(前編)「バカ」「死ね」「辞めろ!」「お客様」の驚きの実態

来店不要なのでコロナ禍でも安心!顧客満足度1位のサービスとは?

   「責任者を呼べ!」「土下座しろ!」...... 百貨店やスーパー・コンビニエンスストア、レストランなどの「接客」の現場で時おり見かける理不尽なクレーム。ちょっとしたミスに対して解雇を要求したり、長時間怒鳴りつけたりして、従業員のストレスになっていることは想像に難くない。

   そうしたなか、小売業などの従業員の労働組合「UAゼンセン」の流通部門が約5万人の組合員にアンケートした「悪質クレーム」(迷惑行為)の調査報告を発表。驚きの「モンスター顧客」の実態がわかった。

  • ひたすら謝り続けるしかないのか(写真はイメージ)
    ひたすら謝り続けるしかないのか(写真はイメージ)
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「5時間立たせて説教」がかわいく見える驚愕のクレーム

   悪質クレームの調査は2017年11月にまとまった。それによると、調査に協力した従業員のうち74%が悪質クレームを受けており、そのうちの90%がストレスを感じている。

   精神疾患を発症した人が359人もいた。J‐CAST会社ウォッチ編集部の取材に応じたUAゼンセン常任中央執行委員の森田了介さんによると、接客業界では「お客様は神様」といった顧客第一主義が大原則なため、お客の言動はたとえ不当なものであっても耐えなくてはいけないという風潮が強い。そのため、悪質クレームに対する対応で一番多いのは「(ひたすら)あやまり続けた」が38%、次いで「上司に引き継いだ」が30%で、「毅然と対応した」は20%だけだった。

   いったいどんなクレームが多いのか――。一般的なのは「暴言・脅迫型」と、しつこく追及する「長時間抗議・拘束型」という。

【暴言・脅迫型】

(1)商品の場所を案内すると、「遠回りさせられた」と怒りだし、「バカ、死ね、辞めろ!」と怒鳴った。

(2)商品の場所まで案内し、手で指して伝えると、「なんだなんだ、その態度は! 名前は何というんだ?」と胸ぐらをつかんだ。

(3)何が気に障ったのか不明だが、レジでいきなり「ぶっ殺すぞ!」と怒鳴った。また、「釣りを出せ!」と怒り、レジを壊しそうな勢いでガンガン叩いた。

(4)購入した包丁の切れ味が悪いとのことで、返品対応した際、「研いでも切れない!」と包丁をむき出しにして顔に近づけた。

(5)不良商品の交換の時に、「交通費と迷惑料を出せ」と要求された。できない旨を伝えると、「生活できない体にしてやる!」「土下座しろ!」と脅した。

高学歴・高収入に多い「社長を出せ!」

【長時間抗議・拘束型】

(1)「商品にカビが生えている」という指摘に、お詫びして返金を申し出ると、納得せず、店員を5時間も立ちっぱなしにして説教した。

(2)サービスカウンターでの食料品の会計を断ると、「俺には時間がたっぷりある。閉店までお前と付き合ってやる」と長時間怒鳴り続けた。

(3)「昨年は朝7時に開店だったのに、8時になったのはなぜだ」と2時間電話で説教した。自分で自分のことを「俺はクレーマーだ」と言った。

   また、森田さんによると、高学歴・高収入の階層のクレームも多く、このタイプの人はプライドが非常に高く、権威を笠に着て、「社長を呼べ!」「謝罪文を書け!」などと要求するのが特徴だ。

【権威的な行動・説教型】

(1)鮮魚売り場で「焼き魚用があるか」との問いに、「鍋用の魚でも焼き魚用になります」と答えると、「その横柄な態度は何だ、責任者を呼べ!」と怒った。売り場責任者が「担当者を再教育します」とお詫びしたが、納得せず、「クビにしろ!」と要求し続けた。

(2)お客の指摘で食品の価格が誤って表示されていた。お詫びして差額を返金したが、「悪徳商法をしているな。世間にきちんと謝れ! 新聞に謝罪の社告を出せ!」と要求した。

(3)マニュアル通りの接客語を使っているのに、「その日本語は違うわよ。それはこう言うのよ。だからダメなのよ」と毎回同じことを説教する。

セクハラ被害「やめて!」と言えば、SNSで逆ギレ

   さらに、じつは接客業の女性従業員はセクハラ被害を受けやすい。しかも、相手が「お客様」だけに対応が厄介なのだ。

【セクハラ型】

(1)商品の場所の案内をしたら、後ろからお尻をさわられた。

(2)お客からの問い合わせの際、腰のあたりをなでられた。とても不快だったが、「お客様」だと思って注意できなかった。

(3)食事、お茶、カラオケに誘われたり、電話番号を聞かれたり、店の外で待ち伏せされたりした。

(4)夜の職場で品出しをしていると、肉体関係を迫られた。

   そして、こうしたセクハラに毅然と対応すると、SNSやインターネットで返り討ちにされるのが最近の傾向だ。森田さんも、「ネット上の一方的な誹謗中傷がクレーム対策を難しくしている」と指摘する。

【SNS・ネットの誹謗中傷型】

(1)女性従業員の体にさわる客がいたので男性従業員が止めに入ると、怒り始めた。110番通報し警察で厳重注意をすると、逆ギレされ、通報した従業員の実名をあげてネット掲示板に誹謗中傷する内容を書かれ、拡散された。

(2)ラストオーダー間際に来店、閉店後に帰宅を促しても聞き入れず、逆に「どこまで客に迷惑をかけるのか」という趣旨で動画配信された。

   女性のセクハラ被害を告発する「#MeToo」運動が世界中に広がっているが、接客業の女性従業員も、そう声をあげたいのかもしれない。

   UAゼンセン流通部門では、消費者問題専門の弁護士や大学研究者らと勉強会を開き、2017年10月に「悪質クレームの定義とその対応のガイドライン」をまとめた。

   後編では、その内容をもとにUAゼンセンの常任中央執行委員の森田了介さんに、どうしたら悪質クレーマーに対応できるかを聞く。

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