2024年 5月 3日 (金)

「原野商法は二度だます」! 昔「将来値上がり」、今「高値で買い取り」

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   いわゆる「原野商法」の被害に遭うケースが急増している。

   しかも、土地ブーム期に「将来値上がりする」という勧誘に乗って何もない原野を買わされた人々を対象に、今度は売れないまま放置状態の原野を「買い取る」という、「原野商法は二度だます」といわんばかりの手口なのだ。

  • 「将来値上がりする」と勧められて買った原野が、また詐欺の舞台に……(写真はイメージ)
    「将来値上がりする」と勧められて買った原野が、また詐欺の舞台に……(写真はイメージ)
  • 「将来値上がりする」と勧められて買った原野が、また詐欺の舞台に……(写真はイメージ)

原野を売る代わり、新しい原野を買わせる「下取り」詐欺

   「原野商法」とは、列島改造論やバブルによって土地ブームが巻き起こった1970年代から1980年代にかけて全国を席巻した悪徳商法。原野や山林などまったく価値がない土地を、「新幹線が予定されている」「必ず値上がりする」などと、新聞折り込みチラシや雑誌広告などを使った勧誘が盛んに行われた。また、被害者も山奥の現地を見に行かず、買う人が少なくなかった。

   働き盛りのときに、原野が値上がりすることを夢見て購入した人も、現在は70代~80代以上が多くなった。すると、2000年代初めから、今度は「塩漬けの土地を高値で買い取る」という原野商法の被害が増えてきた。

   国民生活センターの「原野商法の二次被害報告」(2018年1月25日に発表)によると、2017年は、調査を始めた2007年以降、被害相談が最多の1076件で、07年の2.5倍、1件当たりの被害額の平均も最多の467万円に達し、07年の2.2倍になった。

   被害者の67%が70歳以上の高齢者で、90歳以上も4%いた。

   トラブルの大半は「売れない土地を高値で買い取る」という電話勧誘をきっかけとする「売却勧誘型」だ。

   このタイプをさらに分析すると、契約内容を詳しく説明せずに、「手続きや税金対策に費用がかかる。そのために別の土地を購入したらよい」と誘い、いつのまにか原野の売却と同時に新たな原野購入の契約をさせる「下取り型」が増えているらしい。

   「下取り型」は、クルマでいえば、中古車(所有している原野)を売る取引だったのに新車(新たな原野)購入の取引にスリ替わり、差額分を騙し取る。原野の売却と新たな土地の購入がセットになる手の込んだ詐欺だ。

   たとえば......

「『東京五輪までにその土地一帯に複合レジャー施設を造る予定だ』と言われ、話を聞いた。その際、『他の土地を買えば、売却時税金がなくなる』『購入費用の5000万円は税金対策後に渡す』と説明された。よくわからなかったが、買い手がつかない雑木林が売れるならと400万円を渡して契約書に署名した。
   その後、業者と連絡が取れなくなり、改めて契約書を確認したところ、雑木林を1200万円で売り、新しい原野を1600万円で購入する契約になっていた。つまり支払った400万円が、自分の原野売却と新しい原野購入の差額分になっていた」(2017年5月・東京都・60代女性)。

   「下取り型」は、巧妙な説明によって売却額より高い新たな原野を買わせて差額を騙し取る手口。高齢者が狙われるのが特徴で、本人もよくわからないまま契約に署名してしまうから、カネを払うと後の祭りになる。なかには「クーリング・オフ(訪問販売などの特定の取引に限り、契約後の一定期間内であれば違約金なしで解約できる制度)の適用外」という項目に署名させられた人もいる。

原野の管理業者を名乗る者から突然、「数十年分の管理費を支払え」

   「売却勧誘型」のもうひとつのタイプが、「原野を売るためには現地調査や整地が必要だ」と言って費用をだましとる「サービス提供型」。これは、数十年前の「第一次原野商法」からある古典的な手口で、たとえばこんな事例だ。

「40年前に30坪と100坪の山林を購入した。業者から『30坪の土地を欲しがっている人がいる』と電話があり、売れるならと了解した。売るに当たり、調査や整地に費用がかかると言われ、業者に190万円を払った。売却代金が手に入ると思っていたら、業者が『同じ人が100坪の土地も欲しがっている。さらに80万円の調査費が必要だ』と言ってきた。『30坪のほうを売ってからだ』と伝えると、業者は『まとめて売れば3か月以内にカネが入る』と譲らない」(2017年5月・神奈川県・60代男性)

   このケースは、相談を受けた被害者の息子が「典型的な原野商法の手口じゃないか」と問題視して係争中だ。

   最近急増しているのが、放置状態の原野の「管理費」を突然請求してくる「管理費請求型」だ。「管理業者」を名乗っているため、原野を買ったこと自体を忘れている本人や相続者もだまされやすい。たとえば......

「父が所有する原野の管理をしているという業者から突然、管理費支払いの督促状が届いた。驚いて業者に電話すると、『異議申し立てをしなければ原野が競売にかけられ、そのお金から管理が払われるので、そのままで大丈夫』と言われ、異議申し立てをしなかった。すると、裁判所から仮差押えされた。話が違うと業者に言うと、『そんな話はしていない。管理費を支払えば強制執行を回避できる』と言われた。管理契約の書面がなく、父も高齢で契約したかも定かではない」(2017年5月・東京都・60代男性)。

原野の「買い取り」で、所有者が利益を得た事例は1件もない

   それにしても、どうしてこうも簡単にだまされるのだろうか――。国民生活センターではまず、「(悪徳業者は)契約の重要な部分でウソをつく。口で説明する売却額と契約書に記載する売却額が異なっている。また、購入費用はあとで返す、消費者が購入した別の原野はあとで買い戻すと説明する事例もあるが、実際に送金や買い戻しが行なわれたケースは1件もない。非常に悪質です」と指摘する。

   消費者がちゃんと契約書を確認しないのがよくないのだが、それは「相続税などの税金対策のときに、子どもに迷惑をかけたくないという気持ちに、業者が付け込んでいることもあります」という。

   被害を防ぐため、同センターでは原野の所有者に次のようなアドバイスをしている。

(1)「土地を買い取る」「お金はあとで返す」と言われてもキッパリ断ること。

(2)宅地建物取引業の免許を持っている業者でも、悪質な事業を行なっている者があり、安易に信用しない。そもそも、原野や山林は宅地ではないため、基本的には宅地建物取引法は適用されない。だから、「宅地建物取引法の○条に基づき...」といった書面で説明されたら、宅地取引と誤認させる意図があると注意しよう。

(3)原野の管理費など根拠がはっきりしない請求には、お金を払わず毅然と対応する。ただし、裁判所から「特別送達」が送られてきた場合は、注意が必要。放置せず、消費生活センターなどに相談する。

(4)業者に一度支払ったお金を取り戻すのは非常に困難。少しでもおかしいと思ったら、絶対にお金を払わず、消費生活センターなどに相談する。

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