2024年 4月 27日 (土)

その41 申告敬遠 「こんなものいらない!?」(岩城元)

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   野球で敬遠(故意四球)の際、守備側が申告すれば投球しなくてもいいという「申告敬遠」の規則が今季(2018年)からプロ・大学・社会人を通して導入される。

   大リーグではすでに昨季(2017年)から「時間短縮」を目的に導入されており、日本もこれに追随した。

  • 練習に励む野球少年たち。彼らの野球にも「申告敬遠」が導入されるのだろうか(埼玉県川越市で筆者撮影)
    練習に励む野球少年たち。彼らの野球にも「申告敬遠」が導入されるのだろうか(埼玉県川越市で筆者撮影)
  • 練習に励む野球少年たち。彼らの野球にも「申告敬遠」が導入されるのだろうか(埼玉県川越市で筆者撮影)

わずか4球の「間」にある楽しみ

   しかし、わずか1分かそこらの時間短縮のために、敬遠を「投球なし」にしてしまってもいいのだろうか――。そもそも野球はサッカーなどとは違って「間(ま)」を楽しむ要素が大きいスポーツである。それなのに、「申告敬遠」は観客からその楽しみのいくらかを奪ってしまう。

   たとえば、敬遠で投手が4球を投げる間、観客には投手や打者の心理をいろいろと推し量る楽しみがある。投手や打者のしぐさや表情を見るのも楽しい。敬遠に抗議して、バットを持たずに打席で構えたプロ野球選手もかつていた。攻撃側のファンが守備側を「ひきょう者」と罵ることもできる。

   また、プロ野球ではこれまで、打者が敬遠球を打ってサヨナラ安打にしたり、投手が敬遠球を暴投してサヨナラ負けしたりしたこともある。申告敬遠はそんなドラマも生まれなくしてしまう。

   申告敬遠についての報道を見ていると、監督や選手側には反対論があまりないようだ。かつて捕手だったプロ野球・楽天の梨田昌孝監督は「現役時代、敬遠は投げずに一塁出塁だったらいいのにと思ったこともあった」と話している。

「申告敬遠」は野球を変えてしまうのではないか?

   僕のような野球の素人にとっては、投手が敬遠で4球を投げるのは簡単なように思えるが、そうではないみたいだ。この4球によって、それまでの投球のリズムを崩してしまうこともある。サヨナラ安打や暴投といったリスクもある。

   想像するところ、監督や選手側から強い反対論が出ないのは、そうした事情もあるからではないか。そうならば、申告敬遠は「観客不在」の規則とは言えまいか。僕が知る限り、選手側でこれに反対しているのはイチロー選手くらいである。

   大リーグで申告敬遠を経験した彼は「面白くないね」と言い、導入前にも「(申告敬遠は)本塁打でベースを1周しなくてもいいという理屈にもなる。野球を変えてしまうのではないかと心配」と語っている。

   その通りだと思う。イチロー選手が心配するようなことになり、もし満塁本塁打が出たら、どうなるか? 打者がベースを1周しないのだから、塁上の走者3人も塁を回る必要がなくなり、真っすぐベンチに戻ってくることになる。時間は短縮できるが、「間」がすっぽりとなくなり、面白みも何もあったものではない。

   規則を変えること自体は悪くはない。しかし、そのスポーツの本質にからむこと――たとえば、野球の場合なら「間」に関することは、簡単に変えてもらいたくはないのである。(岩城元)

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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