2018年 10月 23日 (火)

NEWテクノロジー時代の働き方(前編)イヤな仕事はAIに任せ、クリエイティブな仕事を!

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   「働き方改革」の問題が大きな議論になっている。AI(人工知能)などの最新テクノロジーが人間の仕事に取って代わろうとしている現在、私たちはどう働いたら幸せになれるだろうか――。

   社団法人・働き方改革コンソーシアム(CESS)が2018年2月20日、東京・虎ノ門ヒルズで開いた「働き方改革実現会議」シンポジウムの議論を前編と後編の2回にわたり、紹介する。

NEWテクノロジー時代の働き方(後編)優秀な人は大企業を目指さずベンチャーに挑戦を!

  • さまざまな意見が飛び交った「働き方改革実現会議」シンポジウム
    さまざまな意見が飛び交った「働き方改革実現会議」シンポジウム

「何でもできる人は中途半端な人になる」

   竹中平蔵さん「テクノロジーの進化の中で、人間はどうやって働いていくべきか、重要で深刻な問題になっています。それには、政府、企業、個人、そして社会が変わらないといけないということで、昨年(2017年)、米サンフランシスコに第4次産業革命センターができました。うれしいことに今年、その姉妹組織が東京にできます。『働き方』の議論を深めるよい機会になりました。そこで、まず労働政策が専門の八代さんに働き方改革の問題点を整理していただきます」

竹中平蔵さん
竹中平蔵さん

   八代尚宏さん「これまでの人材の確保や育成は、新卒者を採用し、長期雇用と年功序列の制度のもとで、職場訓練によって熟練労働者をつくるという方法でした。その方法は高度成長期には成果を上げましたが、1990年代で終わりました。NEWテクノロジーの時代に入ると、何でもできる人は中途半端な人になるのです。

   AIなどの導入によって、デジタル・ディバイド(コンピューター技術を使える人と使えない人の格差)が拡大。ルーティーンの仕事は機械が、クリエイティブな仕事は人間が、と二極化しています。工場の労働では1時間働けば確実に成果がわかります。しかし、クリエイティブな仕事は、時間で成果を測ることができません。そこで、これからは機械的な作業やデータ分析などの時間で働く労働はAIに任せて、人間は裁量労働制でクリエイティブに仕事をする時代になります。

   ところが、この裁量労働制やホワイトカラーエグゼンプションは、『残業代ゼロ』と言われて非常に評判が悪い。しかし、現在は時間や場所にこだわらない自由な働き方が求められているのです」

「社員のみでプロジェクトをやるのは時代遅れになる」

南場智子さん
南場智子さん

   竹中さん「まさに自由な働き方、雇い方を認めようという動きの中で、兼業や副業を認めようという議論も始まっています。南場さん、IT産業のディー・エヌ・エー(DeNA)ではいかがですか」

   南場智子さん「いまは『プロジェクトに優秀な人を集める』ことが企業の勝利の方程式です。入社に限らず、参加いただくことが重要です。10年後には、プロジェクトごとに集合、解散を繰り返し、社員だけでプロジェクトを進めるのは時代遅れになるでしょう。

   エンジニア型の人は中央集権的な管理を嫌います。自由が大事。優秀なエンジニアに働いてもらうためにも、DeNAでは副業、兼業は大歓迎です。ただ、経営者としてツライのは、たとえばDeNAの社員として7割、他社の社員として3割で働いた場合、健康を害した時の責任を、誰がどうとるのかが問題になります。兼業を認めると、健康管理にけっこう事務コストがかかるのが悩ましい点です」

   竹中さん「残業など働く時間の問題はいかがですか?」

   南場さん「インドや中国では現在、猛烈に人々が働いています。私も55年の人生の中で一番の宝物は、起業する時に会社に寝袋を持ち込んで働いた時期です。球団(横浜ベイスターズ)の社員が、プロ野球のシーズン中にイベント企画で、『もっと残って働きたい』と頼むのに、蹴飛ばすように帰らせています。労働基準監督署に怒られるので大きな声では言えませんが、本人の成長のためにこれでいいのかと疑問を持ちます」

   荻島浩司さん「シリコンバレーを訪問した際、労働法の弁護士に現地の人々の働き方を聞くと、時給制が1割、裁量労働制が6割、専門技術で起業、独立するインディペンデント・コントラクターが2~3割と言われました。日本の『月給制』を説明しても理解してもらえない。ひと月の残業時間を計算して残業代を払うと言うと、『それは時給制ではないか』と驚かれました。

荻島浩司さん
荻島浩司さん

   日本は、一人ひとりが働き方を変え、プロフェッショナルにならないといけない。五輪選手が1日の練習時間を8時間以内に制限したら、おかしいし、ひどい話です。会社に来て8時間働くことだけが、『働き』なのでしょうか? 自分のやりたいことのために働く。私個人は、仕事はゲームや遊び、おもしろいことをやっているという意識でやっています。なので、24時間働いても苦になりません」

長時間残業、中小企業よりも待遇のよい大企業のほうが深刻

   竹中さん「戦後の労働基準法制定以来、70年ぶりの大改革という改正案が国会に出されています。日本の場合は雇われる側が弱者ということで、その保護の側面があまりにも強すぎるという指摘もあります。裁量労働制に対する批判も根強いですが、これは政府や企業に対する不信が強いという表れなのでしょうか?」

   八代さん「際限なく働かされるのではないかという、労基法改正に対する懸念もわかります。日本人の働き方は外国人から恐ろしがられています。これまでは残業代が、企業に対する抑止力になっていた。それがなくなると、労働者を守るものがなくなるといったロジックです。米国では労働者にひどい扱いをする企業から、質の高い労働者はみんな逃げ出すので、そんな企業はすぐに市場で淘汰されます。

八代尚弘さん
八代尚弘さん

   とはいえ、日本では労働者が逃げにくい構造になっています。残業というとイヤなのに働かされるという誤解がありますが、じつは長時間残業の問題は、中小企業よりも待遇のよい大企業のほうが深刻です。恵まれているはずの大企業で、労働者が過労死の問題が出るほど酷使されている。年功序列型賃金の大企業の労働者は給料も社会保険もいいので、定年より前に辞めると損になるから逃げ出せない。

   もっと自由に辞めても不利にならない、労働市場で雇用の流動化が進めば、労働者を大事にしない会社は退場を迫られます。辞める自由を高めることで働く人を守るという観点で、雇用の流動化が大事なのです。

   ほとんど報道されていませんが、労基法の改正案の一つに、年間104日以上の休日を企業に義務付ける『休日規制』が提案されています。これはヨーロッパ型のよい規制だと思います。残業代が長時間労働の歯止めになっていないので、休日を強制的に設けるという新しい案は労働者にメリットが大きく、評価されるべきです」

   ※ 編集部注:安倍晋三首相は2018年2月28日、今国会に提出予定の働き方改革関連法案から「裁量労働制」の対象業務拡大に関わる部分を削除することを決めた。これは、裁量労働制をめぐる厚生労働省のデータに多くのミスが見つかり、批判が高まったため。

   【連載】「働き方」「働かせ方」を考える

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フォーラム参加者 プロフィール

●竹中平蔵(東洋大学教授・慶應大学名誉教授)
日本開発銀行を経てハーバード大学客員准教授、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、総務大臣、郵政民営化担当大臣等を歴任、未来投資会議メンバー。

●八代尚宏(昭和女子大学特命教授)
旧経済企画庁を経て上智大学教授、日本経済研究センター理事長などを歴任。専門は労働経済学。主な著書に『シルバー民主主義』『働き方改革の経済学』。

●南場智子(ディー・エヌ・エー社長)
津田塾大学卒、ハーバード大学経営学修士、DeNA創業者、プロ野球 横浜DeNAベイスターズオーナー。

●荻島浩司(チームスピリット社長)
1996年同社創業。2011年働き方改革プラットフォーム「TeamSpirit」を企画・開発してSaaS(クラウド上のソフトウェアサービス)ビジネスに参入。

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