2018年 11月 17日 (土)

その45 「改ざん」と書く「交ぜ書き」「こんなものいらない!?」(岩城元)

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   2018年3月初めから、新聞紙面やテレビ画面などに「改ざん」という言葉が躍るようになった。

   財務省が森友学園との国有地取引に関する決済文書を書き換えたこと、言い換えれば、改ざんしたことが報道で明らかになり、野党側が連日、国会でその経緯や責任を追及しているからである。

  • 大新聞の第1面に踊る「改ざん」という交ぜ書きの見出し。これだと、その意味がすんなりと頭に入ってこない。
    大新聞の第1面に踊る「改ざん」という交ぜ書きの見出し。これだと、その意味がすんなりと頭に入ってこない。

改「竄」と書けば、よくないことのように思えてくる

   もっとも、メディアによっては「改ざん」をできるだけ使わず、もっぱら「書き換え」としているところもある。しかし、財務省がやったことは単なる「書き換え」ではなく、国会ひいては国民を欺くなど、それを悪用する目的があったのだから、僕は「改ざん」と呼ぶべきだと思う。

   安倍晋三首相も「行政の長として、その責任を痛感している。国民の皆様に深くおわびを申し上げる」と陳謝している。

   さて、「改ざん」のように、平仮名と漢字が交じった表現を「交ぜ書き」と呼ぶ。この交ぜ書きの「改ざん」と、漢字だけを使った「改竄」という表現では、見た人に与える感じが随分と違うのではないか――。

   「改ざん」だと、それがいいことなのか悪いことなのか、よく分からない。しかし、「改竄」の「竄」という字は「穴」の下に「鼠(ネズミ)」である。どうもよくないことらしい、と思えてくる。

   多くのメディアが「竄」を使わないのには一応の理由がある。メディアはそれぞれ、内閣告示の「常用漢字表」を基にして自分たちが使う「漢字表」を作っているが、この中に「竄」という漢字がなく、かつ「改竄」は「改ざん」と交ぜ書きするように決めているからだ。

意味が推測できる漢字は楽

   小説家で劇作家、放送作家であった故・井上ひさしさんは生前、

「新聞や雑誌の記事で『交ぜ書き』を見ると、なんとなくその日の御飯がまずくなる」
「とにかく交ぜ書きには力が抜けて閉口する」

と書いていた。

   かつて、よく売れた「日本人の知らない日本語」(蛇蔵&海野凪子著)という漫画本があった。その海外編に、オランダで日本語を学んでいる学生が交ぜ書きについて、

「あれ、やめてほしいです」
「漢字が沢山あるほうが楽ですよ。意味が推測できますから」

と叫ぶ場面があった。

   ただ、メディアの名誉のために言えば、最近は交ぜ書きが減ってきている。たとえば、以前は「改しゅん」「領しゅう」「ろっ骨」などと書いていたが、今は常用漢字表などにない漢字も使って「改悛」「領袖」「肋骨」と書き、ルビを振っている。

   ところが、「改ざん」は「改ざん」のままである。改竄の「竄」が18画もあり、とりわけ鼠という字が難しいからだろう。でも、読者にとっては、たとえ書けなくても、読めればいい。ルビさえ用いれば、済むことだ。

   もうひとつ、メディアの名誉のために付け加えると、僕が調べた限りでは、産経新聞と雑誌AERAは「改竄」と漢字を使っている。他のメディアも見習ってほしいものである。

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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