2018年 11月 20日 (火)

大谷選手が大活躍!うれしいけど、期待がプレッシャーに変わると起こる心配事(大関暁夫)

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   米メジャーリーグ、エンゼルスに入団した大谷翔平選手の投打にわたる大活躍が、メディアや世間の大きな話題になっています。シーズン入り後いきなり打っては3試合連続ホームラン。投げては2連勝で、2戦目の7回被安打1、12奪三振の快投は、彼をよく知る日本のプロ野球ファンの期待をも上回る活躍振りではないでしょうか。

   仕事で行く先々でも、挨拶がわりの話題に大谷選手の話題が出ることは多く、昨日(2018年4月9日)も大谷選手大活躍の原動力はどこにあるのか、企業支援で一緒にチームを組んだことのある人事コンサルタントF氏と職業知識を踏まえて、マジメに雑談しました。

  • 米メジャーリーグで大活躍の大谷翔平選手(写真は、2017年1月撮影。当時は北海道日本ハムファイターズ)
    米メジャーリーグで大活躍の大谷翔平選手(写真は、2017年1月撮影。当時は北海道日本ハムファイターズ)

期待が高まるほど力を発揮する、ピグマリオン効果

   「彼の能力が高いのは周知の事実。その高い能力をさらに高めているのが、アメリカにおけるメジャーリーグの注目度の高さを開幕と同時に肌で感じたこと。さらには今やネットを含む各メディアを通じて、リアルタイムに届けられる日本から彼を応援する声にも、相当活躍のスイッチを入れられていると思います。彼は声援が高まれば高まるほどより力を発揮するタイプなのでしょう」とF氏は言います。

   確かに、2016年にリーグ優勝の行方を左右するソフトバンク戦で記録した日本最速時速165キロや、リーグ優勝を決めた西武戦での1安打完封劇。さらには昨年秋、1年怪我に泣き本調子になかったなか、日本最終登板となる試合で見せたパーフェクトなパフォーマンスなど。F氏が言うとおり、自身への周囲の期待感が高まる場面になればなるほど力を発揮することは、過去の事例が実証してくれているといえそうです。

「いわゆるピグマリオン効果というものです。期待感を寄せられた人物は、その期待に応えようとすることで、自分に寄せられる期待感が少ない状態に比べて明らかに期待にそう確率が高くなる、あるいは期待以上の活躍をするようになる、というもの。元々能力が高い大谷選手ですが、これまでもたびたびファンの期待感が高まる試合で結果を残してきた彼なら、米メジャーリーグという日本とは比較にならないほど大きな周囲の期待感や、国民的期待を背負って渡米したことでの日本の野球ファンたちの期待感の高まりに、応えないはずがない、そんなところではないでしょうか」

   F氏の分析は、世間の騒ぎに比べると至って冷静ですが、大谷選手の大活躍の裏には確かに高いレベルでのピグマリオン効果はあったことは間違いないように思えます。

「逆効果」? T君は突然、会社を無断欠勤した

   ピグマリオン効果は、スポーツだけでなく、もちろんビジネスシーンの組織活動においても力を発揮します。

   部下の業務を経営者や上司が、ただ単に黙って見ているのではなく、期待感を直接言葉にして伝えると、確かにその期待に応える確率は格段に高くなる。そんな実例は数多く現場で見てきました。

   その一方で、ピグマリオン効果が出ずに、むしろ逆効果だったり、さらには好ましからざる問題が生じたりするケースも、希にありました。

   作業用ロボットを主に取り扱う販売代理店B社のY社長は、地元商工会議所の社会保険労務士を招いた勉強会でピグマリオン効果の話を聞き、なかなか実績があがらない自社の営業スタッフたちを相手に、さっそく実践してみることにしました。

   3人の営業スタッフに期待感を伝えることで、少しずつではありながら確実に実績が上がってくることが実感できましたが、最も若手のT君だけはどうにも成果が上がらない日々が続きます。

   それが、Y社長が根気強く期待感を伝え続けていくうちに、ようやくT君の実績が上がりはじめました。「さすが、ピグマリオン効果!」と社長は大喜び。さらなる期待感をT君に伝えると、T君は次々と実績を積み上げていきました。

   ところがある日、T君は突然会社を無断欠勤すると、その後二度と会社に来ることはありませんでした。彼が辞めた後にわかったことは、彼の受注実績はすべて、彼が会社に申告していた見積金額とは比べものにならないほど安価な、赤字受注だったことでした。会社は思わぬ損失を被ることになってしまい、社長は頭を抱えてしまいました。

あまりに期待が高まり過ぎると、大谷選手も......

   F氏によれば、「ピグマリオン効果は、その実力から判断して過剰な期待感を繰り返して与えてしまうと、むしろ本人を追い込みすぎて逆効果になることもある」という話をしていました。

   T君は度重なる社長からの期待感アプローチにプレッシャーを感じ、なんとか獲得をあげなければという焦りに押しつぶされる形で採算無視の売り込みを仕掛けることで、成約を得ていたのでしょう。ピグマリオン効果の思わぬ弊害が出てしまったようです。

「大谷選手に怖いのは、今の好調で周囲や日本のファンからの期待感がさらに大きくなりすぎて、無理をしてケガをすることでしょう。日本国内のメディアが熱狂し、彼への取材が増えれば、それはさらなる期待感として彼に伝わりますし、刺激を受けて日本から現地に赴いて応援するファンが増えれば、それはまた従来以上の期待感を彼に伝えることにもなります。ピグマリオン効果から言えば、われわれ日本で彼を応援する立場の者が極力冷静に応援してあげることが、無理なく彼の実績を順調に伸ばすことになるのではないかと思います」

   なるほど、行き過ぎたピグマリオン効果の弊害を目の当たりにしてきた立場から、冷静さを失うことなく、日本の至宝とも言える「二刀流」大谷翔平選手の今後の活躍を応援していきたいと思います。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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