2018年 9月 25日 (火)

これは政治の怠慢なのか!? 盛り上がらぬ、日本のベーシックインカム論議(鷲尾香一)

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   フィンランド政府はベーシックインカムに関する実験プロジェクトを2018年末で終了することを明らかにした。

   政府としてベーシックインカムの実験に取り組んだのは、同国が初めてで、その分析結果が注目される。

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「高福祉国家」フィンランドのチャレンジ

   ベーシックインカムは、政府がすべての国民を対象に最低限の生活に必要な金額を提供する政策。そもそもは、貧困・格差問題の解決を目的とした。

   あるいは、ベーシックインカムを導入した場合には年金制度が廃止される、健康保険制度の抜本的な改革を行うなどを前提とした場合には、複雑化した社会保障制度が簡素化できるといったメリットがあげられた。

   また、近年には人工知能(AI)の発達と、さまざまな業種におけるAIの導入により、人間の「職」が減少した場合の生活補完手段としてベーシックインカムの導入を取り上げる意見も多く聞かれるようになっている。

   すでにオランダのユトレヒトとスペイン・バルセロナでは、自治体により、米オークランドでは民間企業が実施するなど、さまざまな地域で実験が行われている。また、カナダのオンタリオ州が自治体として導入を進めているなど、今後、ベーシックインカムの実験・導入を検討しているところも多々ある。

   スイスでは2016年6月、成人に月2500スイスフランを支給するベーシックインカムの導入を問う国民投票が実施され、77%の反対で否決された。

   ベーシックインカムの導入により、勤労意欲が失われる一方、財政負担が増大するという意見が多数を占めた。

どうする? 少子高齢化や格差是正、社会保障費の増大......

   今回、実験の終了を決めたフィンランドでは、無作為に選ばれた25~58歳の失業者2000人を対象に、2年間月560ユーロ(約7万6000円)を支給した。これは非課税で、さらに仕事からの収入があっても、減額されることはないという。

   北欧諸国は、世界でも「高福祉国家」として有名だが、その実現のためには「高率の所得税」が必要。フィンランドも同様に高い所得税によって、高福祉国家を維持してきている。

   しかし、日本と同様にフィンランドでも高齢化が進展しており、高福祉を維持していくのが難しくなってきている。加えて、フィンランドでも所得格差の拡大が問題となっている。

   こうした問題の解決策を探るため、フィンランドは2017年1月から2年間の予定で、ベーシックインカムの導入実験を行った。国レベルでの導入実験は、世界で初めてだったことから注目されていた。

   ベーシックインカムは、日本でも野党議員や自民党議員の一部、あるいは経済学者やエコノミストらによって、導入に対する意見が多岐にわたり寄せられてはいる。「国家予算をムダ遣いし、社会保障費の増加に対応できないのであれば、ベーシックインカム制度を導入したほうが、社会政策的には国民に現状以上の社会保障を提供できる可能性がある」(野党議員)という。

   とはいえ、日本でのベーシックインカムの議論は、まだまだ低調なものにとどまっている。これは諸外国ほど、政治が少子高齢化や格差問題の是正、社会保障費の増大に対して、真剣に取り組んでいないことの証左でもあろう。

   それだけに、フィンランドのベーシックインカムの導入実験の結果、どのような分析結果が得られるのかに注目してみたい。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
1990年、金融専門紙の副編集長を経て大手通信社に入社。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、日本銀行、金融庁、東京証券取引所を担当。2005年からマクロ経済と企業ニュース担当の編集委員。2007年3月末に退社し、フリーに。金融業界の内部事情から経済事件、企業経営まで幅広く取材。その鋭い分析力には定評がある。秋田県生まれ、59歳。
著書に、「企業買収 ― 会社はこうして乗っ取られる ― 」がある。
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