2018年 7月 20日 (金)

あの産経、読売まで...... 新聞社説が総スカン!「カジノ法案」がこれほど嫌われるワケ

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   カジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法案、いわゆる「カジノ法案」が多くの問題点を残しながら2018年6月19日衆院を通過した。同時に1か月の会期延長も決まり、政府・与党は何が何でも成立を目指す構えだ。

   大阪府や和歌山県などカジノ誘致に意欲を示す自治体や、観光客の増加による経済効果に期待する経済団体など、カジノ法案に賛成するところもあるが、主要メディアはオール野党の状態だ。なかでも、働き方改革や原発再稼働などの問題では賛否が割れる大手新聞が、そろって社説で反対の論陣を張っている。なぜ反対するのか、どこに問題があるのか、大手各紙の社説を読むと――。

  • 賭博性が非常に強いカジノ(写真はイメージ)
    賭博性が非常に強いカジノ(写真はイメージ)

「人の不幸に頼るカジノが、成長戦略にふさわしいのか」

   カジノ法案に限っては、比較的政権寄りとみられている産経、読売を含め、朝日、毎日、日経、東京(中日)の主要6紙が「さまざまな弊害が指摘されており、慎重な審議が求められる」(読売・6月21日)として、今国会での性急な成立に批判的だ。

   その理由については、まずカジノが本来もっている賭博性、不健全さを各紙とも一様に指摘する。

「そもそも、ギャンブルに入れ込んだ顧客の散財に期待するような成長戦略は健全とは言えない。持続的な観光振興のためには、街並みや食、伝統芸能など、地域の魅力を生かした、地に足のついた取り組みが求められる」(読売・2月27日)。
「人の不幸を前提とするカジノが、浮揚策として本当にふさわしいのか、誘致に熱心な自治体は冷静に考える必要がある」(朝日・4月5日)。
「日本では古来、賭博を禁じてきた歴史がある。これが社会の美風をつくってきた。賭博は自分の勤労によらないで、カネを得ようとするから、必然的に勤労の美風をも害するのである」(東京・4月6日)。

と、各紙は「賭博場に経済効果を期待するなんて、恥ずかしくないのか!」と言わんばかりだ。

   特に問題なのは、パチンコ・パチスロに加えて、競馬・競輪など公営ギャンブルが盛んな日本は、世界でも有数の「ギャンブル依存症大国」なのに、なぜ依存症患者の増加に拍車をかけるカジノを造るのかという疑問だ。

「(依存症の)体験者によると、カジノの快感と喪失感はパチンコの比ではない。金額に比例して脳が刺激され、やめられなくなるという。誰にでもリスクがあり、治療には膨大な時間を要する」(朝日・5月22日)。
「約320万人と推計されるギャンブル依存症者の増加につながりかねない。対策として、日本人客の入場回数を『7日間で3回、28日間で10回』に制限する。さらに、1回6000円の入場料を徴収する。だが、この入場制限は不十分だ。上限まで通えば、ギャンブル依存そのものではないか」(毎日・4月29日)。
「(24時間営業の)カジノは、豪華な部屋で、高額な賭け金が動くゲームが、夜を徹して繰り返される。競馬やパチンコなどより、のめりこみやすい。この程度の規制では、依存症を根本的に防ぐことは難しい」(読売・2月27日)。
「(こうした規制について)自民党の一部から『過剰な規制だ』との批判が噴出しているのは驚く。1週間で3回も通うのは頻繁な利用だ。シンガポールでは、月6回以上の利用者に対し、カウンセリングを実施している。総合的な依存症対策にも視野を広げるべきだ」(産経・3月5日)。

カジノが負けた客に貸し付け、借金漬けにできる

   そのうえ、カジノ事業者が、負けた客にカネを貸し付けることができるシステムも法案に盛り込まれた。国会審議の中で、野党側から「ギャンブル依存症に拍車をかける」と追及されると、石井啓一国土交通相は「(カジノの客は)富裕層......。定義ははっきりしませんが、かなりの富裕層に限定されるのではないか」と言いよどんだ。「では、どの程度の高額所得者か」とさらに追及されると、「国民の平均年収を勘案して......」と具体的な答弁をさけるありさま。

「カジノ事業者が客に金を貸せるというのも問題だ。運営する側が資金を用立てると、客を借金漬けに追い込む恐れがあるとして、(競馬・競輪などの)公営賭博では許されていない。整合性が問われる。政府は、本人の支払い能力を調べ、預託金をとったうえで貸すという。だが、詳細は法案が成立した後に政令で定めるという。これでは議論の深めようがない」(朝日・6月10日)。

   カジノ法案には、このように一番肝心な「依存症対策」を含め、「成立後に規則や政令・省令で決める」というあいまいな項目が331もある。各紙とも、今のままでは「白紙委任」はできないと主張するのも無理はないだろう。

   また、カジノ施設そのものが、決して地元の振興に役立っていないという指摘もある。

「1970年代にカジノが合法化された米ニュージャージー州のアトランティックシティーでは、大型カジノ施設ができた後、競争激化で閉鎖が相次いだ。街の活性化につながらず、貧困率も改善しなかった。韓国東北部のカジノ『江原(カンウォン)ランド』周辺では、地元住民の破産が増え、教育環境が悪化、人口が減少した」(朝日・4月5日)。

暴力団やマフィア対策に莫大なコストと人員

    さらに、カジノ事業から暴力団やマフィアなど反社会勢力を排除する、実効性のある対策をとれるかどうかも疑問視されている。法案では、内閣府の外局に「カジノ管理委員会」を置き、開業を申請する事業者や機器製造業者については、財務状況に加え、役員らの訴訟履歴、交友関係をチェックする「背面調査」を行なうことになっているが......。

「たとえば経営陣や従業員らの過去の犯罪歴や交友関係といった事実を、どうやって調べるのか。この法案で、国民が抱くカジノへの不安や懸念が払拭されるとは思えない」(日経・4月28日)。
「調査はカジノ管理委員会が担う。前例のない業務だ。業者から広範な情報を提供させ、分析し、適格性を判断しなければならない。専門性の高い多数の調査員も必要になる。調査の実効性を確保できるのか、大いに疑問だ。入場客を限定し、業者への管理を強めれば、今度はカジノの運営が成り立たなくなるというジレンマがある」(読売・2月27日)。

   もちろん、こうした調査には多額の人員とコストがかかる。

「政府はIRの利点をひたすら強調する。『ビジネスの起爆剤に』『地域振興、雇用創出が見込まれる』。しかし、実際には、治安の保持や依存症対策などに多くのコストがかかる。負の経済効果も計算に入れなければ、夢物語をばらまいているに過ぎない」(朝日・6月10日)。

   これほど主要な新聞が一致して批判する政策も珍しい。各紙の世論調査をみると、59%(毎日)~69%(読売)の国民が反対している。6~7割だ。それでも政権・与党はカジノ法案を強行成立させる可能性がある。

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