2018年 9月 23日 (日)

外部招へいはタイミングが大事 監督の「コミュ力」が導いたW杯ベスト16(大関暁夫)

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   サッカーFIFAワールドカップ(W杯)ロシア大会における日本代表チームの活躍で、日本中が大変盛り上がりました。

   惜しくも日本初のベスト8進出こそなりませんでしたが、2大会ぶりに1次リーグを勝ち上がっての決勝トーナメント・ベスト16戦進出は、戦前の世間の予想を裏切る大健闘であったと言っていいでしょう。

   1次リーグでは、H組4チーム中でFIFAランクでは最下位ながら、1勝1敗1引き分けの勝ち点4で2位通過。決勝トーナメント・ベスト16戦では、FIFAランキング3位の強豪ベルギーを相手に、一時は2-0でリードするなど善戦の末の惜敗という大善戦に、日本国中がワールドカップ・フィーバーに沸いた2週間でありました。

  • 言葉の壁を越えるには……
    言葉の壁を越えるには……

西野監督のやり方で正解!?

   さて、大会前の日本代表チームへの世論的な評価はかなり低い状況にありました。その原因は何であったのかといえば、ひとつは本大会を前になかなか勝てない日本チームに、1勝もできずに世界との実力差を改めて思い知らされた前回リオデジャネイロ大会での惨敗記憶。加えて、それ以上に不安の要因となったのが、大会直前に日本サッカー協会がハリルホジッチ監督を電撃解任し、日本人の西野朗氏の指揮に委ねたことにあったと言えそうです。

   西野氏はサッカーチームの指導者として、コートジボワールやアルジェリアのナショナル・チームをワールドカップ出場へ導いたハリルホジッチ氏の実績に比べれば、数弾の落差は認めざるを得ないのは事実でした。

   ところが、フタを開けてみれば予想外の大善戦に、西野監督に対する世間の評価はベルギー戦敗退後の今もウナギ登りの上昇を続けています。

   もちろん、ハリルホジッチ氏がそのまま大会の指揮を執っていたらどうなっていたのか、こればかりは何とも言えませんが、日本サッカー協会が大会直前にもかかわらず、代表チームの監督を解任した理由はコミュニケーションの問題にあったと言われています。

   ハリル氏の上から目線での高圧的な物言いが、たびたび代表地チーム主力選手との間に不協和音を生んでいたとの話はあちこちで聞かれていましたし、その根本的な原因は選手からの申し出を受け入れない、ハリル氏の独裁的指揮権というやり方にあったようです。チームが勝って代表の座をつかんだ時には、それでも選手は着いてくるものですが、本大会を前に親善試合とは言え勝てない試合が続くと、ハリル氏の独断的なやり方に対する選手たちの不平不満はつのり、個別選手との衝突も避けられない状況になっていったのでしょう。

   西野氏は大会まで残された時間がわずか3か月という時点での監督就任であり、とにかく選手の声を聞くコミュニケーションを心がけたと言います。ハリル氏は技術面、戦略面で代表監督として劣っていたわけではなく、コミュニケーションの取り方に問題がありました。その点の改善に重点をおいて対応した西野氏のやり方は、正解だったと言えそうです。

ソニー・平井会長の姿に重なる西野ジャパン

   そして、もう一つ着目したいのが、何よりコミュニケーションの基本は言語にあるということ。ハリル氏の指揮スタイル以上に、選手との壁をつくってしまったのが言語の違いではなかったかと思います。

   言語の違いは、単に言葉が通じるか通じないかだけではなく、通訳という第三者を介することで、「伝言ゲーム」になりかねないリスクがあります。さらに申し上げれば、各言語特有の言外にあるニュアンス的なものは、異国人間のコミュニケーションにおいては特に伝わりにくいと言っていいのではないかと思うのです。

   それらを総合して考えるなら、サッカーW杯の日本代表が、地の利があった日韓大会を除き1次リーグを突破した2回が共に日本人監督指揮の下でなし得たという事実は、単なる偶然とは思えません。

   技術的に世界水準から劣っている段階でまずそれを引き上げる時には、外国人指導者を招へいすることの優位性はあったのでしょうが、日本人選手がこぞって海外で活躍しその技術水準が向上した近年の段階においては、むしろコミュニケーション重視のチームマネジメントが有効であると思えます。

   企業経営も同じことで、日産自動車が瀕死の状態にあった時には外国人経営者のカルロス・ゴーン氏の日本人的経営の常識からかけ離れた手腕は同社を窮地から救うことになりましたが、拡大基調からの下降局面における安定化路線で、ソニーが初の外国人経営者、ハワード・ストリンガー氏を指名したことは、むしろ組織内コミュニケーションを悪くしソニーを未曾有の経緯危機に追い込むことになりました。ソニー再浮上の指揮を日本人リーダー、平井一夫・現会長の手に委ねて功を奏し、今春勇退を果たした姿には、西野ジャパンの活躍がダブって見える気がします。

   経営における外部の血の導入は、たとえそれが日本人であったとしても社会人として育った環境の違いによる組織内コミュニケーションにおける質の低下は否めない事実であり、組織の状況とタイミングによって、その登用は本当に難しいと思わせられることが多々あるのです。

   組織幹部への外部の血導入は大企業だけの問題ではなく、中小企業においてもごくごく日常的な組織活性化策になっています。今組織に必要とされるのが、ハリルホジッチ氏なのか西野氏なのか、組織の状況を踏まえて慎重に考える必要がありそうです。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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