2024年 4月 25日 (木)

一歩を踏み出す前に読む 手書きの「社史」が3代目社長に伝えたこと(大関暁夫)

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社史の重み

   翌週、N社長に会うと、神妙な顔つきでこんな話を切り出しました。

「私は元々家業に無関心だったので、会長の手書き社史に書かれた内容は知らないことばかりでした。祖父が崇高な思いで事業を始めた話、命からがら満州から子供だった父を連れて日本に戻った話、戦後無一文からの再出発を支えたのも日本もものづくりでの戦後復興を支援したいという思いだった話......。
会長の口癖である『お前は何もわかっていない』という言葉が、はじめて身にしみました。無理やり家業に引き釣り込まれて、一からまったく違う会社につくり変える気でいた私ですが、それは違うと反省しました」。

   N社長はこの一件の後しばらくして、ちょうどI社が創立80周年迎えるのを機に、手書き社史を印刷物にして全社員に配布し、周年行事として歴史を学ぶパーティーを開催して社員全員で自社の歴史の重みを共有しました。

「私だけじゃなく、おそらく社員一人ひとりも詳しくは知らないであろう自社の誇るべき歴史を知って自信をもってもらい、これからの行動指針として欲しいと思いました」

   あれから数年が経ちました......。

   新規事業は社長の独断ではなく、会長はじめ社員に意見も求めつつ創業の精神の下で立ち上がり、全社員の理解と努力によって順調に軌道に乗っています。たかが歴史、されど歴史。自社の歴史は、社長自らがしっかり理解し社員と共有して欲しい、隠れた経営資源なのです。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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