混乱する人事の現場、非正規雇用をめぐる「5年ルール」と「3年ルール」

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   パートタイマーやアルバイト、派遣社員などの非正規労働者を多く雇っている会社が、頭を抱えている。

   雇用期間を定めて(有期雇用)雇ってきた非正規労働者を、直接雇用するルールの適用が相次いではじまっているからだ。2018年4月からの運用がはじまっている改正労働契約法の「5年ルール」と、10月1日から適用の改正労働派遣法の「3年ルール」がそれ。専門の人事担当者を置けない中小企業などでは、似たような法律に戸惑い、混乱が生じているようだ。

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非正規労働者、2017年は2037万人

   法律改正を理由とする、あってはならない雇い止めが起こっている――。その背景にあるのが、2018年4月からの運用がはじまっている、パートやアルバイトなどに適用される改正労働契約法の「5年ルール」と、10月1日から運用がはじまる改正労働派遣法の「3年ルール」だ。

   5年(無期転換)ルールは、パートやアルバイトなどの有期雇用契約の非正規労働者の勤続年数が5年を超えたときに、雇用期間に定めのない労働契約(無期労働契約)への変更が会社に申し込める制度のこと。

   もう一方の3年ルールは、3年を超えて同じ職場に勤める派遣社員について、(1)派遣会社が本人の希望を聞いたうえで、派遣先企業に直接雇用するよう依頼する(2)派遣会社で無期雇用契約を結ぶか、別の派遣先企業を紹介する――などの対応を図る必要が生じる制度のこと。

   どちらも、非正規労働者の安定雇用を促進する狙いがあるほか、政府が掲げる「同一賃金同一労働」の実現に向けた取り組みで、無期雇用、さらには直接雇用を進めることで、正社員と非正規労働者の格差を是正する狙いがあるとされる。

   厚生労働省によると、1994年以降現在まで緩やかに増加。2017年は2037万人にのぼる。そのうち、パートは997万人、アルバイトは417万人、派遣社員は134万人だった(ほかに契約社員291万人、嘱託120万人、その他78万人がいる)。

   こうした働き手が、一斉に新しいルールの対象となっている。

新ルールの人件費アップ嫌う企業

   そもそも、雇用期間に定めがある有期雇用などの非正規労働者を、会社が活用するメリットは、正社員と比べて人件費が安いことにある。派遣社員の場合は、雇用責任も生じない。 ところが「5年ルール」の適用で、パートなどが「無期雇用」に転換することになると、雇用し続けなければなる。

   一方、派遣社員の場合は、派遣会社が3年超の派遣社員を「直接雇ってください」と派遣先企業に依頼する必要が出てくるが、人件費のアップで多くの企業が拒むことは目に見えている。新たな派遣先企業を探すにしても、経営規模の小さな派遣会社は大手と違って、同じ時給で同じ仕事を探すのは簡単でない。そうなると、派遣会社が無期で雇用せざるを得なくなるが、仕事がなくても休業を補償しなくてはならないのでコストアップにつながる。派遣会社も、それは避けたい。

   パートやアルバイト、派遣社員を多く雇う企業は、こうした人件費アップを避けるため、雇い止めや派遣切りで、非正規労働者との雇用契約を打ち切ろうというわけだ。

非正規社員はどう身を守るべきか

   10月以降は、改正労働契約法の「5年ルール」と改正労働派遣法の「3年ルール」の適用が、ダブルではじまる。こうした混乱に、社会保険労務士でジャーナリストの稲毛由佳さんは非正規社員に、こう呼びかける。

   ひとつは失業給付が受け取れる点だ。「5年ルール回避のための雇い止めは失業給付を会社都合で受け取ることができるようになりました。入社の時にはなかった更新回数の上限が新たにできた。途中で更新回数の上限が下がった。あるいは、『更新上限年数が4年6か月以上5年以下』となっていることにより雇い止めになった場合には、退職時にもらう『離職票』の具体的事情欄に雇い止めの理由がきちんと書かれているか、チェックしてください」と話す。

   もう一つは、会社が労働契約法の5年ルールと労働派遣法の3年ルールを混同している場合だ。

「パートを3年で雇い止めしたり、『5年ルールによる無期転換=正社員』と勘違いしたりしている会社がまだ見られます。時給など、契約期間以外の労働条件は従来のままでよいということを、会社側に伝えることで状況が変わることがあります。
また、派遣社員の場合、企業から直接雇用を持ちかけられる人材になることが、3年ルールの最大の自衛策です。派遣社員時代のうちから、直接雇用を希望していることを職場の人に知ってもらい、スキルアップのチャンスや直接雇用の推薦をしてもらえるような人間関係を築くことが重要になります」。
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