2024年 4月 19日 (金)

「正社員で働かない妻は不要?」稼ぎの少ない夫の言動にネット炎上

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   「俺の稼ぎでは妻子は養えないから、正社員としてずっと働いてほしい」――。未来の夫にこう頼まれた女性が、次の言葉を聞いてア然。「転勤が多いけど、その時は俺、単身赴任するから」。

   夫の転勤に付いていき、パートで働くつもりだった女性が「正社員以外の妻ならいらんのかい!」とブチ切れた投稿が、インターネットで炎上ぎみの騒ぎになった。男女双方のどちらの言い分が正しいのか、専門家に聞いた。

  • 妻にはずっと正社員で働いてほしい?(写真はイメージ)
    妻にはずっと正社員で働いてほしい?(写真はイメージ)
  • 妻にはずっと正社員で働いてほしい?(写真はイメージ)

結婚しても母子家庭の生活が待っている?

   26歳の女性会社員は、女性向けサイト「発言小町」(2018年10月2日付)に、こう寄せた。女性の仕事は転勤のない一般事務職で、婚活で知り合った31歳国家公務員の彼と結婚予定。彼の年収は、彼女とほぼ同じ300万円台で、全国転勤があるという。先日、彼の考えを聞いて驚いた。

「『申し訳ないが俺の稼ぎだけでは子育ては難しい。俺は転勤があるが、君はずっと正社員で働いてほしい』と言うのです。私が『転勤があるなら正社員は難しいよね?』と言うと、『なら俺が単身赴任する』と言うのです」

   彼の年収を考えると共働き必須なのは覚悟していたし、転勤に付いていき、パートのフルタイムで働くつもりだったが、まさかずっと正社員でとは......。

   単身赴任の話もア然として声が出なかった。

「正直、『正社員で働かない妻ならいらんのか! こっちは出産・育児・家事もあるのに、同居したり別居したり......。そんな結婚、私に何のメリットがあるの? なめすぎ!』と憤慨しています。彼と別れるべきでしょうか?」

   この投稿には、共感・同情、さらに「彼」に対する怒りの回答が7割近くあった。こんな意見が代表的だ。

「ガンガン文句つけたい気持ちはわかるけど、言ってもどーにもならないよ。彼も国家公務員を棒に振る気はないし、実際問題、年収300万円ではパートの収入しかないと、転勤のたびの出費を考えると、生活苦しいと思う。さっさと忘れて、次の男行こうよ」
「彼は妻にも大黒柱になってほしいわけです。自分1人の稼ぎでは妻子を養えないと言っています。母子家庭のような生活が待っているなんて、メリットのある結婚には思えません。彼の要望を受け入れて結婚してくれる女性はとても少ないと思います」
「別れなさい、そんな男! なぜ女性ばかり犠牲にならなきゃいけないの? フェアじゃないよ。『めちゃ自己中オトコ』だよ。転勤が当たり前でお給料安いけど、君と一緒に家族を築きたい、パートで働いてもらうことになるけど子育ても手伝うから、ならわかりますが、そういう優しさがないですもんね」

年収300万円、妻のパートではキビシイ?

   一方、妻に正社員を望む彼の考え方に理解を示し、投稿者に冷静さを求める声も3割ほどだが、みられる。

「実際問題として年収300万円では、いくら奥様が地方に行き、フルタイムで働いてもパートではキツイと思います。仕事があまり選べないうえ、時給が低いので。それで子供も貯蓄もとなると相当厳しいのは目に見えています。だから、彼の言い分は現実的なのです。これは価値観の差ではないから、妥協点が見つかりません。もっと収入のある人を探しましょう」
「彼の年収なら共稼ぎ=正社員も仕方ないかな。公務員はずっと正社員(正規職員)で働く女性が多いから、彼もそう思っているのでしょう。あなたも働くのが嫌じゃないのなら、正社員続ければよいのでは? そして、お互いに正社員なのだから、家事・育児もすべて平等にしたいと話し合いましょう」

そんな意見があった。

   いったい、どちらの意見が正しいのだろうか――。投稿者は、彼と別れた方がいいのだろうか。J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長にアドバイスを求めた。

   ――投稿者に賛同する意見の中には、「妻に正社員を求める男なんて、甲斐性がないから別れなさい!」と、男の甲斐性の問題まで出す声もありました。

川上敬太郎さん「結婚するかしないか、はご本人同士の意思がすべてです。一度でも価値観が異なると感じたことが心の奥底に引っかかるようであれば別々の道を歩むのもお互いの将来のためによいのかもしれません。ただ、それでも結婚したいと思うのなら、お互いの理解をもっと深める努力が必要です。 投稿の内容を見る限り、投稿者に比べて彼のほうはあまり深く考えていないのではないかと感じます。そしてそれは『彼』だけでなく、世の男性の多くに見られる傾向であるように思います」

専業主婦が持っている「後ろめたさ」とは?

   ――彼が考えていない? 女性に比べて、世の男性の認識が欠けていることとは何でしょう。

川上さん「家庭を運営する上での当事者意識です。私たちは、専業主婦の経験者に、『専業主婦であることに後ろめたさや罪悪感のようなものを覚えたことがあるか』を尋ねた調査を行ないました。その時、6割近く(56.6%)が『ある』、または『少しはある』と回答しました。
自由回答では、『自分が稼いだお金でないと、何となく自由に使うことに気がひける』『無職という肩書と、税金を納めていないことに肩身が狭い』『経済的に依存していると、罪悪感がある』と嘆く声がありました。
家事や育児は大変ではあるものの、収入を得ていないことに後ろめたさを覚えてしまう妻の心理が表れています。
高度経済成長期に、夫は外で働き、妻は専業主婦として家事・育児を一手に引き受ける、という典型的なモデルがつくられました。その影響を少なからず受けている一方で、働くことに対する意識が高まっていると感じるデータです。
一方、夫側はどうでしょうか。収入を得ることの責任に対しては、働くことで果たしていますが、家事・育児をしないことに対しては後ろめたさを覚えている人は少ないように感じます」

   ――確かに結婚生活は共同作業なのに、『後ろめたさ』に関しては、夫婦不平等ですね。

川上さん「女性は結婚すると、家事・育児を引き受けることを覚悟したうえで、家計を支える収入まで当事者として意識します。しかし、男性は収入を得る覚悟はするものの、家事・育児までは当事者意識を持っていないといえるでしょう。
投稿にある『彼』の言い分に当てはめると、『子どもが生まれても正社員として収入を得てほしい』『転勤になったら(自分は)単身赴任するから正社員として収入を得てほしい』......。つまり彼のほうは、収入責任は夫婦同等であることを求めているのに、家事・育児については一切触れていません。単身赴任の場合は、言うまでもなく育児はできないわけですが」

夫には結婚生活の「当事者意識」が欠けている

   ――なるほど。問題点を整理すると、どうなるのでしょうか。

川上さん「こうなりますね。彼=収入責任は半々、家事・育児は妻にお任せ。投稿者=収入責任は半々。家事・育児は(おそらく)100%自分負担――。こう考えると、投稿者が怒るのも無理はないと思います。
ただ、彼のほうはそこまで明確に整理して話しているわけではない可能性があります。夫は働き、妻は専業主婦という典型モデルに引きずられたまま、むしろお互いの将来を考え、また自分の収入に過度な期待をもたないように配慮しての言葉かもしれません。そうだとすると、悪気がないとも言えますし、一方で考えが足りていない、とも言えると思います。
価値観の違いを感じつつも、やはり結婚したいと思うのなら、こうした対等の観点から、お互いに見えている部分と見えていない部分をオープンにしたうえで、2人の試練として共に乗り越えていけばよいでしょう。結婚したらそんな場面の連続ですよ。そう考えると、結婚後、長い人生を共にする2人にとって、ちょうどよい練習問題と言えるのかもしれません」

(福田和郎)

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