2018年 11月 14日 (水)

「男のくせにチマチマした字......」パソコン時代に「テクハラ」ですか?(篠原あかね)

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「こんな汚い字じゃお客さんが読んでくれないだろ!だからお前は仕事ができないんだよ!」
「男のくせにチマチマしたことばかり書いて。男ならもっと大胆な企画書を書け。だからお前は相手に舐められんだよ」
「美人だしいい歳なのに、この中学生みたいな文字は......。やっぱり三流大学出身の女はこんなもんか」

   会社で使う資料はもちろん、封筒の宛名書きもパソコンが当り前の時代。直筆で書く機会があると、私の文字は相手にどんな印象を与えるのだろうとドキドキします。

  • 文字を書く機会は減ったけど……
    文字を書く機会は減ったけど……

字が汚くても優秀な人はいる

   大きく伸び伸びとした字を書く人は朗らかで、丁寧にゆっくりとコンパクトに書く人は几帳面。そんなイメージを持つ人が少なからずいるようです。もしかしたら、今でもそう思っている人はいるかもしれません。

   また、パソコンで作った文章でも製作者ごとにテイストが異なります。「優しい」「軽い」「ずっしり」など書いた人の人柄が文章を通して見えたりもするわけです。作家さんの文章のタッチが好きで作品を読み続けているという方も多いのではないでしょうか。

   このように人それぞれ文章に対して思い抱くイメージがあること自体はまったくかまわないのですが、それを冒頭のように発言してしまうと「テクスチュアルハラスメント」=文章にまつわる(性)差別に該当することがあります。

   文字の大小やテイスト違いは男女の性差に関係ありません。また、字が汚いことが必ずしもその人の能力と結びついているわけでもありません。字が汚くても優秀な人もいれば、小さな字を書いても図太い神経の持ち主だっているのです。

   冒頭の発言は、主に上司と部下の関係性で言われることが多いのですが、度が過ぎると個人の名誉と尊厳が傷つけられたとして、損害賠償を請求される可能性があります。

文芸評論家の男性「テクハラ」で慰謝料440万円を支払い

   こんなケースがありました。ある女性作家が出版した本に対して、文芸評論家の男性が「あの本は女性作家ではなく、その夫が執筆している」と雑誌でコメント。雑誌出版社もそのまま掲載したため、言及された作家夫婦が名誉毀損で訴え、慰謝料440万円が支払われた判例(2001年12月25日東京地方裁判所判決、判例時報1792号79頁)です。

   文芸評論家の男性は「女性には知的で論理的、大胆で冒険的、あるいは、幅広く人間ないし社会の真実への洞察を備えた物は書けない。そのようなものは男性が書けるにすぎない」という、女性に対する差別と偏見からの発言でした。

   さすがに、こんなことはオフィスではあり得ないと思うかもしれませんが、たとえば......

「女性にこんな大胆な企画書が書けるわけない。同僚の男性がゴーストライターをしたに違いない」
「あの男がこんなに女性目線の商品を作るなんて。どうりで所作が女っぽいと思った」

   などのウワサ話がどんどん広まり本人の耳に入ることも考えられます。

   うっかり発言が男女雇用機会均等法違反として行政指導を受けたり、また損害賠償請求を受けるなど、会社側が責任を問われる可能性もありますので気をつけたいですね。(篠原あかね)

篠原あかね(しのはら・あかね)
リクルートにて企業研修アシスタント、金融機関等での役員秘書を経てビジネスマナー講師として活動。2011年よりスマートコミュニケーションズ代表。ビジネスマナー、コミュニケーション、CS向上等の企業研修のほか、自身の宴会幹事経験をもとに「愛される宴会部長セミナー」も主催。著書に『宴会を制する幹事は仕事も制す。』『マンガ 黄金の接待』(監修)などがある。お客様や社内で愛されキャラになるコツを悩める社会人へ発信中。
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