2018年 11月 14日 (水)

増える高齢者の住み替え 中古住宅の低すぎる評価が老後資金を食いつぶす(鷲尾香一)

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   「高齢者住宅」をテーマに、2回にわたって取り上げてみたい。

   前編は、増加する高齢者の住み替え。若干古いデータだが、総務省が発表した2013年の「住宅・土地統計調査」では、2009~13年までの5年間に高齢者世帯(家計を主に支える者の年齢が65歳以上の世帯)の住み替えは95万7100世帯にのぼり、このうち43.2%の41万3500世帯が民営の借家に住み替えている。

  • バリアフリー対応の「住宅サービス付き高齢者向け住宅」もあるけれど……
    バリアフリー対応の「住宅サービス付き高齢者向け住宅」もあるけれど……

夫婦2人なら、2LDKで十分

   こうした高齢者世帯の住み替え増加には、いくつかの背景がある。

   高齢者世帯では、子育てを終えて子どもが独立すると、自宅が必要以上の広さとなる。筆者の自宅は戸建て住宅だが、2人の子どもが独立して以降、2部屋は使用することもなく、物置きと化している。夫婦2人にとっては不必要な広さであり、ふだんの掃除や家屋のメンテナンスは結構な負担になる。

   じつは筆者も、妻と夫婦2人であれば2DK程度の広さで十分と考え、マンションにでも引っ越そうかと真剣に話し合ったことがある。この計画は今のところ棚上げされているが、いつか復活する可能性は大きそうだ。

   さらに高年齢化が進むと、交通弱者、買い物難民といった生活インフラ上の問題が出てくる可能性がある。クルマで買物に行けるうちはいいが、運転が覚束ない、あるいは病気やケガで運転ができなくなれば、急激に日々の生活に影響する。こうした点を予防するためには、利便性がよい市街地へ住み替えるのも一案となるわけだ。

   また、高齢化の進展と共に、住宅のバリアフリー化が必要となるが、自宅をバリアフリーに改築するための費用負担を考えた場合、住み替えは選択肢の一つとなろう。正確な統計はないが、民営の借家に住み替えた41万3500の高齢者世帯の中には、サービス付高齢者向け住宅が相当数含まれていると推測される。

「サ高住」という選択はあるけれど......

   サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、主に民間事業者が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅で、自立(介護認定なし)あるいは軽度の要介護高齢者を受け入れている。

   日中は生活相談員が常駐し、入居者の安否確認やさまざまな生活支援サービスを受けることができる。高齢者の住み替えでは、サ高住は有力な選択肢となる。

   だが、問題は高齢者世帯の住み替えには、これらの理由とは別に老後資金の問題がある。平均寿命が延び、老後期間が拡大するなか、死ぬまでに必要な老後資金も増えている。この老後資金を手当てするために、自宅を処分して資金をつくり、これまでよりも狭くとも家賃の安い民営の借家へ住み替えるという選択をしている高齢者世帯が多いのだ。

   ただ一方では、たとえば自宅を担保に老後資金を借り入れ、返済は死亡時に自宅を処分して借入金を返済する仕組みの、いわゆる「リバースモーゲージ」でも、あるいは住宅そのものを処分する場合でも、日本は中古住宅に対する評価や人気の住宅地以外の宅地の評価が低いため、十分な老後資金を手当てできないという厳しい現実がある。

   平均寿命は延び続け、年金支給開始年齢は先延ばしになり、年金支給額は減少傾向にあるなか、これから高齢者の仲間入りする世代、あるいは現役世代にとっては、このままでは、より厳しい老後が待ち構えているということになりかねない。

   年金制度や高齢者の働き方といった問題だけではなく、現役世代が減少し、高齢者が急増する時代の国のあり方について、広範囲にわたったグランドデザインづくりを行い、政策を立案する必要があるのではないか。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
1990年、金融専門紙の副編集長を経て大手通信社に入社。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、日本銀行、金融庁、東京証券取引所を担当。2005年からマクロ経済と企業ニュース担当の編集委員。2007年3月末に退社し、フリーに。金融業界の内部事情から経済事件、企業経営まで幅広く取材。その鋭い分析力には定評がある。秋田県生まれ、59歳。
著書に、「企業買収 ― 会社はこうして乗っ取られる ― 」がある。
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