仮想通貨、日本で広がらない理由はここにある マネックス・松本社長が指摘

   ビットコイン(BTC)をはじめ、仮想通貨市場が軒並み暴落するなか、2018年4月に仮想通貨取引所のコインチェックを買収したマネックスグループの松本大社長CEOが11月23日、慶応義塾大学・三田祭で開かれた講演会(主催:経済新人会)「新しい経済の形を創る~情報技術の進歩で変貌する日本経済」に登壇。日本で仮想通貨への投資が広がらない理由の一つに「税制がある」と指摘した。

   仮想通貨の取引で得た利益は「雑所得」に分類され、最大税率で55%が課せられることになっている。「仮想通貨に課せられる税金が、競馬と同じでは......」。松本社長はそう嘆く。

  • マネックスの松本大社長は「仮想通貨の税金をせめてFX並みに」と訴える(慶応大・新人経済会のツイッターから)
    マネックスの松本大社長は「仮想通貨の税金をせめてFX並みに」と訴える(慶応大・新人経済会のツイッターから)
  • マネックスの松本大社長は「仮想通貨の税金をせめてFX並みに」と訴える(慶応大・新人経済会のツイッターから)

競馬やパチンコ同様「損益通算」できず

   金融商品にかかる税金は、たとえば株式を売買して利益を得ると、税率20.315%(所得税15.315%、住民税5%)がかかる。「申告分離課税」による納税方法で、給与などの所得とは切り離して株式の譲渡益だけを計算して確定申告して納税する。

   また、外国為替証拠金(FX)取引の利益は雑所得にあたるが、2012年に店頭取引と取引所取引の課税方式が統一。株式投資と同じように申告分離課税が適用され、税率も20.315%に統一された。

   これに対して、仮想通貨への投資で得た利益は雑所得に分類され、最大税率は55%。2017年12月発表の国税庁の「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」によると、会社員など給与所得者が副業として行う場合は20万円以上の利益で、主婦や学生など被扶養者については33万円以上の利益で確定申告が必要になる、とされている。

   株式投資などは損益通算(所得金額の計算上生じた利益と損失を相殺すること)ができるが、仮想通貨は競馬やパチンコなどと同様に損益通算はできない。

   最大税率55%、つまり利益の半分以上を税機として納めなければならないのでから、他の投資商品と比べて見劣りするというわけだ。

EUでは「ゼロ%」の国もある

   マネックスの松本社長は慶応大学経済新人会の講演会で、「せめてFXと同じにしてほしい」と訴えた。

   さらに、「すでにEU(欧州連合)では仮想通貨に課税しない国も出てきている」と話した。フランスは2018年4月、仮想通貨の税率を45%から19%へ大幅に引き下げ。また、スイスではBTCへの消費税適用を除外。ドイツは支払いに使われる仮想通貨への課税をゼロにしている事例をあげ、海外と比べても対応が遅れていると、指摘した。

   松本社長は「(仮想通貨取引は)現状は過渡期だが、ここ(税率)を下げていかないことには(投資)意欲が薄らいでしまう」などと話した。

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