2018年 12月 14日 (金)

社長の懐は気になって当たり前 だから、いい会社は誤魔化さずに報酬を開示する(大関暁夫)

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   前回に引き続き、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長がらみの話題をひとつ。

   東京地検の捜査が進む中で、容疑の焦点となっているゴーン氏が自身の報酬を実際よりも10億円少なく記載していた件の理由は、株主はじめ世論の「報酬が高すぎる」という批判を避けるためであったと供述しているとの報道がありました。

  • 社長がいくらもらっているのか、気になります!
    社長がいくらもらっているのか、気になります!

自らの報酬の「見える化」は必要

   経営トップが自らの「報酬が高すぎる」という批判を受けたくなくて、本当の報酬額が知れることを嫌がるというケースは大企業、中小企業問わずによくある話です。

   一般的に個人の報酬額は個人情報に属するものであり、公開を義務付けられた上場企業の経営者以外の企業経営者が、それを理由に自らの報酬額を非公開とするのは一見、筋が通った話ではあります。

   しかしながら経営者たるもの、やはり社内の実権を握り、全社員から注目を集める組織内の公的な立場であり、個人的には自らの報酬について「見える化」していくことは必要なことであると思っています。

   私が銀行員時代のことですから随分前の話になりますが、地方都市でサービス業の複数の店舗を展開する40代のT社長が、とあるパーティの席上で妙な愚痴をこぼしていました。

   「先日、去年ライバル社からナンバー2候補としてヘッドハントした店長が私に、『噂で聞きましたけど、社長は毎月○○円も貰っているんですよね。そのうえ、家族で旅行に行っても経費で落とせるんでしょ。いいですよね』と、暗に自分の報酬をもっと上げろと言ってきたんだ。

   金額も合ってるし旅行の件も実際にあった。経理部長とアシスタントの女性以外知りえない情報なので、証拠はないが経理の女性社員に食事でもご馳走して、会社の決算書や経費明細を見たいと頼んだのじゃないかと思う。店長はクビにしようと思うが、女子社員は下手に配置替えすると配置替え先で余計なこと言いそうだし、困ってます」

重鎮経営者のつぶやき「社員がかわいそうだな」

   その話を一緒に聞いていた、過去に商工会会長も務めた70代後半の重鎮経営者Aさん。T社長が話の輪から外れたのを確認して、小声でこんなことを言っていました。

「社員がかわいそうだな。社内に見られちゃいけないものなんて、つくっちゃいけないのよ。見られたくないものをつくって見せないようにしたり、嘘を言ってごまかしたりすれば、結局社員の不信を買うだけでしょ。社長が高い報酬を取るのなら、自分はそれだけのことをやっているから、それ相応の報酬をとっている、自分以上に会社に貢献している社員が出てきたら、自分以上の報酬をやるから皆がんばれ、ぐらいのことを堂々と言えばいいんですよ」

   この話を聞いて数年後に、「ユニクロ」の柳井正社長もまったく同じことを言って、自分の報酬を進んで開示したことがありました。それを新聞で読んだときに、あの重鎮経営者の言っていたことはなかなか的を射ていたんだなぁと、改めて感心したという記憶があります。

   おしなべて会社勤めの社員は、日々生活の糧を稼ぐために日夜勤務をしているわけですから、自分の報酬と共に他人の報酬にはものすごく関心があって当たり前なのです。

   一般的に真理なのは、業務内容も責任も変わらず仕事を続けているなら、報酬はより多くもらえるに越したことはない、ということがひとつ。もう一つ、自分よりも多くの報酬をもらっている人がいれば、その額がその人の働きにふさわしいのか、という比較で見がちだということ。

   もし、ふさわしくない多額の報酬をもらっている人が居ると知ったら不満を覚えるでしょうし、自分もその基準でもっと多くの報酬を受けるべきと思ったりするのです。

   だからこそ、企業にとって必要なことは、昇給昇格ルールをちゃんと制定して、併せて評価制度もしっかり開示し、何をすれば自分が受け取る報酬がいくら上がるのか、何をしたから他の社員が昇給昇格したのかが、目に見えてわかるような人事制度の整備が求められるわけなのです。

「公平な人事」は「公平な報酬配分」と同義

   「公平な人事」という言葉をよく耳にしますが、その意味は「公平な報酬配分」と同義であると言っていいでしょう。この部分で不公平感を感じる社員が多くなれば、他社への転職者が増えて定着率は下がって会社には沈滞ムードが漂うことになるのです。

   さらなる問題は、社長の報酬です。社長の報酬は一般的に給与体系とは別のところで決められていますから、自ら開示しない限りまったくのブラックボックスなわけです。

   しかし前述のとおり、他人の報酬に社員は皆関心があり、かつそれが自社のトップであれば最大の関心をもって「一体いくら貰っているのか知りたい」という気持ちになるのは、当然のことなのです。

   先のサービス店の店長がしたことは、裏から情報をとったのだとすれば、褒められたものではないかもしれませんが、行動そのものは納得ではあるわけなのです。

   重鎮経営者Aさんが、先の話の結びにこんなことを言っていました。

「社長が自分はいくら貰っているのか、その報酬額を正直に言えないというのは、どこかで『自分は貰い過ぎている』というやましい気持ちを感じているのでしょう。社長が自分の報酬額を社員に対して明らかにできないほど貰い過ぎているなら、社員たちのことを二の次にしているという意味で会社にとってマイナスでしかありません。経営者が常に自戒の念をしっかりと持って会社経営にあたるためにも、社長自身の誤魔化しのない報酬の開示は必要です。いい会社は正直者のいい経営者によってしかつくられませんよ」

   連日報道が続くゴーン氏関連のニュースを読み進める中で、経営者にとってはズシリと重たい重鎮経営者の言葉を思い出しました。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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