2019年 10月 14日 (月)

【2019年を展望する!】その1 「ペンス演説」が世界を変えた(志摩力男)

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   この原稿を執筆中の今、米国株は崩れ、日本株は2万円の大台を割り込み急落しています。この展開を、多くの方々が予想していなかったのではないでしょうか――。

   相場下落の理由はいろいろあると思いますが、トランプ米大統領がFRB(米連邦準備制度理事会)の政策を気に入らず、パウエルFRB議長解任を検討しているとのニュースもその理由の一つでしょう。中央銀行の独立を侵害するとどうなるかは、2018年8月にトルコリラがどうなったのかを見れば、一目瞭然です。

  • 2019年、米国経済はどうなる?
    2019年、米国経済はどうなる?

吹っ飛んだ米中貿易戦争の終結への期待感

   しかし、今回の相場の下げの本質は、トランプ米大統領とパウエルFRB議長の確執というところにあるのではないと思います。

   相場がピークを打ったのは、2018年10月初め。その時、何があったのか? 

   一つはワシントン・ポスト記者、カショギ氏が暗殺された事件です。一人のジャーナリストの死以上のインパクトがありました。サウジアラビアは国際的に窮地に陥り、原油増産に応じたのかどうかわかりませんが、その後、原油価格は暴落して現在40ドル台です。 そしてもう一つは、ペンス副大統領がハドソン研究所で行った「政権の対中政策」演説です。あの演説で米国が何を考えているのか、明確になりました。

   状況次第では、早晩、米中貿易戦争は終わるとの期待もありましたが、すべて吹き飛びました。

   あの演説で示されたのは、米国の大きな転換です。リーマン・ショック以降、米国は経済の危機対応に追われていましたが、それもようやく終わり、政治の季節になったのです。米国の中枢は、経済的に多少不利益があったとしても、世界の政治地図を塗り替える方向にシフトしたのだと思います。

   つまり、「リスクオン」ではなく「リスクオフ」の世界にこれから入ります。

   10月以降の株価の軟調は、そうしたことを理解したファンドマネージャー、投資家からの戻り売りで頭が重くなっていきました。ここ最近の急落は、ペンス演説とは無縁に思われますが、大きな大きなトレンドの転換を前提に考えると、納得できる動きだと思います。

2018年は1ドル100~123円レンジとみていた

2018年は「トランプ減税」の効果があった!?
2018年は「トランプ減税」の効果があった!?

   さて、ペンス演説を前提にすると、今後の為替相場はどうなるのでしょうか――。

   自戒の意味も込めて、2018年、私がどのような相場観を持っていたのか。そして、それがどうなったのか、そこから振り返って考えてみたいと思います。

   まず、2018年の今ごろ、私はドル高円安の相場観を持っていました。トランプ減税が実現し、2018年の米国は高成長を享受することが目に見えていました。米国の金利が上昇することも、米ドルの上昇をサポートすると考えました。

   トランプ政権2年目は、貿易問題が俎上にのぼるとの警告も一部シニアのトレーダーから指摘されていましたが、2017年12月時点では、それがどの程度大きなインパクトを持ち、2018年相場に影響を及ぼすかは、正直よくわからないところでした。

   おそらく、好調な米国経済を背景にまず円安方向を試し、120円超えもあり得ると考えました。しかし、金利差から見ると円安は十分あり得る話なのですが、通貨の持つ購買力を考えると、110円台でも十分すぎるほど円は割安でした。

   日銀が発表する実質実効為替レートでみて、現状の円のレベルは1985年のプラザ合意前の弱さまで来ています。よって、120円を大きく超える円安は難しく、最終的に購買力平価で見たドル円の適正レートである1ドル85~90円方向への動きに戻るだろうと。すなわち、最初は円安で123円、後半は揺り戻しの円高で、100円近くまで戻すこともあるのではないかと現在考えていました。

   つまり、1ドル100~123円レンジ、コア105~120円と見ていました。

米国経済、減税効果はどこいった?

   ところが、実際のドル円レートにはその後、どのようなことが起こったでしょうか。年明けすぐ、日銀が超長期債購入減額というニュースが飛び込んできました。2017年11月に黒田東彦総裁が「リバーサルレート」に言及したこともあり、日銀の政策転換!? との思惑から円高が進みました。

   また、「中国当局者、米国債購入の減額、もしくは中断を推奨」というニュースも流れました。中国は貿易戦争を警戒し一歩先に手を打ってきたのかなと思いました。米国債は下落、米長期金利は2.4%前後から2.9%前後へと急騰しました。

   しかし、そうした米国の金利上昇のなか、ドル円は下落していったのです。

   米長期金利の上昇は、リスクパリティファンド(各金融商品の変動率などから計算し、リスクの低いものに多額の投資、高いものに少額投資するファンド)、そしてVIX(恐怖指数)先物をショートしているファンドからのストップロスも誘発し、米国株が急落しました。

   またその頃、ダボス会議に参加するムニューシン財務長官が「ドル安は貿易赤字の改善に役立つ」などと、ドルに対して口先介入的な動きもありました。ドル円は想定とは裏腹に、年初円高が進み、1ドル104.56円を試しました。

   とはいえ、2018年の米国経済には強みがありました。減税効果によって、猛烈な経済成長をすることが確実視されていました。加えて、約100兆円という巨額の自社株買いが出てくることも推察されていました。

   米国株は下げ止まり、その後10月の高値に向けて順調に上昇しました。ドル円相場のほうも安定。巨額のM&Aなどに支えられ、1ドル104.56円を底値に115円近くまで値を戻しました。私も、何度かこのままドル円は上昇軌道に乗るのではないかと思いました。「円安のセカンドステージ」(J-CASTニュース会社ウォッチ 2018年10月4日付)リンク:https://www.j-cast.com/kaisha/2018/10/04340369.htmlという内容の記事も書きました。

   ところが、そこでペンス副大統領の演説がありました。その後の展開は、ご存知の通りです。(志摩力男)

(つづく)

志摩力男(しま・りきお)
トレーダー
慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券など大手金融機関でプロップトレーダー、その後香港でマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現役トレーダーとして活躍中。
最近はトレーディング以外にも、メルマガやセミナー、講演会などで個人投資家をサポートする活動を開始。週刊東洋経済やマネーポストなど、ビジネス・マネー関連メディアにも寄稿する。
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