2024年 4月 20日 (土)

キャッシュレスは「地方」から伸ばせ! 「&Pay」のMTIが地域金融機関と組むワケ?

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   お金の支払い手段、「決済」が大きく変わろうとしている。決済手段には、クレジットカードのほか、すでに楽天EdyやiD、QUICPayなど電子マネーに加えて、SuicaやPASMOといった交通系ICカード、さらに最近はQRコードを使ってスマートフォンの画面をかざすだけの新しい手段が急速に広がっている。

   政府が「キャッシュレス化」を推進していることもあり、2019年は新たな決済手段が花開く1年になりそう。なかでも、「QRコード」によるモバイル決済はブームともいえる盛り上がりを見せている。

  • 2019年、モバイル決済時代が到来する!?
    2019年、モバイル決済時代が到来する!?
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群雄割拠のQR決済 PayPay にLINEのつばぜり合い

   QRコード決済は、小売店側が紙やタブレットで表示するQRコードを、お客が自身のスマホアプリで読み取ったり、あるいはお客がスマホに表示したQRコードを小売店側がタブレットなどで読み取ったりしてお願いで金の支払いを済ませる仕組み。

   お客が事前に、自身のクレジットカード番号や、銀行の預金口座の番号などを登録しておくことが必要だが、小売店側はクレジットカードのようにカードの磁気情報を読み込む端末機を設置する必要がないので初期投資がかからず、導入しやすいメリットがある。

   先駆けは金融プラットフォームを企画・運営するベンチャーのOrigami。その後、楽天やLINEなどが進出。KDDIや、みずほフィナンシャルグループも参入予定とされる。

   「100億あげちゃうキャンペーン」で話題となった「PayPay(ペイペイ)」は、ソフトバンクとヤフーが出資した合弁会社。このキャンペーンは2018年12月4日にスタート。PayPayの利用で支払額(買い物金額)の20%還元と、10~40回に1度の確率で支払額がすべて還元される。

   どんな商品を買っても20%OFFになるので、家電などの高額商品が売れに売れ、家電量販などはちょっとした「特需」となった。お祭り騒ぎになったことで、開始からわずか10日で終了。それと入れ替わるように、ライバルの「LINE Pay」が20%還元の「PayトクSpecial」キャンペーンを、12月14日から31日まで実施した。

   熾烈な利用者の獲得競争が浮き彫りになった。

スマホ×銀行口座でキャッシュレスをもっと身近に、安全に

   そうしたなか、エムティーアイ(MTI、東京都新宿区)は金融機関の預金口座と直結したスマホによるQRコード決済サービス「&Pay(アンドペイ)」を、2018年10月23日から一般消費者向けに開始した。

   金融機関との連携の第1弾は、茨城県を主な営業基盤とする地方銀行大手の常陽銀行(水戸市)との提携によるもので、茨城県内の個人商店や飲食店を中心に利用できる。MTIと常陽銀行は、2018年度内に利用可能な店舗(加盟店)を1000社とすることを目標とした。

   また2019年1月下旬からは、第2弾として、6か月の予定で北海道を営業基盤とする第二地銀大手の北洋銀行と、セイコーマート大通ビッセ店とアインズ&トルペ大通ビッセ店で実証実験を開始。さらに、2020年までに国内300の金融機関と連携を進め、全国で「&Pay」が利用できるようにする。

   MTIが提供する「&Pay」は、クレジットカード会社などの中間事業者を介さずに、銀行の預金口座とダイレクトに繋がる新しい決済・送金手段。セキュリティに配慮された安全性の高さが特徴で、日常に身近で保有者の多い銀行の預金口座とスマホを「結びつける」ことで、誰もがなじみやすくした。

   MTI執行役員・ソリューション事業部長の石山努氏は、「地銀との連携を強め、地道に47都道府県に取り組みを広めていきたい」と、意気込む。

   MTIが地銀に狙いを定めたワケは、都心部ではすでにクレジットカードや電子マネーが普及し、飽和状態になっていることがある。そのため、利用者の獲得が見込めず、事業の採算性が見合わない。大都市圏ではメガバンクを含め、銀行が参入する余地が少なく、二の足を踏んでいる。

   石山氏は、「クレジットカードが使えないお店はまだまだあるし、町内会費など現金の集金も頻繁にある。一方、銀行やコンビニATMが都心のように近くにないため、現金を引き出すのにも苦労している。そんな現金生活の不便さや不安、コスト高は地方ほど顕著で、そういう地域だからこそキャッシュレスの効果を享受しやすいのではないか」と話し、キャッシュレスのニーズは地方ほど高いとみている。

   同社は今後、「&Pay」の加盟店や特定地域で使える電子商品券や、現金の集金をスマホとQRコードで簡単に代替えできるサービスの応用を進める。「&Pay」を介する決済や送金で、「地域の生活者や事業者、金融機関などすべての人々を繋げ、これまでにない地域のコミュニケーションの創出や、地域コミュニティを強固なものとすることで地方創生に貢献する」としている。

飲み会のワリカンも現金いらず!

   「&Pay」を利用する消費者は、預金残高の範囲内で、利用規約上の上限額内であれば、繰り返し買い物できる。現金で支払う手間やストレスが軽減できるほか、その履歴をアプリでリアルタイムに確認できる。どれだけお金を使ったか、あとどれくらい使えるかが、スマホで簡単に「見える」ので、使いすぎの不安を払拭できるメリットが見込める。

「&Pay」で決済!(茨城県のプロバスケットボールチーム「茨城ロボッツ」のショップで)
「&Pay」で決済!(茨城県のプロバスケットボールチーム「茨城ロボッツ」のショップで)

   キャッシュレス化で、銀行は小銭などの現金管理や事務コストが削減できるほか、サービス内に蓄積された決済データを把握して分析することで、現金決済では得られなかった預金口座の保有者や地域の事業者のマーケティング情報を取得できるメリットがある。

   さらに加盟店では、現金の取り扱いが減ることや人手不足の解消などに加えて、販売実績などのデータが得られることで、来店客へのメッセージやクーポンの配布などの機能を活用して幅広くお客との接点を創出できる。

   お客の預金口座から直接代金が引き落とされるので、従来のクレジットカードや電子マネーなどで必要だったシステムコストが削減でき、安価な決済手数料を実現。それにより、個人商店での導入も可能にした。売上金は翌営業日、加盟店に入金されるので資金回収サイクルの短縮にもつながるなど、多くのメリットが見込める。

   じつは、「&Pay」の決済の仕組みが画期的なのは、残高や履歴の確認だけでなく、振り込みができる「更新系API」を利用していることにある。従来、銀行の預金口座の情報は参照系(たとえば残高照会、口座履歴の確認・閲覧する機能)だけだった。セキュリティの不安から、更新系APIの提供に踏み切れなかったが、2018年春の改正銀行法で、Fintech技術をもつIT企業と銀行との提携がやりやすくなった。それにより、口座情報の更新が可能になり、手動のアップロードなしにリアルタイムで資金が移動できるようになった。

   「更新系API」を決済手段に利用したのはMTIが全国で初めてで、小銭レベルのやり取りまでのキャッシュレスを実現できるようになった。つまり、個人間の現金の受け渡しもキャッシュレスで可能。たとえば、飲み会でのワリカンもキャッシュレスで分け合えたり、イベントや祭りの露店では持ち合わせの小銭がなくても支払えたりできるわけだ。

   「&Pay」の個人間の送金機能は今後実装する予定。

2019年、キャッシュレス決済は一気に開花する!?

   2019年10月、消費税率が8%から10%に上がる。政府は消費増税に伴う景気対策として、中小の小売店で消費者がクレジットカードや電子マネーを使う、キャッシュレス決済で商品を買ったときに、増税分の2~5%をポイントで還元する考えを明らかにしている。

   その一方で、政府は2025年には現在18%しかないキャッシュレス決済比率を40%まで引き上げることを目標としてもいる。今年は国内でキャッシュレス決済が、急速に進む契機となる可能性がある。

   MTIの石山氏は、「キャッシュレス決済がクローズアップされるなか、当社は地域金融機関と連携した『&Pay』で地方のキャッシュレス化を推進するとともに、20年以上にわたって提供してきたヘルスケアサービスなどと連携を図り、決済とあらゆる生活シーンをつなぐことで人々の暮らしをより豊かにしていきます」と、胸を張る。 

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