2019年 11月 15日 (金)

2019年の世界経済「米中戦争」でお先真っ暗? 正月の新聞社説予想を読み比べると......

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   平成最後の年、2019年の世界経済と日本の景気はどうなるのだろうか――。新聞各紙は元旦から1月7日にかけて今後の行方を予想し、経済立て直しの具体策を提案する論陣を張った。

   経済専門の論説委員はどんな処方箋を下したか。主要新聞の社説を読み解くと、各紙の論調に微妙な差があることがわかる。

  • 世界経済はどうなる?
    世界経済はどうなる?

「いい加減」同士、米中政権の覇権争いで大混乱に

   まず、新聞各紙は2019年の景気をどう展望しているか。異口同音に「米国と中国の覇権争いによる混乱で世界経済は減速する」と厳しい見方をしている。その代表的な論調が読売新聞(1月1日付)だ。

「世界1位と2位の経済大国の対立は、安全保障や通商、ハイテクなど多岐にわたり、相当長い間続くと覚悟すべきである。『米国第一主義』のトランプ大統領への不安は尽きない。貿易赤字縮小という目先の利益を、外交や安全保障より優先してきた。ツイッターの言動は予測できず、政権運営の稚拙さは目に余る。(一方、中国も習近平国家主席がゆるぎない長期政権を築いており)日米両国とも頻繁に選挙があり、政権が変われば対中政策は揺れ動いた。中国は圧倒的に有利な立場にある。批判されても小手先の対応でかわし、相手国政権の交代を待てばよいからだ」

   米中双方の政権の強引さといい加減さが、世界を巻き込んだ長期の混乱に拍車をかけるというわけだ。朝日新聞(1月4日付)も米中は似た者同士だと指摘する。

「世界経済の環境の変容だ。それが今や米中の覇権争いの様相を帯び、保護主義的行動が公然と繰り広げられる。デジタル革命の進展でプレーヤーも変わった。米国発のグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなどの『プラットフォーマー』が人々のデータを握りつつある。中国企業も、国家との距離があいまいなまま存在感を高めている。米国と中国は、民主主義と自由の有無で大きな違いがある一方で、不平等の拡大と巨大な独占・寡占企業の存在では相通じる点もある。その浸透力が、世界に広がっている」

   日本経済新聞(1月1日付)は「世界経済は2018年後半から緩やかな減速」に入ったとして、米中以外の不安要因として欧州と中東に注目すべきだという。

「欧州連合(EU)は、英国が合意のないまま離脱するリスクに直面している。盟主のドイツはメルケル首相の政治的な影響力が弱まり、フランスのマクロン大統領も支持率低下に苦しんでいる。中東もサウジアラビア人ジャーナリストの殺害や、シリア紛争の泥沼化によって、不安定化が進む」

日経と読売「企業の内部留保450兆円を大放出せよ」

   毎日新聞(1月1日付)は、「カルロス・ゴーン事件」に代表される社会の不平等の広がりが経済の停滞を生むと指摘している。

「社内格差の理不尽さを象徴する出来事が米国で報じられた。ウォルト・ディズニー・カンパニーで、1万6400人もの従業員が、連邦法で定められた最低賃金を下回る収入しか得ていなかった。総額約4億2500万円を従業員に返すことで決着したが、同社のCEOロバート・アイガー氏は1人で、それもわずか1か月でこの金額を稼ぐ。世の中の仕組みが、富める者をますます豊かにし、労働者の努力は正当に報われないようになっている。不満が現状打破を唱える過激な主張に傾倒していった。
米国ではトランプ氏が大統領となり、欧州では極右政党が存在感を強めた。だが皮肉なことに、こうした反動が向かう先は、中間層や低所得者層の救済ではなく、孤立主義を通じた彼らの一段の困窮である。貿易や国外からの投資が細り、物価が上昇し、経済が活力を失って失業も増える。先進各国で社会の不安定化が進み、一段と経済が縮小する悪循環に陥る恐れがある」

   さて、それでは経済の活性化を図るにはどうしたらよいか。新聞各紙ともそれぞれ具体策を提案している。日本経済新聞(1月1日付)がまず注目したのは、過去最高額450兆円に達した企業の内部留保(貯金)だ。

   幸い日本企業の内部留保は潤沢だ。超高齢化社会で必要とされる医療・介護の技術や、環境技術など世界に貢献できる分野は多々ある。人手不足は生産性向上のチャンスともいえる。電気自動車の欠点を埋める次世代蓄電池の開発などでも世界をリードしてほしい。日本には他の先進国にない強みがある。中間層が分厚く、米欧でみられる世論の分断がさほどでもないことだ。日本の社会的、政治的な安定は突出した存在だ。

「9割を超える就職内定率が象徴する雇用の安定が下支えする。企業の新陳代謝や労働市場の流動性を高めつつ、分配政策などを活用し、この安定はできるだけ維持すべきだ。資本主義や民主主義の疲弊が海外で目立つが、日本はこのふたつの価値を守り、米中などに働きかける責任がある。それが国際協調の復権をもたらし、日本の活路をひらくことにつながる」

   つまり、分厚く、しかも分断していない中間層に日本経済の活路を見出すため、企業は積極的に巨額の内部留保を活用せよと呼びかけた。読売新聞(1月3日付)も内部留保を放出して、賃上げと非正規雇用の解消に努める責任が企業にあると強く主張する。

「幸い足元の企業業績は総じて好調で、利益は最高水準にある。企業の内部留保は過去最高だ。業績の良い企業は、従業員に利益を還元してもらいたい。賃上げの動きを、労働者の7割が働く中小企業に広げることも大切だ。同時に、非正規雇用の労働者をいかに正社員に登用していくかが課題だ。非正規の賃金は、30歳代前半で正社員の約75%の水準に、50歳代前半では半分程度にとどまる。これでは安心して働けない。企業には非正規雇用を少しでも減らし、正規雇用を増やす努力が求められる」

産経「日本発QRコードでキャッシュレスに」

   2019年10月には消費増税が実施され、消費の落ち込みと景気減速が心配される。そんな中で産経新聞(コラム主張・1月7日付)が勧めるのがキャッシュレスの普及だ。

「消費者にとってキャッシュレス決済には、手軽な精算や買い物した商品を後で点検しやすいなどの利点がある。小売店は釣り銭の準備や毎日の売上金を収納する手間が省ける。今では多くの事業者が新たな規格を提案し、利用者の囲い込みに躍起となっている。
そこで世界的に注目されているのがQRコード。四角い幾何学的な模様をスマートフォンで読み取れば、その場で決済が完了する。18年12月にはソフトバンクとヤフーが出資する『ペイペイ』が100億円の還元キャンペーンを展開し、家電量販店に長い行列ができた。こうした決済で広く採用されているQRコードを開発したのはトヨタグループのデンソーだ。
数千点の自動車部品を管理して効率よく生産する『カンバン方式』は有名だが、同社はそれを電子化するため、バーコードの10倍の情報量を持つ新たなシステムとしてQRコードを開発した。そして同社はこれを無料で開放し、世界で爆発的に普及した。中国では屋台や賽銭(さいせん)などでも使われており、日本企業の技術力の高さを裏付けた」

楽観論の日経、悲観論の朝日、リベラル路線の中日・毎日

   日本経済新聞(1月4日付)は「平成の次へ 新たなジャパン・モデルの構築を」で、盛りだくさんの提案をしている。

「ひとつ目は、リスクマネーの供給だ。官民ファンド改革を期待された産業革新投資機構のつまずきは残念だが、余剰資金の豊富な大企業の役割も大きい。最近は、KDDIのような大企業が相次いで社内にベンチャーキャピタルをつくっている。大企業が新技術やビジネスの芽に投資すれば、次世代を担う企業の誕生を後押しできる。新興企業が台頭すれば、それが刺激になり、既存の大企業も活性化するだろう。
もう1つは硬直した規制の見直しだ。たとえば米国では自家用車で乗客を送迎するライドシェアが日常の足として定着しているが、日本ではタクシー業界の反対で今も原則は禁止だ。運転に不安な高齢者が多く、公共交通も行き届かない日本の過疎地でこそライドシェアは威力を発揮するはずだ。政府はあらゆる課題をデジタル化で解決するという『ソサエティー5.0』を掲げるが、それにはビジネスの障害を取り除き、新規参入を容易にすることが重要だ」

   一方、こうした政界・経済界にハッパをかける日本経済新聞の明るい論調とは対照的に、朝日新聞(1月4日付)は「成長戦略は限界」と悲観論に満ちているように見える。

「日本経済の位置も変わった。購買力換算の1人当たりGDP(国内総生産)をみれば、米国やドイツとの差が縮まらない一方で、台湾に抜かれ韓国がほぼ同水準に迫る。もはやアジアで抜きんでて豊かな国ではない。バブル崩壊後の景気停滞とデフレは一段落させることができた。だが、企業の高収益の一方で『品質不正』が相次ぎ、経済の基礎体力をあらわす潜在成長率も大きくは上がっていない。
現政権はさまざまな『成長戦略』を掲げてきた。最新版は『ソサエティー5.0』だ。一つの未来図ではあるだろう。ただ、新産業の創出や生産性の向上は、市場の競争のなかで個々の企業が達成するのが基本だ。一国での計画経済が成り立つかのように、過剰な期待を寄せても空回りしかねない」

   また、中日新聞と毎日新聞は(ともに1月1日付)は、それぞれ「神話崩壊 廃炉の時代」(脱原発の推進)、「AIと民主主義」(AIの恐ろしさ)と、最先端技術を批判的にみる論調を張っている。

出口なき日銀の金融緩和に触れない新聞各紙

   ところで、出口の見えない日本銀行の金融緩和政策はいつまで続けるべきか。この点に関しては、はっきり「こうせよ」と主張する主要新聞はほとんどなかった。唯一、読売新聞(1月1日付)がこう触れただけである。

「直視すべきなのは、財政と金融の現状だ。長い不況に苦しみ、財政に依存し過ぎた結果、国と地方の長期債務残高は1100兆円を超えた。日本銀行の金融緩和も長引き、低金利で銀行が苦境に追い込まれる負の側面が目立っている。デフレから完全に脱却し、安定的な成長を目指す。同時に、財政再建に道筋をつけ、金融緩和の弊害除去を進める。政府と日銀、経済界が連携し、緻密な戦略を立てれば不可能なことではない」

   わかったようでよくわからない結論だが、異次元の金融緩和策が転換した場合、あまりに影響が大きすぎるためだろうか。(福田和郎)

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