2019年 2月 23日 (土)

自衛隊の人手不足が深刻 外国人に頼れない、活路は吉本のお笑い動画!

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   お国を守り、災害時の救援活動に欠かせない自衛隊の人手不足が深刻だ。同じく人手不足に悩む経済界では外国人労働者に活路を見出そうとしているが、「日本国籍を有する者」が採用条件になっている自衛隊ではそれもままならない。

   そこで自衛隊が「突破口」を見出したのが、若者に大人気のお笑いの殿堂「吉本興業」との強力タッグだった。隊員募集のPR大使に吉本のお笑い芸人を起用。その第1弾の動画「ジェイTube」を、2018年12月27日に防衛省の自衛官募集ホームページに公開した。自衛隊らしからぬ芸人を使った若者への斬新なアピール策、効を奏するだろうか。

  • 自衛隊×吉本動画作戦 ジェイTube始動!!(自衛隊募集ホームページから)
    自衛隊×吉本動画作戦 ジェイTube始動!!(自衛隊募集ホームページから)

海外派遣どころではない「定員不足」と「高齢化」

   平成30年(2018年)度防衛白書などによると、2017年3月31日現在、自衛官の定員24万7154人に対して現員は22万4422人で、充足率は90.8%。約1割も足りない状態だ。充足率は陸上自衛隊(90.0%)、海上自衛隊(92.9%)、航空自衛隊(91.1%)と、3隊とも定員を満たしていない。幹部・中堅クラスは比較的充足率が高いのだが、特に士長、1士、2士の「士」と呼ばれる一番下の階級の不足が深刻。その充足率は69.5%と7割を切っている状態だ。

   自衛官候補生試験の応募者数も、2013年の3万3534人から17年には2万7510人と6024人も減った。わずか4年間で22%も減少したことになる。これは自衛官の対象人口(18歳~26歳)が、1994年のピーク時の1743万人から、2018年には1105人へと、600万人減少したこともある。今後10年間でさらに100万人減ると予想されている。

   ちょうど減少傾向が深刻化した時期の2015年9月、安全保障関連法が成立。集団的自衛権の行使が可能になり、いつでも自衛隊の海外派遣ができるようになった。しかし、足元の自衛官の「人材力」がこのありさまでは、海外派遣の余裕があるのだろうかと心配になる。

   このため、自衛隊では2018年10月、募集対象者の年齢上限を26歳から32歳に引き上げた。また、普段は企業などで働きながら、災害時などに召集されて自衛官になる「予備自衛官」と「即応自衛官」の年齢上限をそれぞれ36歳から54歳、31歳から49歳と大幅に引き上げた。自衛官の「高齢化」が進んでいるのだ。

   第1弾の動画「自衛隊×吉本動画作戦 ジェイTube始動!!」 には、NON STYLEの石田明さん(38)と井上裕介さん(38)の2人が登場する。約5分間の動画は――。

   吉本興業東京本部に乗りつける1台の自衛隊車両。女性1人を含む4人の隊員が素早くクルマから降り、駆け足で会議室へ。打ち合わせをしていたNON STYLEの2人に敬礼、突然「極秘ミッションを命じる!」。石田、あわてる風もなく、「何をしますか?」。井上「飲み込み早いって」。隊員「運ぶ用意!上げろ!」。2人は担がれて自衛隊本部へ。

   石田がジェイTubePR作戦隊長に、井上が副隊長に命じられた2人。極秘任務とは、隊員たちの記念撮影をプロデュースすることだった。さっそく隊員たちの表情の「りりしさ」と「笑顔」をチェック。「おっ、りりしいね」「キュート!」「ナイス笑顔」。女性隊員に「可愛いっ!アイドルですよ~」。

   最後は並んで記念撮影だ。石田「LDHパターン(編集部注:縦に並んでらせん状に回転するポーズ)いこか」。最後の記念撮影で、ひとり遠くに外される井上。石田「あとで、合成で組み込んでおこうか」。井上「コレ、卒業写真か。何の撮影やねん」。動画には見物の自衛隊とおぼしき多くの笑い声が聞こえてきて、終始、アットホームな雰囲気だった。

自衛隊式ダイエット、サバイバル動画も人気

   J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じた、動画を企画した自衛隊陸上幕僚監部・募集広報係長の林田賢明3等陸佐はこう語る。

「今後も若い人が減少する流れは変わりませんから、募集は厳しい状況が続くでしょう。何とか若者にアピールする方法はないものかと、募集広報を担当する広告代理店とアイデアを出し合い、若者に人気の吉本興業とタッグを組んで、まず自衛隊に親近感と興味、関心を持ってもらうことを考えました。1月21日現在、2万9649回再生されました。3週間で3万回だから、とてもいい反応です」

   撮影では、NON STYLEの2人がアドリブを披露、自衛隊らしからぬナンセンスな動画に仕上がった。今後は、3月までに第2弾にフルーツポンチ、第3弾に尼神インターの登場を予定している。

   「募集広報は2017年度から、これまでのテレビCM中心から、完全にインターネットを通じた若者志向へと大きくシフトしました。SNSを活用することで若い人にアピールできると考えたものです」と、林田さんは語る。

   確かに自衛官募集のホームページを見ると、おもしろくて役に立ちそうな実用動画が目白押しだ。トレーニングやエクササイズに役立つ「本気の自衛隊体操の仕方」、たくさん食べてもメタボを防げる「自衛隊式ダイエット法」。そして、危機管理のプロ自衛隊員が伝授する、数々の非常時に生き残る知恵を紹介する「自衛隊LIFEHACK」。これは、地震発生時の逃げ方から正しい土のうの作り方、海でおぼれた時に着ている服で浮き袋を作る方法、冬山の寒さから身を守る方法、船酔いの防ぎ方などなど、緊急時のサバイバル方法が満載だ。

   こうした実用動画や「ジェイTube」動画のアクセス数は好調なので、いかに志願につなげていくかが重要と、林田さんはこう強調した。

「自衛隊というと、若い人が野山を駆け回るイメージがありますが、後方支援などさまざまな分野の仕事があります。通信や会計、語学など幅広い知識やスキルを学んで生かすことができます。国家公務員ですから福利厚生も充実しています。幅広い人材を期待しています」

(福田和郎)

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