2019年 2月 24日 (日)

その76【中国編】「お説教」が過ぎる注意書き「こんなものいらない!?」(岩城元)

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   桂林で中国人の仲間たちと「北京ダック」が売り物のレストランに入った。テーブルに着くと、いきなり写真のような注意書きが目に飛び込んできた。

   意訳すると――「桂林市『文明室』からご注意申し上げます」。この場合の「文明」は「礼儀正しい」「礼節がある」といった意味だ。また、桂林市の役所には「文明室」と称して、市民をその方向に導く部署があるのだろう。

   続いて、「ご飯や料理を食べ残さないでください。合理的に飲食し、文明的な食事を心がけましょう」。そう注意書きは主張している。

  • レストランのテーブルにあった「お説教」と「スローガン」。(中国・桂林市で)
    レストランのテーブルにあった「お説教」と「スローガン」。(中国・桂林市で)

料理をきれいに平らげる行為、中国では失礼

   もう20年近く前、新聞社を定年で辞めて東北(旧満州)のハルビンの大学で教え始めたころも、レストランでこんな表示をよく見かけた。それが今も続いている。

   中国人は昔から、食事に招かれた場合、料理をすべて平らげてしまうのは失礼だと考える。満腹しなかったと言っているみたいだからだ。招いたほうも、皿が空になっては申し訳なく感じる。そこで、料理を残すのが一種の「礼儀」になってきた。

   しかし、それは無駄でよくないことだというので、こうした注意書きが登場するのだろう。

   でも、こんな当たり前のことを食事の席でわざわざ言うなんて、「お説教」が過ぎるのではないか。おまけに、残すな...... の下には、やや小さい字で別の文があった。

   これは「スローガン」と呼んだほうがいいだろう。「人民有信仰 国家有力量 民族有希望」――「有」は「持つ」「持っている」「ある」の意。次の「信仰」はこの場合、対象が宗教ではなくて、そのほかのものへの「信奉」のことだ。つまり対象は共産党や政府なのだろう。

   仲間たちと北京ダックを食べるだけなのに、こんなお説教やスローガンと付き合わなくてはならない。中国ではこの種のものが街中に氾濫していて、前々回に書いた「社会主義核心価値観」も同じ類いである。

   ああ、イヤだ、イヤだ。日本ではこんなことはないぞ。一瞬、そう思ったのだけど、電車の駅での放送やポスターのことがすぐ頭に浮かんできた。

「説教好き」は日本も同じ

「まもなく電車がまいります。安全のため、黄色い線の内側でお待ちください」
「少しでもすいているドアからお乗りください」
「駆け込み乗車はおやめください」「電車から離れてお歩きください」
「歩きスマホは大変危険です」
「エスカレーターは手すりにつかまり、黄色い線の内側にお乗りください。特にお子様連れの方はご注意ください」
「自動改札機はゆっくりお通りください」

   箸の上げ下ろしまでいちいち注意されている感じだ。「分かってるよ、そんなこと」と言いたくなる。

   中国も日本も、中身は違うものの、「お説教好き」「スローガン好き」という点では、似た者同士のようである。(岩城元)

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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