2019年 11月 21日 (木)

その77「総合的に判断した結果」という理由 「こんなものいらない!?」(岩城元) 

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   新井浩文という俳優が2019年2月1日に「強制性交」の疑いで逮捕された。

   途端に、彼が出演した映画やドラマが一部を除いて次々にお蔵入りした。映画は公開が中止になったり、延期されたりし、放送後にインターネットで見られたドラマも配信が止まった。

  • 新井浩文容疑者の出演作品のお蔵入りを伝える2019年2月9日付の朝日新聞朝刊。
    新井浩文容疑者の出演作品のお蔵入りを伝える2019年2月9日付の朝日新聞朝刊。

作品には罪はない

   相次ぐお蔵入りだが、でも作品そのものには、なんの罪もないし、そもそも新井容疑者がひとりで作ったものでもない。しかも、過去の作品までもが対象になっている。だから、僕は公開の中止や延期、配信の停止自体がそもそも間違っていると思うのだけど、それ以上に納得できないのが、お蔵入りが「総合的に判断した結果」だという説明である。

   朝日新聞の報道によると、「NHKオンデマンド」で大河ドラマ「真田丸」など11作品の配信を停止したNHKと、「モンテ・クリスト伯」など7作品を配信停止にしたフジテレビは、ともにその理由を「総合的に判断した結果」と説明している。

   しかし、これだけでは、どういう根拠でお蔵入りになったのか、さっぱり分からない。「総合的判断」にあたってNHKは「世の中がどう見ているのか」を重視したそうだし、フジテレビは「社会的影響などを考えた」とのことだが、分かりにくさは一向に変わらない。

   少なくとも、三つやそこらは具体的な理由・根拠を挙げたうえで「総合的に判断した」と言うのであれば、賛否は別にして、言いたいことは分かる。しかし、それらがない「総合的に判断」だけでは、何も言っていないのと同じではないだろうか。

責任逃れでしかない

   僕が想像するところ、新井容疑者の作品を引き続いて流したら、たとえば「あんな悪者の出ている作品でカネもうけするなんて、けしからん」などといった批判や反発が出てくるのが、NHKやフジテレビは怖かったのだろう。

   だけど、そう正直に言うのは体面が悪くて恥ずかしい。そこで、「総合的に判断」という表現で逃げたのではないだろうか。責任逃れの発言と言えるだろう。

 

   そして、こんな無責任な言葉遣いが、今回の「お蔵入り騒動」に限らず、世の中のいろんなところでのさばっている。

   クレジットカードへの加入やローンの申し込みが断られるときも「総合的に判断した結果」である。国会で政権側が使うこともちょくちょくあるし、会社などの組織の中でも、上司が部下に向かって、そう言うことが少なくはないようだ。

   「総合的に判断した」と言うほうは、気分がいいだろう。中身はなくても、いかにも高度な判断をしたような気持ちにもなれる。「上から目線」である。しかし、言われるほうは、たまったものではない。相手が上司だったら、文句も言えない。

   とはいえ、こんな言い方をいつまでもはびこらせていては、世の中は少しもよくならない。組織の中の若手の諸君も、勇気を出して、「総合的に判断」の理由や根拠を上司に質していこうではないか。(岩城元)

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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