2019年 3月 26日 (火)

社長、上司、部下がギクシャク その打開策は「報・連・相」の「相」だった(大関暁夫)

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   19世紀の心理学者アルフレッド・アドラーは、「すべての悩みは対人関係の悩みである」という言葉を残しています。人との人の関係ほど難しいものはなく、相手とどのような間柄であっても悩みの生じない人間関係はない、と言ってもいいのかもしれません。

   確かに私が日常的に耳にする社長方のお悩みは、その相手が取引先であれ、部下であれ、ビジネスパートナーであれ、

「彼らの考えていることがわからない」
「その申し出に、どう対処したらいいのだろうか」
「機嫌を損ねずに、うまくやっていくのは難しい」

等々、対人関係に関するものが非常に多いと感じています。

   そして対人関係のお悩みを発した後に、社長方がよく口にするのは、「私が悩んでいるとも知らないで、いい気なものだ」といった愚痴。人は立場が上になればなるほど、対人関係の悩みは深くなるといえそうです。

  • 悩みは深い……
    悩みは深い……

「すべての悩みは対人関係の悩みである」

   組織の上に立てば立つほど、対外的には自社の経営に関わる重要な対人関係が多くなり、相手に人一倍気を遣うようになります。一方、社内に目を向ければ、自分以外の全社員が部下であり、その一人ひとりと「社長と部下」という対人関係が発生するわけです。

   特に中小企業では、大企業のように社長と社員の間に人事部が入るなり、所属長が入るなりして直接の対人関係が限られる、ということがありませんから、一層大変なのです。

   しかし、社長と部下との対人関係では、部下のほうが思い悩んでいるというケースも非常に多いものです。

「このままではまずいと思いながらも、社長にうまく説明する自信がなくて。それというのも、今言っても『余計な水を注すな!』と一蹴されてしまいそうなので言えずにいるのですが、このまま放っておくと上場計画の棚上げという最悪の事態もありそうで困りました」

   たまたま、昨日お目にかかった上場を目指すベンチャー企業の社長室長Tさんが、上場絡みで出資だ提携だと外から群がって、いろいろ持ちかけられる話のひとつに対して、すっかり相手を信用してその気なっている社長に、どのように伝えたら自分感じているリスクを理解してもらえるのか、困っている様子でした。

   この話を「今最高にやっかいなこと」であると吐露したTさんに、なぜ社長に対してストレートに言い出せないのか、コーチング的に突っ込んで、じっくり尋ねてみました。

   その結果Tさんから出てきた心情を要約すると、下手なことを言って社長の信用を失うのではないかという「立場を守る」気持ち。自分が正しいと思っている主張が受け入れられずに跳ね除けられた時に傷つく、自分の「プライド」あるいは「メンツ」。こういったものが邪魔をして、「やっかいなこと」として口をつぐんで悩んでしまっているのでした。

地位や信用を守るために「口を閉ざす」部下

   じつはこの流れ、先にあげた社長の対人関係上でのお悩み例にも、同じような原因があるように思います。

「彼らの考えていることがわからない」のは、社長の自分が否定されるのがイヤで相手の考えを聞こうとしないから。
「その申し出に、どう対処したらいいのだろうか」と悩むのは、下手な対処をすると社長としての威厳を失いそうな懸念はありながらも、意図的に黙殺しているから。
「機嫌を損ねずに、うまくやっていくのは難しい」と思うのは、機嫌をとるようなことをすると下手(したで)に出ているようで自分の価値を下げそうだから。

   それぞれ、そう解釈できるからです。

   ポイントはやはり、それぞれの立場がつくり上げたプライドやメンツが邪魔をした結果として、対人関係上で「やかっいなこと」と感じるものを生み出しているのではないかということなのです。

   部下は、上司との対人関係上で「やっかいなこと」に直面すると、主に地位や信用を守るために言うべきことを飲み込んで黙ってしまう。

   一方、上司における部下との対人関係上では、上司が自身のプライドやメンツを守る結果として無視したり、無理な命令を押し通したり。あるいはオーナー社長など自分よりも上席が存在しない絶対的立場では、感情にまかせて怒鳴り散らして威厳を保った気になってみたり、ということになりがちなのです。

   このようなある種の「保身」に邪魔された、コミュニケーション障害的な対人関係の打開策は、どのように考えたらいいのでしょうか。昨日のTさんとの会話から見えた解決のヒントは、なんとも初歩的な「報・連・相」(報告・連絡・相談)の「相」でした。

社長や上司ほど「報・連・相」が不足している

   Tさんからの心情の吐露を聞いた私からのアドバイスの趣旨は、「それは躊躇せず早急に社長に進言すべき」「ひとりで言いにくいなら、同僚に同意を求めて一緒に進言すればいい」といった内容でした。

   Tさんは、「自分の考えが正しいと認めてくれている人がいるとわかると、『やっかいなこと』が小さく思えてきました」と少し前向きになって、「とりあえず同僚の部長に話して、一緒に動いてみます」と、一歩前に踏み出すことができたようでした。

   組織人は、部長よりも取締役、取締役よりも社長といった具合に、職位が上に上がれば上がるほど守るべき地位やプライドやメンツが強くなり、結果として本来言わなくてはいけないことを話さない、話せない傾向が増してくるわけです。

   今回Tさんとじっくり話をしてわかった、その大きな理由のひとつは、上位職位の人は地位やプライドやメンツに邪魔されて「報・連・相」の「相」を意図的に減らしてしまっているのだということでした。

   新人研修などでは必ず指導する組織運営に欠かせない「報・連・相」ですが、立場が上になればなるほど減っていないでしょうか。特に「相」が減って発生する「やっかいなこと」を、そう思うにとどめて、放置していませんか。なかでも対人関係の「やっかいこと」は、組織の風通しを悪くし、機能不全にも陥れかねません。

   春を目前にして、社長や上司こそ新人の手本になるような「報・連・相」の実践を心がけてほしいものです。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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