2019年 11月 17日 (日)

iPhoneが日本で流行ったワケ それは「ちょいバカ戦略」の成功だった(気になるビジネス本)

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「ちょいバカ戦略 意識低い系マーケティングのすすめ」(小口覺著)新潮社

   日本人ほど「iPhone(アイフォーン)」好きは、世界でも稀らしい。国内出荷台数は1600万台を超え、シェアは半数を超えている(2017年度、前年比2.4%増の1626.1台。MM総研調べ)。

   発売は2008年。今では考えられないが、その当時は「日本ではスマホは流行らない」というのが大方の見方だったという。それが、誤りだったのは「意識低い系」の人々の視点を欠いたためだった。

  • iPhoneは意識低い系マーケティングでヒット
    iPhoneは意識低い系マーケティングでヒット

女子高生が火をつけた「iPhone」

   「意識低い系」とは、たとえば、すぐに「多数派」に迎合してしまうような「意識が低い」とされる価値観や視点を、無意識のうちに採り入れられることができる人を指す。

   iPhoneでいえば、アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズが、その「意識低い系」の人を取り込むにあたり、その立ち回りが絶妙だったらしい。

   ジョブズがiPhoneで「意識低い系マーケティング」を、どのように成功させたのか――。それはまず、使いやすさや音楽プレーヤーなどの多機能性をアピールして、いわゆるアップル信者や新しい物好きを取り込んで、シェアやプレゼンスを高めて、「みんな使っている」状況を現出した。

   製品が流行するサイクルには、一つの理論がある。それによると、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4段階をうまく移行してきたものが、ヒット商品と呼べるものになるのだそうだ。

   それぞれ購買層が異なり、導入期のそれは「イノベーター(革新者)」とよばれる、新しいモノならなんでも飛びつく人たちで、成長期を構成するのは「アーリーアダプター(初期採用層)」。こちらは流行に敏感に反応するグループで、いずれも「意識高い系」にあたる。

   このあと、成熟期に購買層となるのは、便利と評判なもの、流行っているものを欲しがる「意識」が「低い」とされる「マジョリティ」。そして、成長期と、この成熟期の狭間には「キャズム」と呼ばれる大きな溝があり、ここを超えるなんらかのバネとか仕掛けがうまくいったときに、ヒット商品になるわけだ。

   iPhoneでいえば、最初に発売された「3GS」や「4」に「意識高い」ユーザーが飛びつく一方で、「意識高い系」のジョブズ自らは、あえて意識の低いレベルまで降りてきて、iPhoneの魅力や使いやすさをプレゼン。日本では、友達と同じもの、他人と同じものを好む、「みんなが使っているものがいい」という女子高生がはからずもサポーターになり、大衆のユーザーを増やしていき、一大勢力になったという。

   もちろん、専門家らの評価も高く、いわゆる「通」にはウケがいいが、それ以上は広がらずに残念な存在になってしまうのは、ヒット商品の成長の過程で止まってしまうからなのだ。

高級トースターも「低い意識」を満たしてヒット

   「ちょいバカ戦略 意識低い系マーケティングのすすめ」の著者、小口覺さんは「ITや家電を中心にモノとビジネスのあり方をウォッチし続けてきた」ライター。トレンド雑誌やウェブメディアなどを活動の場にしており「ドヤ家電(自慢したくなる家電)」の名付け親としても知られる。

   さまざまなモノやサービスのヒットや空振りの成り行きを見守ってきて、ヒットした商品、成功した企業に共通するのは「ちょっと見はおバカでもその実したたか」に組まれた戦略があったことに気が付いた。それをまとめた。

   時代が昭和から平成に変わって、消費に意識の高さが持ち込まれ、「本物志向」とか「差別化」をキーワードに製品やサービスの売り込み、プロモーションがなされるようになったものの、それだけではヒットに結び付けることは難しい。

   現代では新興のプロダクトメーカーが、上流生活を演出する家さまざま家電製品を次々、市場に送り出している。そのうちの一つ、バルミューダ社は、ちょっと前までは「デザインやイノベーティブな機能を重視した製品」を展開していたが、2万円以上もする高級トースターで一躍有名になった。

   2000~3000円も出せば買える別メーカーのそれなりの製品が買えるのだから、その10倍もの金額で売れるワケがないと言われたが、堂々のヒット商品となり「トースター革命」ともいわれ、高級トースターをトレンドに押し上げた。

   雨中のバーベキューで焼いたトーストの仕上がりがヒントになり、スチーム機能などを備えて製品化した。

   著者は、同社がウリにしていたデザインなどに加えて「『おいしさ』というすべての人にある欲望、低い意識を満たすことでヒットした」と説明する

   ほかにも、現代のアイドル商法や「かわいい」商法、また「キティちゃんの仕事を選ばない戦略」など、意識低い系の心を動かす商法を解説。また、メルセデス・ベンツが購買層を若い世代にまで拡大できた、意識低い系のマーケティング戦略にも言及するなど、その内容は身近な分だけ興味深い。

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「ちょいバカ戦略 ―意識低い系マーケティングのすすめ― 」
小口覺著
税別740円

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