2024年 4月 23日 (火)

年収1000万円以上、残業無制限 「高度プロフェッショナル」たちのナマの声

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   今年(2019年)4月から実施される働き方改革法に関連して、「高度プロフェッショナル制度」(高プロ制度)が導入される。

   いわゆる「高プロ」とは、いったいどんな人なのか? 就職・転職者向け企業情報を提供するサイト「Vorkers」を運営するヴォーカーズの「働きがい研究所」が2019年3月12日に「高プロ対象者はどんな人?」という調査を発表した。月に最高140時間の残業をこなしながら年収2000~3000万円を稼ぎ、職場の「満足度」が極めて高いコンサルタントやアナリストらの姿が浮かび上がってくる。

  • 「高プロ」に多いコンサルタント(写真はイメージ)
    「高プロ」に多いコンサルタント(写真はイメージ)
  • 「高プロ」に多いコンサルタント(写真はイメージ)

「高プロ」の半分以上がコンサルタント業

   「高プロ」制度の対象者の職種や年収は、厚生労働省が省令で定めることになっている。2018年12月に省令案がまとまり、

(1)年収は、賞与を除いて1075万円以上。
(2)対象職種は、顧客の業務の相談に乗るコンサルト、資産運用・有価証券市場などの金融ディーラー、アナリスト、金融工学の知識を元に行なう金融商品開発者、新たな技術・商品・役務などの研究開発者など。
(3)企業側が出勤時間など業務上の具体的な指示をできない者。

などと決まっている。

   Vorkersの特色は、会員による入社した企業のクチコミ投稿だ。調査では、現職の社員による44万8510人の投稿から、このような「高プロ」制度の対象者のデータを集め、年収や職種、残業時間、働き方、そして職場の「満足度」などを調べた。

   その結果、「高プロ」の対象者は全体の0.7%(男性0.9%・女性0.2%)の3003人にとどまった。年代別では、50代に占める割合が一番多くて3.3%、次いで60代の1.8%、40代1.7%、30代0.8%と若くなるほど減っていく=図表(1)参照

図表(1)高度プロフェッショナルの年代別対象者(Vorkers提供)
図表(1)高度プロフェッショナルの年代別対象者(Vorkers提供)

   「高プロ」の対象者の職種を調べると、コンサルタント(専門職)が一番多くて50.2%、次いで金融(専門職)24.4%、機械・電気・電子・半導体(技術職)10.3%、化学・繊維・食品(技術職)8.7%となった=図表(2)参照。コンサルタントと金融関係だけで全体の4分の3を占めることがわかる。

   コンサルトが圧倒的に多い理由について、J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じたヴォーカーズの広報担当者はこう説明する。

「業界ごとの平均年収ランキングを見ると、コンサルタントはいつもトップクラスに位置します。それだけ一人当たりの生産性が高いため、高プロの対象者が多くなると考えられます。また、他の業界と比較して、実力次第で若いうちから高い地位を獲得することができ、人材の流動性も高いため、年功序列の固定的な企業より高年収の人材の割合が高いと言えます」
図表(3)高度プロフェッショナルの働き方
図表(3)高度プロフェッショナルの働き方

   職場の評価や残業時間、有給消化率をみると、面白い結果が出た。高プロ対象者の月平均の残業時間は約50時間と、全体の平均約37時間より13時間も多い。しかし、有給消化率は約50%と、全体の平均約44%より、6ポイントも多い。これは、メリハリをつけて効率的に休みをとっていることがわかる。

   また、「待遇の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」「20代成長環境」「法令順守意識」など、職場の評価に関しては、すべての項目で全体の平均を上回っている=図表(3)参照

   残業が長いことを除くと、不満なことはほとんどないように見える。これはどういうことだろうか。広報担当者は、こう説明した。

「一人当たりの生産性が高い職場なため、基本給のベースが比較的高給であるのに加え、仕事の結果や成果に応じてしっかりと還元される会社が多く、モチベーションが高いのです。また上昇志向の高い社員や優秀な社員が多く、刺激を受けながら仕事ができて、成長実感も得やすい。ただ、顧客に合わせる仕事のため労働時間をコントロールすることが難しく、長時間労働になりがちですが、働き方改革も徐々に進んでおり、残業時間の抑制や有休消化についても考慮される傾向になってきています」。

年収3000万円「成長しない限り在籍し続けられない厳しさ」

   では、具体的にどんなふうに働いているのだろうか。職種ごとの年収や残業時間、特にワークライフバランスを中心にした自分の働き方に関する意見などを紹介しよう。

(1)ファンドマネージャー(男性):在籍10~15年・年収1200万円。残業(月)30時間。有給消化率65%。 「中堅、若手のうちは部署異動の希望も比較的聞いてもらえる。会社の雰囲気は、若手のうちはプレッシャーを感じる場面が少ない。そのため自分自身が成長しようと主体的に動かないと成長機会が得られない。深夜に及ぶ残業はほとんどない。休日出勤もほぼない。基本的に育休なども取りやすく、ワークライフバランスは非常に良いと思う」

(2)投資銀行(男性):在籍5~10年・年収1200万円・残業60時間・有休消化率65%。
「若手のうちは、個人の数字(成果)がないのでモチベーションを維持するのはそれなりに大変。ワークライフバランスは非常に悪い。基本的にクライアント最優先で動くので、プライベートの約束をドタキャンすることもしばしばある。この点はどこの投資銀行も同じ雰囲気だと思う」

(3)コンサルタント(男性):在職10~15年・年収3000万円・残業80時間・有休消化率30%。
「日本を代表する企業がクライアントであり、その企業にインパクトを与えられる仕事はやりがいが大きい。グローバル企業であるため、自分が成長しない限り在籍し続けられない厳しさがある。ワークライフバランスは、平日の夜に何かプライベートの予定を入れるのは難しい。土日はたいてい休みにできるが、緊急時に対応が必要になることは年に数回はある」

(4)アナリスト(男性):在籍3年未満(現在退社)・年収2500万円・残業80時間・有休消化率90%。
「結果だけを見られ、その分高給になるため、稼ぎたい人はモチベーションがかなり上がると思う。私のいた頃は、ワークライフバランスが重視される前だったので、平日は遅くまで残業し、それでも残った仕事は休日出勤して片付けることをみんなやっていた。それが嫌で転職を考えました」

(5)コンサルタント(男性):在籍5~10年・年収1300万円・残業50時間・有休消化率60%。
「管理職以上になると、比較的自分の働き方を調整できるが、スタッフのうちはプロジェクトを効率的に進めることが難しく、ワークライフバランスが難しいと感じるだろう。とはいえ、非常に働きやすい環境で、組織もフラットなので、自分次第で働き方やキャリアの構築が可能だ」

月140時間残業の女性「ストイックに成長したい」

   女性でも、なんと月に140時間も残業する人がいる。

(6)アナリスト(女性):在職3年未満・年収1500万円・残業140時間・有休消化率10%。
「仕事に興味があり、成長意欲がある人にはとても良い雰囲気。チームによって若手をどのように育てるか、役割をふるかは異なるが、積極的に仕事をもらう姿勢があれば、とことんストイックに成長の機会を与えられ、やりがいを感じられる。女性を積極的に採用し、意図的に採用を増やそうという流れがある。プライベートは調整しにくい。夜8時前に帰れる日が月に1~2日あるかないか。睡眠時間が少なくても支障がない人や、自分の時間がなくても気にしない人にはよいが、そうでない人にはストレスになる可能性もある」

(7)ITコンサルタント(女性):在籍10~15年・年収1100万円・残業30時間・有休消化率50%。
「『出る杭は引っ張る』というのがモットーで、やりたい放題暴れたい人には打ってつけの会社だ。それで失敗してもとがめられることはあまりない。ワークライフバランス向上施策の定着により、男女を問わず働きやすくなった。しかし、全体的に業務量が多く、実質的に子を持つ女性が働きやすいかと言うと、まだ必ずしもそうとは言えないのが残念」

   ちなみに、「高度プロフェッショナル制度」については、昨年の国会での法案審議の過程で、「無制限に残業を強制する制度だ」「過労死を招く」などと、労働界や野党、メディアの間で批判の声が上がっていた。

   その点について、広報担当者は、

「あくまで、高プロの人材像がどういう人々なのか、Vorkers登録データから可視化した調査レポートです。制度に対しての賛否を言及するような視点から、調査をしていないことをご理解いただきたいと思います」

と語っている。(福田和郎)

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