2019年 4月 19日 (金)

社長が抜いた宝刀「私のやり方に反対なら、会社を去れ」 して、その後は......(大関暁夫)

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   家電量販店大手「ノジマ」の野島廣司社長が、M&Aで経営統合した子会社の社員を名指しで「こんなひどい店長がいるのかと思うぐらいひどい店長で、使い物にならない」と発言しました。

   その内容が、そのまま社内のイントラネットに掲載され、名指しされた社員が退職に追い込まれていたという事実が報道され、インターネットで非難が集中、炎上するという騒ぎが起こっています。

  • 社長が言っていいことと悪いことがある!?(写真はイメージ)
    社長が言っていいことと悪いことがある!?(写真はイメージ)

社長が言っていいことなのか?

   野島社長の子会社人材の批判は、社内だけでなく投資家を集めたIRミーティングの席上でも展開されたといいます。

   「(ITX社員の)良い人材と悪い人材の差が激しかった」。公の場で社内の恥をさらすかのような、こういった発言はいかがなものか。そんな批判がネットを中心として噴出したのです。

   この騒動を受けて同社広報は、「当社代表の野島廣司が感じたことは、よい事例も、悪い事例も従業員に対してオープンにすることで、業務の改善に活かすという社員教育の一環として行ったもの」との、野島社長の考えを代弁する見解を公表しています。

   ちなみに、本件を取り上げたネット記事などで繰り広げられた批判的なコメントは、以下のようなものです。

「社長ともあろう人が、名指しで社員批判ってどうなのよ。ひどい経営者だ」
「トップに公に聞こえるような声で関連会社の社員をディスたりされたら、社員たちはやる気なくすだろ。ITX再起不能」
「社長にイントラで批判された社員は、いたたまれずに退職したんでしょ。立派なパワハラ。社長こそクビだな」

   これらのコメントを見る限り、なぜ野島社長の発言がここまで騒ぎになったのかというのは、発言の張本人が「社長だから」ということに尽きるようです。

   社長という立場は、子会社の管理という観点から考えれば最高責任者であり、たとえ自分が立ち上げた会社ではなくとも、その責任者として皆に聞こえるような声で言っていいことなのか否か、ということなのでしょう。

業績悪化と社員の不満の板挟みで「爆発」

   以前、規模こそ違いますが、私の周囲でも似たような出来事がありました。二代目のN社長率いる機械設備設計会社のT社は当時、従業員50人ほど。高度成長の波に乗って伸びてきた先代の時代とは異なり、彼が会社経営を引き継いだ1990年代後半はバブル経済崩壊後の低成長時代に突入した折でした。

   大手企業も経費削減から、あらゆる業務におけるコストカットを実施して、外注費の大幅削減が行われ、T社もその煽りをモロに受けることになりました。N社長は本当に運悪く、会社を引き継いでからの数年間は右肩下がり一辺倒の業績で、必ずしも社長の手腕ばかりに問題があったわけではありません。しかし賞与の減額、給与手当の一部廃止などで業績の低迷を乗り切ろうとする経営方針に、社員の不満もくすぶりはじめてきました。

   社長は基本的に先代に見習って、番頭的役割のH常務を通じて指示を社内伝達。常務の裁量で社員をまとめさせつつ、動かしていました。H常務は職人肌の技術者で、あまり多くを語らないタイプです。

   業績が安定していた先代の時代には、このやり方で何の問題もなかったのですが、業績の急激な悪化による体制立て直しに向けて、社内の意識改革を図るためには常務経由の指示は社長の危機感が伝わりにくく、その一方で社員からの待遇悪化に対する二代目への不満も漏れ聞こえるようにもなり、N社長のストレスは頂点に達しました。

   社長は口にはしにくいことを伝えたかったからなのか、社員に面と向かって檄を飛ばすのではなく社員の危機感を煽るのに、全社員への一斉メールで厳しい言葉を書き連ねたのです。

   しかし、その書き方が悪かった。数名の具体的な社員の名前を挙げて、

「Aくんのような、ダラダラと期限を無視したような業務の進め方はダメだ」
「Bくんは何度も同じようなケアレスミスが多く余計なコストがかかっており、これが改まらないなら辞めてもらうことになる」

といったような、かなり過激な個人攻撃を繰り広げたのです。

50人ほどの社員が1年足らずで......

   この一斉メールに社内は騒然とし、焦ったH常務がなぜこんなことをしたのか、と社長を問いただすと、社長は涼しい顔でこう言ったのだそうです。

「辞めてもかまわないと思った社員の名前を挙げて最後通告して、他の社員に君たちもそうなりたくなければ危機感をもって働けとわからせたまで。だいたい、先代の恵まれた時代しか知らない君たちはぬるま湯に浸かった蛙なのだよ。このままでは徐々に周りの温度が上がってみな茹で蛙になってしまうから、冷水を浴びせたわけだ。私のやり方に反対するのなら、君も会社を去ってくれ」

   社長の考えていることは正しかったのかもしれませんが、やり方は明らかに間違っていました。

   H常務は当面の仕事を終えると、この3か月後に40年務めたT社を去りました。名指し指摘をされた社員数名はもれなく半年以内に転職しました。当然社内の雰囲気はますます悪くなりました。他の社員も次々退職。50人ほどいた社員は、1年足らずの間に半分ほどになり、仕事も激減しました。

   漏れ聞くところでは、今では10数人で細々仕事をこなしながら、実態は先代時代からの蓄えを食いつぶしているとのことです。

   社長が直接社員や特定部門を公に非難するということは、100%やってはいけないとまでは申し上げませんが、大きなリスクを伴うことだけは確かです。他の誰が言うのでなく、組織の総責任者である社長が個人を非難するということは、ある意味「天に唾する」ことでもあり、よほどの理由や覚悟がなければしてはいけないと思うところです。

   ノジマグループの今後には、一抹の不安を感じる次第です。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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