2019年 9月 23日 (月)

野茂投手もイチロー選手も彼らなしでは大リーガーになれなかった 「代理人」という仕事(気になるビジネス本)

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「代理人だからこそ書ける日米プロ野球の契約の謎」』(長谷川嘉宣著)ポプラ社

   メジャーリーグ、シアトル・マリナーズのイチロー選手が引退した。俊足巧打で量産したヒットは通算4257本。外野からホームベース上でのクロスプレイを演出したレーザービーム。その一挙手一投足が注目され、惜しまれつつも日米28年間の選手生活を終えた。

   プロ野球をめぐる平成回顧で、大きな流れをつくったとすれば、それは米大リーグへの挑戦だろう。きっかけをつくったのは、平成7(1995年)にロサンゼルス・ドジャーズに入団した野茂英雄投手といっていだろう。イチロー選手しかり、その舞台裏で重要な役割を果たしているのが「代理人」だ。

  • イチローが所属したマリナーズの本拠地、セーフコ・フィールド(現T-モバイル・パーク)
    イチローが所属したマリナーズの本拠地、セーフコ・フィールド(現T-モバイル・パーク)

50球団に手紙を送る熱意と行動力

   長谷川嘉宣さんは、数少ない日本人代理人の一人。米大手マネジメント会社、オクタゴンの野球部門環太平洋部長を務め、メジャーリーグで代理人として必要は選手会公認を得たエージェントだ。

   学生時代にバスケットボールプレーヤーだった長谷川さんは、米NBAのファンで、なかでもスーパースター、マイケル・ジョーダン選手に憧れていた。当時全盛だったジョーダン選手のプレーを生で見たいと、米国へ観戦旅行に出かけたほど。「NBAの試合を見て、スポーツがすでにエンターテインメントとして根付いていた米国文化にふれ、自分もこんな華やかなスポーツの世界で働きたいと思った」。

   そして、留学。スポーツ経営学科系で最も歴史があるとされるオハイオ大学スポーツアドミニストレーション学科の大学院で学ぶことを決めた。2000年に同志社大学を卒業。その年の6月に渡米して英語学校に入学。9月からは併せて大学院の授業が始まった。

   1年ほどして、スポーツビジネスの現場で働けるインターンの職を探した。メジャーリーグで日本人選手の活躍が目立ってきていることから、NBAではなく野球界に狙いを切り替え、マイナーリーグを含めて50もの球団に志望動機をつづった手紙を出した。

   そして、マイナー3Aの2球団から反応があり、そのうちの一つ、カージナルス傘下のメンフィス・レッドバーズと面接の運びに。まだまだ英語がつたなかったものの、熱意が認められたようで採用となり、実務の第一歩を踏み出した。

日本人代理人が明かす交渉の裏側

   縁あって働き始めたメンフィス。そのことを大切に思い、真摯に過ごした甲斐あってか、それに報いるような幸運に恵まれた。

   長谷川さんがインターンに採用されてから数か月後、その上部メジャーのカージナルスにオリックスから田口壮選手がFA移籍してきたのだ。しかも、田口選手はオープン戦で成績を残せずにメンフィスに降格したため、親しく交わるようになったそうだ。

   その後、田口選手の通訳をするようになりメジャーに帯同する機会にも恵まれた。そして、その代理人であるアラン・ニーロ氏を紹介され、これをきっかけにニーロ氏の元で代理人としての道を歩み始めるのだ。

   本書は、長谷川さんがその経験を振り返り、代理人になるためのプロセスや、その仕事の詳細を紹介しているほか、日米両国での契約・年俸交渉について個別の選手の具体例を引き、わかりやすく解説している。

   大物代理人として知られるニーロ氏は、米国で契約する日本人大リーガーも多く、日本で世話をしている外国人選手も少なくない。田口選手をはじめ、多田野数人投手、城島健司選手らをめぐっての、各球団との条件交渉、移籍交渉についての解説は、過去のことであるにもかかわらず臨場感たっぷり。城島選手の日本復帰をめぐって、その落着き先が阪神になった経緯は興味深い。

   日本人選手の大リーガー挑戦の「突破口」を開いた野茂投手は、大リーグ1年目の95年、13勝(6敗)してナショナル・リーグの新人王に選ばれた。その後、つくられた米映画「ザ・エージェント」では代理人にスポットが当てられ、主役を務めたトム・クルーズのカッコよさも手伝って、関心が高まったことは記憶に鮮明だ。

   野茂投手やイチロー選手をはじめ、日本人大リーガーは2019年、シアトル・マリナーズに入団した菊池雄星投手まで60人弱。「裏方」として、彼らをその職に就くまで、そして就いてからも、彼らと同じ「本場でやってやる」という強い気持ちで支えている。

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「代理人だからこそ書ける 日米プロ野球の契約の謎」
長谷川嘉宣著
ポプラ社
税別800円

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