2019年 11月 14日 (木)

欧州経済を立て直したドラギ総裁、最後の最後に飛び出すか?「再緩和マジック」!(志摩力男)

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   マリオ・ドラギ氏は、ECB(欧州中央銀行)総裁として傑出した業績を残してきた総裁です。就任早々利下げを敢行。しかもタブーとされてきた量的緩和政策にまで踏み込み、ユーロドルを1ユーロ=1.40ドル前後から1.05ドル前後へと押し下げ、低迷していた欧州経済を立て直しました。

   2017年6月には、ドラギ総裁自身、ポルトガル・シントラにおいて「デフレの力はリフレ(インフレ)の力に置き換わった」と、勝利宣言とも言えるスピーチをしました。

  • ドラギECB総裁は最後にどんなカードを切るのか!?(写真は、独フランクフルトのユーロタワー)
    ドラギECB総裁は最後にどんなカードを切るのか!?(写真は、独フランクフルトのユーロタワー)

不吉な「逆イールド」

   しかし、調子がよかったのは2017年まで。2018年初頭から欧州の製造業PMI(購買担当者景気指数)がジリジリ下落しはじめました。当初は原因不明でした。内需はそれほど悪くなかったので、基本的には一時的な軟調と判断され、ECBは予定どおり着々と量的緩和政策を2018年12月に終了したのです。

   ところが、先日発表されたドイツ製造業PMIの数字は衝撃的でした。予想を大幅に下回る44.7。2012年の欧州危機以来の数字です。

   あまりの数字の悪さに、米国の債券市場3か月物と10年物の金利が11年ぶりに逆転という、いわゆる「逆イールド」のおまけまで付いてきました。「逆イールド」になると、過去の経験則上、1年ないし1年半以内に必ずリセッションがやってきます。不吉です。

   私自身の意見としては、今回の「逆イールド」、あまり真剣に考えなくていいのではないかと思っています。過去、逆イールドが発生したとき、米国経済は好調でした。引き締めても、引き締めても景気が強い。政策金利(=短期金利)が上昇し続ける結果「逆イールド」になります。

   「逆イールド」になると、政策当局も引き締めを躊躇するので、しばらく様子見となりますが、景気が強い状況が続くので、株も上がるし、ドルも上昇したりします。しかし、強い景気もどこかで終りが来ます。そのとき政策金利が低下し始め、「逆イールド」も終わります。

   今回は、実体経済はそれほど悪くないのですが、中国や欧州が悪いので、そのうち米国にも景気後退の波が来るかもしれない。よって先回りして引き締めをやめるという判断を打ち出した結果、長期金利が下がり「逆イールド」となりました。

ドイツの10年債金利、日本と同レベルのマイナス0.1%

   ただ、だからと言って景気後退が絶対こないと言っているわけではありません。そのうち、やって来るでしょう。しかしながら、米国経済が相対的に他国よりもよい状況というのは、想像以上に長く続くのではないかと思います。

   ドイツ製造業PMIの悪化に、ドラギ総裁も動きました。3月7日のECB理事会では2019年中は利上げしないと、利上げ時期を先延ばししました。そして、27日の講演では「物価見通しに応じて政策金利の先行き指針を調整していく」。つまり、利上げ時期はもっと伸びると発言。しかも「必要ならば、マイナス金利の副作用の軽減措置を検討する」とまで発言しました。

   軽減措置まで発動するとなると、日本のように無限に低金利が続く状況までも考慮した発言とも受け取れます。欧州の市場金利は急低下し、ドイツ10年債金利はマイナス0.1%前後まで低下しました。日本国債とほぼ同様のレベルです。

   よく「欧州の日本化」と言われますが、事実、そうなっています。要は低成長で利上げできない。マーケットはすでにドラギ総裁が再緩和の「ドラギマジック」を出す前に、先取りしてしまっています。

ドラギ総裁の任期は2019年10月

   今回の欧州の景気低迷は、基本的に中国の低迷が欧州に波及しているからだと考えています。中国でバブル的なモノが消えたので、過剰消費の中で嗜好されたドイツ製の高級ブランド品への需要が減退したのでしょう。

   そうは言っても、欧州経済の「エンジン」であるドイツが不調に陥っているというのは痛い。ECBも金融緩和で手を打たざるを得ません。

   欧州には「イタリア」という爆弾が潜んでいます。イタリアがなぜ爆弾かと言うと、債務が大きく、成長がない(2019年、イタリアはマイナス成長になると予想されています)。それなのにポピュリスト政権で政策の方向性がままならない状況です。

   欧州各国の長期金利をみると、ドイツはマイナス金利、フランスは0.3%前後、スペインは1%前後というなか、イタリア国債の金利は2.5%です。市場はイタリア国債のリスクを非常に高く見積もっています。このままだと、債務が膨張します。しかし、緊縮財政にも限界があります。イタリアが欧州の最大のリスクになっているわけです。

   イタリアの金利を下げることが、欧州のリスクを下げることにつながります。2012年の欧州債務危機のとき、イタリア国債の金利は6%ぐらいまで上昇しましたが、ドラギ総裁の量的緩和政策の下では1.00~2.00%程度まで抑え込まれ、それが欧州景気を下支えしたといえます。

   ドラギ総裁の任期は2019年10月までです。残り少ない時間ですが、最後の「ドラギマジック」で量的緩和政策を発動する可能性があるかもしれません。

   ユーロドルはどこかで反発するのではないかと見られていましたが、欧州の金融政策転換が前提でした。転換はなく、しかも想像以上に長く低金利が続くとなると、ユーロの反発は見込めません。

   ユーロは、2016年の安値1.05ドル前後から、さらに下のパリティ(1ユーロ=1.00ドル)方向に行くのではないかと予想します。(志摩力男)

志摩力男(しま・りきお)
トレーダー
慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券など大手金融機関でプロップトレーダー、その後香港でマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現役トレーダーとして活躍中。
最近はトレーディング以外にも、メルマガやセミナー、講演会などで個人投資家をサポートする活動を開始。週刊東洋経済やマネーポストなど、ビジネス・マネー関連メディアにも寄稿する。
公式サイトはこちら
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