2019年 4月 24日 (水)

同時多発的に起業する 新しいベンチャー支援のスタイルをつくる「VERSUS」

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   アメリカ西海岸で生まれた「スタートアップスタジオ」という発想にヒントを得て、日本のエンターテイメント領域のスタートアップを支援する「VERSUS」(東京都新宿区)が、2018年11月末に設立された。

   その背景には、長年、日本の音楽・エンターテイメント業界での仕組みづくりやスタートアップ支援に取り組み、より良いアプローチを模索し続けてきたVERSUSの山口哲一社長の並々ならぬ想いがあった。山口社長の描く「スタートアップ支援」ビジネスについて聞いた。

  • 音楽業界からの転身(写真は「VERSUS」山口哲一社長)
    音楽業界からの転身(写真は「VERSUS」山口哲一社長)

イケてない音楽業界から、見えてきたモノ

―― VERSUSの事業内容について教えてください。

山口哲一社長「VERSUSは『エンターテイメント』×『テクノロジー』、つまり『エンターテック』をテーマにしたスタートアップ(起業)をサポートする会社として、2018年11月末に設立しました。
さまざまな人たちが集まって、新規事業のアイデアや課題を話し合ったり、考えたり、共有していくという『場』を提供すること、そして最終的には当社からベンチャー企業が育っていく環境を創るというのが事業の目的です。
当社の事業は、アメリカ西海岸で生まれた『スタートアップスタジオ』に発想を得ています。これは、ハリウッドのスタジオを意識したもので、スタジオで同時並行していくつも映画が作られるように、スタートアップを同時多発的につくりましょうというコンセプトなんです。知見も溜まり、人が集まり、インフラもできる――。結局は、『場づくり』なのだということを知り、日本にもこのコンセプトを導入したいと思いました」

―― 「VERSUS」のアイデアを、どのように得たのでしょうか。

山口社長「私自身は、学生時代からずっと音楽業界に携わってきました。自らがプロデュースする新人アーティストのために、徹底的にソーシャルメディアを研究して、活用していく中で、音楽・エンタメ業界のデジタル活用にも詳しくなっていきました。これが2007~2008年頃のこと。同じ頃、周りを見渡すと、以前はキラキラしていた音楽業界が、いつの間にかイケてない業界に見えはじめ、ビジネスモデルが立ちいかなくなっていることに気がつきました。
理由は明白で、当時、音楽業界を引っぱっていたレコード会社の経営方針が、デジタル化にとても後ろ向きだったこと。それを修正すれば、日本の音楽業界はむしろ有望だったのです。
とはいえ、音楽業界を内部から変えることには限界もあり、危機感は募るばかりでした。ただ、外部との連携や人材育成、新規事業のアドバイスなどを行うなか、2014年にエンタメ系のスタートアップを推進するコンテスト『START ME UP AWARD(スタートミーアップアワード)』に実行委員長として関わったことが転機になりました。
多くの産業にとっても、スタートアップの重要性が増しており、物事の枠組みやルール自体が変わりゆく時代の中で、新しいITサービスが出てくることが必要だと実感したのです」

―― この事業のビジネスモデルはどのようなものなのでしょうか。

山口社長「まず、無料セミナーやハッカソン、アイデアソンなどのイベントを数多く開催して、そこで人的ネットワークもつくります。同時に、専門家を巻き込んで市場を研究して、課題などを見出します。最初の段階を、『案件化』と呼んでいます。まずは、事業プランとプロダクトを徹底的に磨きます。
そのために、ノウハウや人的ネットワークを提供し、初期の開発費はVERSUSが拠出します。『案件』としての準備期間は半年以内。そこで投資家やベンチャーキャピタルから出資していただけるよう、きちんとした形にして、法人を設立するわけです。
半年経ってもダメだったら、案件は終了します。失敗しても、知見が溜まるので、やめても前進できるわけです。そして、うまく法人化できた暁には、初期投資として費やした部分について一定の比率で、株式を持つというのが当社のビジネスモデル。『VERSUS』が、スタートアップの会社のCo‐Founderとなるイメージですね」

「よしもとの芸人さん」もアイデア出しの協力を!

―― 吉本興業との連携は、どのように生まれたのでしょう。

山口社長「会社の売り上げは、スタートアップの会社の株式を現金化した時に初めて生まれます。なので、売り上げが立つまでに最低でも3~4年はかかるということを想定していました。その間のまとまった資金が必要なのですが、『今こうしたスタートアップの取り組みが、エンターテイメント業界でも、日本の産業全体にとっても必要だ』ということを、いろんな場で語っていたところ、吉本興業の大﨑洋社長が『やってみなさい。サポートするから』と背中を押してくださって、会社を設立することができました。
有識者で構成されるメンターの方にもサポートいただきながら、少数精鋭で運営していきます」

―― VERSUSの今後の目標を教えてください。

山口社長「グローバル化の波に押され、日本のエンターテイメント業界の従来のビジネスモデルが陳腐化しはじめている中で、グローバル市場で戦えるような対抗軸をつくりたいという想いがあります。
これから出てくるスタートアップは、おそらくアジアマーケットで勝負するということになりますので、アジアの起業家のネットワークなどをつくりたいと思っています。
また身近な面では、吉本興業のお笑い芸人さんに、事業創出に参加いただくことを考えています。具体的には、起業家とタレントによるアイデアソンなどを行う予定です。
エンターテック分野の知見とネットワークがアジアで一番ある「場」にして、スタートアップを成功させて、成功した会社が次のスタートアップをサポートするようなサスティナブルな取り組みを続けていければいいですね」

(聞き手:戸川明美)

吉本興業の大﨑社長に背中を押されて......
吉本興業の大﨑社長に背中を押されて......

なお、エンターテイメント領域に特化したスタートアップスタジオを展開するVERSUSは2019年4月7日、「起業ワークショップ2019春 ~インバウンド編~」を、東京・新宿の吉本興業・東京本社で開講する。
この起業ワークショップは、スタートアップビジネスプランを3か月(全7回)にわたって磨き上げる。優秀なアイデアはVERSUSの案件化検討の対象となり、実際の起業に即、結び付けることができる。


山口 哲一(やまぐち・のりかず)
エンターテック・エバンジェリスト、音楽プロデューサー
アーティストマネージメントからITビジネスに専門領域を広げ、2011年から著作活動をはじめる。エンタメ系のスタートアップを対象としたアワード「START ME UP AWARD」をオーガナイズ。プロ作曲家を育成する「山口ゼミ」やデジタル時代のコンテンツプロデューサーを育成する「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど、次世代の育成に精力的に取り組んでいる。
「デジタルコンテンツ白書」(経済産業省監修)編集委員
経済産業省「平成30年度コンテンツ産業新展開強化事業」検討委員


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