2019年 5月 21日 (火)

【企業のためのSDGs】いち早くSDGsに取り組む企業ほど、ビジネスチャンスが広がる

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   SDGs(持続可能な開発目標=Sustainable Development Goals)の17の目標は「People」「Prosperity」「Planet」「peace」「partnership」の「5つのP」で構成され、それぞれが連携している。この「P」を、企業はどのように取り組んでいくのだろうか――。

   企業のSDGsの取り組み促進を提唱する伊藤園の前顧問でCSR/SDGコンサルタントの笹谷秀光氏に、企業がSDGsに取り組む意義を聞いた。

SDGsは世界各国の政府が合意して取り組むことになった
SDGsは世界各国の政府が合意して取り組むことになった

SDGsはビジネスチャンスとリスク管理の両面ある

   ―― SDGsの「5つのP」を、企業が具体的に進めていくには、どうしたらよいのでしょうか。

笹谷秀光氏「SDGsは世界各国の政府が合意して、みんなでやろうということになっているのですが、活動の主体は企業であれ、ステイクホルダーであれ、義務ではありません。それぞれ、やれる人がやれることから、すぐにも着手してほしいということです。
では、なぜ義務もないのに取り組むかというと、理由は二つあります。『17の目標』は企業が活動するうえでチャンスがあります。ある課題に対処しようと考えることが、みなさんのビジネスチャンスにつながる可能性が高いわけです。『17の目標』で、その方向性が示すことができます。
たとえば、水に関する技術を持っている企業が水の課題について、いろいろな解決策を提示すると、とてもいいビジネスチャンスになります。エネルギー会社が求められているエネルギーの構造に適応できるとか、街づくりの企業が街づくりの持続可能な項目に対処するとか。それらがビジネスチャンスになる。社会課題を解決しながらビジネスを進めていけば、他社との差別化になり、競合他社との競争上も生かせます。そういう意味で、チャンスを探しましょうという、これが一つです。
その一方で、『17の目標』はリスクチェックの要素でもあります。たとえば、SDGsは女の子の虐待を許しません。モノを作るときに原料を調達したり製造したり販売したりする流れ、サプライチェーンの中で女の子を虐待しているような企業があると、すぐに退場になりますよというようなことが盛り込まれています。それをきちんとやらないとダメ。リスク面の課題としては、特に地球環境、労働慣行、人権侵害。このあたりが重要なリスク管理項目になっているわけです。
企業としては一方でチャンスを見出し、持ち味を生かした製品を作ったり、サービスを提供したり、その際にリスクに抵触しないように、きちんとリスク管理しながらやりましょうと。SDGsはその両方で使える内容なので、非常によくできたツールになると思っていますし、いち早く取り組む企業ほど、ビジネスチャンスが広がると思います」
 SDGsの「17の目標」
 SDGsの「17の目標」

「社会課題の解決」が企業の持続的経営につながる

SDGsは5つの「P」で構成されている(写真は、笹谷秀光氏)
SDGsは5つの「P」で構成されている(写真は、笹谷秀光氏)

   ―― CSR(企業の社会的責任)との違いがよくわかりません。

笹谷氏「確かにCSRに似ていますが、CSRは『企業の社会的責任としてやるべきことはやりましょう』ということでした。SDGsの、やるべき17の目標にはCSRに含まれていますが、それを一歩超えて『共有価値の創造』という概念(CSV=creating shared value)、これは社会課題にもいいし経済価値にもいいという、これを同時に実現しようという概念が持ち込まれました。
2011年にマイケル・E・ポーター教授らによって提唱されたもので、リーマン・ショック後、ゴリゴリの拝金主義的経済ではよくないね、といった反省があり、やはり社会課題にきちんと目を向けないと最終的には収益につながらないという考えが台頭しました。そこで『共有価値の創造』で経済価値を高めて、社会課題解決型の社会を目指そうと。そこで社会課題は何かということを国連が議論し、『17の目標』で示したわけで、この社会課題に着手すれば経済価値が付いてくると説いたのです。SDGSは、CSVであるということが本質であります。だからこそ、企業が戦略として使いやすいものになっているということですね」

   ―― 海外と比べて日本の企業の取り組み状況はいかがでしょう。

笹谷氏「少し専門的になりますが『SDGsコンパス』という、企業向けのSDGsの導入指針があります。導入へのステップをわかりやすく説いた手引きで、(1)SDGsと17の目標、169の取り組み項目とこれらの構造を理解することが第一歩。次いで(2)自分たちの事業と17の目標の関連性を洗い出すこと。(3)重点政策を選ぶこと。そして(4)目標(ゴール)を決めて進度を管理すること(経営に取り込む段階)。最後に(5)その取り組みの成果を、広くみなさんにお伝えすること、の5段階。東証一部の上場企業はこれを踏襲して進めており、個人的な感じとしては相当程度の企業が2段階、3段階あたりまで来ていますね。すでに理解の段階を終えて、紐づけ(2)がだいたいできていて、これを重点的に取り組もうというところや、経営に取り込んでいくというのが4番目なんですけれど、その次元に到達している企業もあります。
ただ、世界企業はもっと早い。多くの企業が5段階目までいっています。やれる企業が、やれるところから着手する動きに、とても敏感に反応しています。
日本もかなりの一部上場企業には浸透してきました。たとえば日本経済団体連合会(経団連)がSDGsを推進するために企業行動憲章を改定しました。持続可能な社会づくりということで、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ロボットなどの新たな技術を使って最新の社会課題解決を目指す社会を、経団連は『ソサエティ5.0』と言っていますが、その実現に向けてSDGsを関連付けることができるとしています。こうした流れが定番化にしてくると、SDGSは当然やるべきという認識が定着してきますよね」

   (つづく)

プロフィール
笹谷 秀光(ささや・ひでみつ)
CSR/SDGコンサルタント、社会情報大学院大学 客員教授

1976年東大法卒。77年に農林水産省入省。2005年環境省大臣官房審議官、06年農林水産省大臣官房審議官、07年関東森林管理局長を経て、08年に退官。伊藤園入社。10〜14年取締役、14〜18年常務執行役員。18年5月から伊藤園顧問。19年4月30日に退任。
19年4月から、社会情報大学院大学客員教授。
31年間の行政経験と10年のビジネス経験を活かし、企業の社会的責任、地方創生などのテーマを考える。特に企業ブランディングと社員士気の向上を通じて企業価値を高めるための理論と実践について、アドバイザー、コンサルタント、講演などを幅広くこなす。

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