2024年 4月 20日 (土)

「上司が認めた子連れ出勤に同僚が激怒」専門職女性の投稿に賛否...... 専門家に聞いた

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   「子連れ出勤を上司が認めたのに、アシスタントが嫌って『辞める』と言いだした。どうしたらよいだろうか」――。こんな専門職女性の悩みの投稿がネットで話題になっている。

   大事な会議の前に子どもがグズリ出したため、仕方なく子守りをアシスタントに頼んだら、「私の仕事は子守りではない!」と怒りを買ったのだ。「子連れ出勤」を認める会社が増えている今、どうしたら周囲の理解を得られるか、専門家に聞いた。

  • 子連れ出勤は受け入れられる?(写真はイメージ)
    子連れ出勤は受け入れられる?(写真はイメージ)
  • 子連れ出勤は受け入れられる?(写真はイメージ)

「ベビーシッターでもないのに赤ん坊を押し付けられた」

   話題になっているのは、女性向けサイト「発言小町」(2019年5月27日付)に載った「子連れ出勤、どうすればよかったか?」というタイトルの投稿だ。投稿者は6か月の子を持つ母親だ。「産休中」としているが、前後の文脈から「育休中」ではないかと推測される。投稿はこう始まる――。

「社内では私しかできない業務もあるため、前もって上司と計画し、産休中に私しかできない業務が入った場合は私が対応すること、その時に子供を職場にも連れてきてもよいことなどを取り決めました」

   そのため女性アシスタントを1人付け、補助の仕事を学んでもらっていた。事情はすべて説明済みで、彼女も採用面接の際、「子供好きなので、フレキシブルに対応します」と語っていた。事前にわかっているミーティングの際はベビーシッターを雇い、子連れ出勤は上司との簡単な会議など短時間で済む時にだけ限っていたのだ。ところが先月、クライアントとの急な会議が前日深夜に決まり、朝一番で子連れ出勤した。

「上司は『アシスタントにみてもらったら?』と言ったのですが、彼女の表情が険しくなったため、『ではグズったらお願いします。それまでは自分で抱っこします』と言いました。子どもがグズリ始めたので、アシスタントに『ごめんなさいね、お願いできますか?』と手渡し、会議は無事終了しました」

   ところがその後、アシスタントが突然「辞める」と言い出した。「ベビーシッターでもないのに、赤ん坊を押し付けられた。職場に子連れで来るのが非常識なのに、偉そうにしている母親も、それを受け入れている周りもおかしい」と怒った。彼女におわびのメールを送ると、「同い年なのに、そういう上から目線がムカつく」と返事がきた。

「私はどうすればよかったのでしょう?」

   と投稿は結んでいる。

   この投稿に関する意見は、見事なほど3つに分かれた。「投稿者が悪い」「アシスタントが悪い」「上司(会社)が悪い」の3つがほぼ同じ割合だ。

   「投稿者が悪い」とする意見の多くは、「アシスタントを子守り扱いにしており、不快になるのも無理はない」というものだ。

「子供の世話をさせることは業務外、しかもグズっている赤ちゃん。そこの緩さが不機嫌の原因では? しかもクライアントとの会議中とあっては断ることも出来ない。アシスタントはあくまで仕事のアシスタントであって、雑用係りでもベビーシッターでもありません」
「アシスタントの求人に『子守り含む』という仕事内容で募集したのかしら。彼女が言った『子供が好きなのでフレキシブルに対応します』というのは、あなたが子供を理由に休んでも大丈夫です、という意味では? 普通、子守りをさせられるとは思わないですよ」

   そもそも子連れ出勤が非常識という意見も目立った。

「会社に生後数か月の赤ちゃんを連れてくるなんて、ありえません。会社とあなたの間で話がついていても、嫌がる同僚は多いと思いますよ」
「私も専門職です。『軽い打ち合わせなので、子供連れでもいいから必ず来て』となじみの取引先にいわれ、6か月の子を連れて行きました。結果は、子供が泣いて仕事になりませんでした。周囲の反応も『あーあ』でした」

育休中なのに「子連れ出勤」させる会社も問題だ

   一方、「アシスタントが悪い」とする意見の大半は、「子連れ出勤は会社も認めたことなのに大人げない。社会人としての資質に欠ける」というものだ。

「一日中子守をさせたわけでもないのに、すぐに辞めるというようでは、これからも仕事に臨機応変に対応できません。さっさと辞めてもらえばいい」
「子連れ出勤はやむを得ない時だけで、かつ上司も納得の上のこと。アシスタントも最初からわかっているはず。そもそも『同い年なのに上から目線』発言はハラスメント。採用するべき人ではなかった」
「ニコニコ笑いながら、『ではお子さんが不安にならないように、ママが見える場所で控えていますね』と、赤ちゃんを抱っこしつつ会議を聞いて仕事を学ぶ度量がないのなら、どこでも勤まらないでしょう」

   産休(育休?)中にもかかわらず、投稿者に「子連れ出勤」をさせる会社の体制を問題視する意見も多かった。

「産休中は、働かせてはいけないのが原則なので、上司とあなたの間の、会社に出てくる際の取り決めがおかしいと思う。それに、そもそも特定の人にしか出来ない仕事があること自体が異常で、会社のリスク管理がなっていない」
「本当に会社として子連れ出勤を認めているの? 上司の一存だけで許されているのかも? 就業規則はどうなっているのかな?」
「社長や経営者でもないのに、あなたがいないと業務が回らないのがすべての元凶。『私しかいない......』という意識過剰さを感じます。後任を育てようとしない会社も問題ですが、あなたも頑張り過ぎて、それを妨げているのでは。あなたがいなくても対応できるように後進の育成をしておくべきでした」

   J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に、「子連れ出勤、どうすればよかったの?」論争の意見を求めた。

――今回の投稿騒ぎを読み、率直にどのような感想を持ちましたか?

川上敬太郎さん「投稿を拝見するだけでは、何が事実なのかがよくわからないというのが率直な感想です。たとえば『産休』とありますが、問題が発生したのは育休(育児休業)中だったのではないでしょうか」

「子連れ出勤」は賛成派と反対派で真っ二つ

――この投稿には対する意見は、「アシスタントを子守り扱いにした投稿者が悪い」「子供好きと言っておきながら無責任なアシスタントが悪い」「ほかの人材を育てなかった会社が悪い」という3つの見方に分かれています。それぞれの意見について、どう思われますか?

川上さん「どの意見も一理あると思いますが、事実が不明確なため、どの意見も決め手に欠けると感じます。投稿者が生後数か月の赤ちゃんを保育の素人に預けようとしたのであれば、それはそれで疑問に思います。しかし、『事情はすべて説明済み』というのが、アシスタントがベビーシッター業務も含めてできると承諾済みだったという意味であれば、アシスタントに非があるようにも思います。
   また、上司や会社に非がある可能性もあります。しかし、もし投稿者が育休中でも積極的に出社したいと主張したとか、会社側が投稿者の担当業務を他の人でも対応できるように体制を整えようとしたのに、投稿者が自分の仕事を奪われると解釈してしまい、それを回避したということであれば、一概に会社側を批判できないようにも思います」

――なるほど。単純に決めつけられないということですね。いずれにしろこれからは「子連れ出勤」が容認される時代がくると思いますが、その際、本人や会社側の注意すべき点は何でしょうか。

川上さん「子連れ出勤するご本人も、会社側も、子連れ出勤には賛否両論があるということを認識しておくべきだと思います。いま集計・分析中のデータですが、私たちが働く女性に『子連れ出勤をする側、同僚として一緒に働く側、それぞれの意識調査』を行なったところ、自分が子連れ出勤することに賛成の人は43.8%(反対56.2%)、一方、同僚として子連れ出勤者と一緒に働くことに賛成の人は55.1%(反対44.9%)でした。
意見が真っ二つに分かれている難しい問題なのです。今回の投稿では、上司がどの程度社内に周知したかはわかりませんが、簡単な周知だけにとどめず、環境整備や反対派の感情面への配慮も含め、事前に社内全体の十分な合意が得られた状態をつくっておくことが望ましいと考えます」

――「こういう時こそ、投稿者の夫が赤ちゃんの面倒をみるべきだ」とか「アシスタントが男性なら子守りを頼んだか?」といったジェンダー面での問題を指摘する意見も目につきました。

川上さん「そもそも女性である投稿者が無理をしてお子さん連れで出社しているように見えることから、女性だけの問題になってしまった印象を受けます。もちろん、男性も含めた働く人全体で考えるテーマだと思います。
家事×育児×仕事、すべてを一人で背負い込んでいるのか、投稿の端々から気持ちのゆとりのなさを感じます。前日深夜に決まった朝一番の会議に育休中でも出席しなければならないほど責任ある仕事。さらにアシスタントの顔色までうかがわなければならないとしたら、精神的負担はかなりのものでしょう。ご本人はもちろん、夫や家族、会社など、周囲の理解と適切でイーブンな協力体制が何よりも重要なのだと改めて考えます」

(福田和郎)

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