2019年 7月 21日 (日)

進まない「教育現場」の改革 教員はストレスでくたくた、精神疾患多く(鷲尾香一)

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   生徒への体罰、校内でのいじめへの対応、親からの子どもへの虐待に対する対応など、何かと批判の多い「教師」という職業だが、教師自身が受けるストレスも非常に多く、過酷な仕事でもある。

   このほど文部科学省が発表した「2017年度公立学校教職員の人事行政状況調査」には、教職員の実態が浮き彫りになっている。この調査は毎年行われており、47都道府県及び20指定都市の計67教育委員会を対象に調査している。そこから、見えてくるものは......

  • 学校の教室では……
    学校の教室では……

精神疾患者数、2017年度は5077人

   2017年度では、教職員全92万760人中、病気休職しているのが7796人、精神疾患による休職者は5077人もいる=下表(学校種別)を参照。

   なかでも、精神疾患による休職者は2007年度以降、恒常的に5000人前後で推移しているが、2017年度は前年度の4891人から186人の増加にとどまった。

   しかし、これらの休職者の数字に、1か月以上の病気休暇を取得した教職員数を加えると、病気休職者は約1万人も増加し1万7196人に、精神疾患による休職者は約3400人増加し8470人に跳ね上がる。

   病気療養に近い数の教職員が、精神疾患を患っているという実態には驚きだ。

※以下に、学校種別の病気休職者数と精神疾患者数のデータ(表は厚労省のデータをベースに筆者が作成。以下、同じ)を添付した。

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   この病気休職者と精神疾患による休職者は、男性の病気休職者が3212人(1か月以上の病気休暇を取得した教職員数を加えると6606人)、精神疾患は2308人(同3935人)、女性の病気休職者が4584人(同1万590人)、精神疾患は2769人(同4535人)となる。

   男性の全教職員数は44万5002人、女性は47万5758人とほぼ同数なので、男女の差なく、ほぼ同じ比率で病気あるいは精神疾患にかかっていることになる。

   また、職種別のデータは以下のとおり。職責が軽く、教育現場に近いほど、病気休職や精神疾患での休職者が増加することがわかる。現場の教師に如何にストレスがかかっているのかは明白だろう。

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体罰への意識低い、50歳以上の男性教員

   年代別のデータは以下のとおり。50歳代になると、明らかに病気休職者が増加するが、半面、精神疾患の休職者はどの世代においても、同じ程度の割合となっており、年代に関係なく、精神疾患者が発生していることがわかる。

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   このように、教職員は精神疾患を患うようなストレスを受けながら、教育の現場に立っている。筆者の友人の中学教師は、「教師と言う職業は本当に大変。よく夏休みが長くていいなどと言われるが、部活動の顧問や研修などで夏休みは、一般の会社員と同じ程度しか取れない。でも、やっぱり子どもが好きだから、この仕事が好きだ」といっている。

   そうした半面、懲戒処分または訓告などを受ける教育職員も多い。2017年度は5109人が処分を受けている。これは、2016年度の8038人からは2929人減少しているものの、おおよそ教職員200人に1人の割合で処分されていることになる。

   その理由で最も多いのは、意外にも「交通違反・交通事故」の2963人。次いで、児童・生徒への不適切な指導などの「その他」で1025人、世の中の注目度が高い体罰は585人、わいせつ行為は210人となっている。

   では、体罰の実態はどうなっているのか――。2017年の体罰発生件数は585件と懲戒処分または訓告などの処分を受けた教職員の人数と同数だが、その内訳は小学校で176件、中学校206件、高等学校189件、中等教育学校と特別支援学校を合わせて13件だった。

   しかし、被害を受けた児童数で見た場合には、小学校295人、中学校362人、高等学校369人、中等教育学校と特別支援学校を合わせて18人となり、児童数の合計は1046人となる。つまり、1回の体罰で複数(約2人)の児童が体罰を受けた計算になる。

   体罰を行った教職員の男女別では男性が512人に対して、女性は64人と圧倒的に男性教職員からの体罰が多い。年代別では、20歳代71件、30歳代137件、40歳代138件に対して、50歳代以上は239件と圧倒的に多く、年齢層が高いほど体罰を行う傾向があることが見てとれる。これは、学校で体罰が日常的に行われていた世代に近いほど、体罰に対する問題意識が低い表れかもしれない。

進まない教育現場への民間人の登用

   さて、若干視点を変えてみたい。安倍晋三首相の政権下では、女性と高齢者の活用、働き方改革などで、女性の社会進出を打ち出しているが、教職員に女性管理職はどの程度いるのだろうか。

   2018年4月1日現在で、女性管理職(校長、副校長および教頭)は1万2170人と前年同期から552人増加し、初めて1万2000人を超えた。その割合は17.5%と過去最高を更新して着実に増加している。

   その内訳では、校長が4837人、副校長が1087人、教頭が6346人で、副校長は初めて1000人を、教頭は初めて6000人を超えた。

   半面、残念な結果となっているのが、学校・教育現場の改革として注目を集めた教員免許を持たない民間人の登用だ。

   2018年4月1日現在で、教員免許はないが「教育に関連した職業」を10年以上経験した人の登用は、校長52人(小学校34人、中学校・義務教育学校10人、高等学校3人、中等教育学校・特別支援学校5人)、副校長では113人となっている。一方、教員免許もなく、「教育に関連した職業」も未経験の純然たる民間人では、校長64人(小学校35人、中学校・義務教育学校10人、高等学校17人、中等教育学校・特別支援学校2人)、副校長ではわずか5人だ。両者を合わせた校長数は116人、副校長数は118人となる。

   これは、2016年同期の校長140人、副校長119人、2017年同期の校長123人、副校長115人と比べた場合、副校長数はほぼ同数で横ばい傾向にあるが、校長数は明らかに減少傾向にある。

   校長・副校長へのなり手が少ないのか、学校側が門戸を開いていないのかは定かではないが、明らかに民間の力を借りた学校・教育現場の改革が進んでいないといえそうだ。

   こうした教職員の実態をみると、精神疾患での休職者数の多さや、依然として体罰やわいせつ行為が行われていること、民間の力による学校・教育現場の改革が進んでいないことがわかる。

   子どもたちが健やかに育っていくために、今一度、教育現場のあり方を考えるべきではないか。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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