2024年 4月 25日 (木)

【IEEIだより】福島レポート 災害時の混乱と「法」の遵守 災害と医学研究 災害時の情報収集と法律・ガイドライン(2-3)

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倫理審査委員会の問題点

   患者さんの情報を集める場合には、

(1)その情報に含まれる患者さん全員に同意を得る(オプトイン)
(2)その患者さんであることがわからないような、しっかりとした処理(匿名加工)を施す
(3)患者さんに通知をして、データ提供を拒否されなければデータを提供できる(オプトアウト)

の、どの方法を取るべきか、研究者が各施設の倫理委員会に申請し、その倫理委員会で承認を受ける必要があります。

   しかし、読んでいただければわかるように、法や指針には曖昧な文言も多く、人よって解釈が大きく異なります。

   また、倫理審査委員会の委員は、必ずしも法律の専門家ではありません。その結果、同じ研究計画でもある施設の倫理審査では承認される別の施設では承認されない、などということが、頻回に起こるのです。

   特に被災地では臨床研究の経験の少ない施設や自治体も多いですから、倫理審査の議論が紛糾することが多かったようです。またそれ以前に倫理委員会の設置そのものが難しいことすらありました。たとえば避難所で診療を行った診療録を保管方法が定まらない、どの倫理委員会に申請すればよいかわからない、などの理由で研究者に提供することができないという事例も、少なからず存在します。

   また、福島においては、情報提供に慎重にならざるを得ない場面も多かったと思います。たとえばある大学にデータを提供することで、「御用学者に味方している」といった批判を受けるのでは、という懸念です。

   このため倫理審査委員会が承認に対して慎重になる、という場面も見受けられました。これは決して倫理とは言い切れない観点ですが、自施設の運営を守る、という点ではやむを得ない判断であったかもしれません。

 

   これは倫理審査委員会が多くの場合自施設内に設けられている、という問題点もあると思います。自施設の申請につき本当に客観的な判断ができるのか。あるいは、倫理以外の判断根拠がしばしば混在してしまうのではないか。承認した結果生じ得る問題の責任の押し付け合いになってしまわないか。そのような問題を解決するためには、倫理審査委員会の在り方もまた検討されるべきなのかもしれません。

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