2019年 8月 19日 (月)

たった一人に翻弄されるトランプ相場の「異常」 「為替操作」の真犯人はオマエだ!(鷲尾香一)

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   世界でもっとも権力を持つ、たった一人の人間に、世界中の市場が振り回されている。

   ドナルド・トランプ米国大統領だ。通常、大統領や首相といった立場の人間は、市場動向や金融政策にはコメントしないものだが、トランプ米大統領にはそういった常識は通用しない。自らが平然と金融政策や為替水準に口出しをしてくる。

   筆者は毎週初に1週間の株式相場と為替相場の見通しを書かせていただいている。マーケットを見て40年近くなるが、これほど見通しを書くのが難しく、また見通しが当たらないのも稀なことだ。今回は、多少なりとも拙稿を参考にしていただいている読者に、反省と言い訳を含めて、マーケットの現状をまとめてみた。

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    マーケットはホワイトハウスの住人に翻弄されて……

トランプ米大統領、追加利下げを催促

   何しろ、トランプ米大統領が気分次第で、ツイッターでつぶやくと世界中の市場の流れが変わってしまうのだから始末に負えない。しかし、トランプ米大統領の動きには、米大統領再選への道筋が見て取れる。

   7月31日、米国のFOMC(米公開市場委員会)は10年半ぶりの利下げに踏み切った。利下げの実施も、利下げ幅の0.25%も、すでに市場に織り込まれていたから、市場が大きく動くことはないと市場関係者の多くは見ていた。

   ところが、米ニューヨーク・ダウ平均株価(NYダウ)は急落。その後、為替相場では急激な円高が進行した。NYダウの急落は、市場が9月にも追加利下げがあると予想していたのに反して、ジェローム・パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が記者会見で「長期にわたる利下げ開始を意味するものではない」と発言したことへの失望売りだった。

   半面、為替市場では、米利下げ幅が小幅であったことや、パウエル議長による追加利下げの否定により、日米金利差の縮小に歯止めがかかるとの見方から、ドルは一時1ドル=109円台へドル高・円安が進んだ。

   だが、市場はすぐに裏切られることになる。トランプ大統領がパウエル議長の金融政策に対して、即座にツイッターで不満を表わし、追加利下げを催促したからだ。これで米国の9月追加利下げの観測は急速に高まった。為替相場では急激な円高が進んだ。

   追加利下げの観測が強まったのだから、NYダウは反発してもおかしくない。ただ、そうはならなかった。トランプ大統領が「対中制裁第4弾」を、9月1日に発動すると発表したためだ。世界経済は米国景気の悪化を懸念し、NYダウは急落。つれて日経平均株価も下落した。為替市場ではリスク回避のドル売りにより、円高が一段と進行した。

「利下げ圧力」のもう一つの理由

   米国大統領として再選を目指すトランプ大統領にとって、米国景気の悪化は最大の障害だ。しかし、「アメリカ人の仕事をアメリカに取り返し、強いアメリカを実現する」ことをアピールしてきたトランプ大統領にとって、貿易不均衡の改善が必要だ。中国と「貿易」で戦争しながら、米国景気を悪化させないためには、利下げによる景気の下支えが不可欠となる。

   さらに、トランプ大統領がFRBに利下げ圧力をかけ続けている理由には「ドル安誘導」という別の理由も存在する。ドル安は米国の貿易赤字縮小に寄与する。

   米国では財務省が年に2回、為替報告書を議会に提出する。この報告書は、米国の主要貿易相手国が、故意に為替操作して自国通貨安を誘導していないかを調査するもので、日本はその「監視対象国」として毎回、監視対象国に指定されている。

   しかし、他国に対して自国通貨安を誘導していると非難する米国は、トランプ大統領自らが利下げを利用した自国通貨安を目論んでいる。

   8月5日、人民元が1ドル=7人民元の節目を超え、人民元は過去最低水準となった。トランプ大統領は、すかさずツイッターで「これは『為替操作』だ」と吠え、米国財務省は同日、中国を為替操作国に認定した。

   前述のように、為替操作国の認定は通常、年に2回の為替報告書で行われる。それ以外で認定が行われるのは、極めて異例だ。米中は「貿易戦争」に加え、「通貨戦争」も突入した。

   果たして、「トランプ・リスク」はいつまで市場を混乱させるのだろか――。

(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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