2024年 4月 26日 (金)

スマホ決済のユーザーはこんな人 キャンペーン、ポイント「お得」に敏感!?(J.D. POWER)

提供:J.D.Power

   PayPayやLINE Pay、楽天Pay、メルペイ、OrigamiPay 、FamiPay......。QRコードやバーコードを使ったスマートフォン決済サービスを提供する各社が、2019年10月1日の消費増税を目前に、キャンペーンを展開している。便利さをアピールして利用者を増やそうという狙いがある。

   こうした大々的なキャンペーンに加え、キャッシュレス化を促進したい政府の「旗振り」もあって、時代の寵児となった「スマホ決済」。とはいえ、そんな華々しいイメージとは裏腹に、まだ4人に1人程度しか利用していない実態を前回はお伝えした。

   今回はJ.D. パワーの「2019年QRコード・バーコード決済サービス顧客満足度調査」から、QRコード・バーコード決済を実際に利用した消費者の「生態」に迫ってみた。

  • 急速に広がるスマホ決済
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爆発的なキャンペーンの威力

   利用者の多くはいつ、どのようなきっかけで、QRコード・バーコード決済を使い始めたのだろうか――。

   J.D. パワーの調査結果をみると、主に利用しているQRコード・バーコード決済サービスアプリを、スマホにダウンロードした時期は、「半年以内」が全体の3割弱で最も多かった。一方で半年以上前にダウンロードした消費者は全体の2割だった。

   また、サービスを利用し始めた理由は「ポイントが付与される」が55%、そして「各種キャンペーンが魅力的だった」が50%。2018年10月頃から2019年初頭にかけて話題をさらったPayPayなどの100億円規模のキャンペーンをきっかけに、多くの消費者が利用を始めたことは想像に難くない=下図参照

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   そんな大規模キャンペーンの陰に隠れがちだが、じつはスマホ決済サービスの中には、2018年より前にローンチしていたサービスもある。しかし、この調査結果を見る限りは、利用者の多くは半年以内に利用を始めた「ビギナー」だ。いかにキャンペーンの影響力が大きかったか、よくわかる。

   しかも、キャンペーン一辺倒でダウンロードしたままかと思いきや、利用頻度も低くなく、半数以上のユーザーは1週間に1回以上利用している。

   男女別にみると、1週間に1回以上利用する男性が約6割に対して、女性の場合は約4割と、男性の利用がより頻繁だ。これは単純に性別で利用意向に差が出ている可能性もあるが、男性のほうがスマホ決済に対応している店舗の利用率が高い、もしくは女性の利用頻度が高い店舗ではスマホ決済対応がまだ普及してないというケースも想定できる。

   たとえば、コンビニではスマホをかざして決済するシーンをよく見かけるが、主婦層がよく利用するスーパーや食料品店ではまだスマホ決済は一般的でない。こうした差が、性別による利用頻度の差をもたらしているのかもしれない。

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ユーザーの満足度はどこで差がつくのか?

   スマホ決済サービスの利用者の満足はどこで違いが出てくるのだろうか。J.D. パワーの調査では、総合的な顧客満足度を構成する主な5つの要因(ファクター)で分けて、それぞれがどの程度、総合満足度に影響を与えているかを明らかにしている。

   調査によると、以下円グラフのとおり、最も満足度に影響を及ぼすファクターは「キャンペーン/ポイントサービス」(26%)、「決済手続き/管理」(26%)であることがわかる。過去に類を見ない100億円規模のキャンペーンの影響力は調査結果にも如実に表れたといえる。

   一方、「セキュリティ/不正利用防止対策」は14%、「利用できる店舗・ウェブサイト」は16%と、メディア報道での取り上げ方と比べて、利用者の満足度への影響は強くないようだ。また、「アプリのアカウント設定」は18%だった。

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   ところで「決済手続き/管理」とは、どのようなことを指すのか、もう少々深く掘り下げたい。調査では、(1)アプリ起動時の障害発生の経験(2)QR・バーコード読み取り時の障害発生の経験(3)利用内容や残金の確認しやすさ――の3項目について、利用時の状況を聞いているが、アプリ起動時、バーコード読み取り時に障害を経験した割合がそれぞれ1割程度存在した。また、7割弱は利用履歴や残額を「確認しやすい」と答えていることから、多くの利用者が、快適に使っていることがうかがえる。

   大々的なキャンペーンに目を奪われがちだが、本来は決済手段の一つである。そのことを考えれば日々の利用でいかに不自由なく快適に使い続けることができるかを、サービスを選ぶ基準の一つに据えるのもありだろう。

スマホ決済の「優劣」をつけるカギは......

   では、スマホを使ったQRコード・バーコード決済が普及するカギは何だろう――。J.D. パワーの調査では、約9割の人が継続して利用したいと答えており、また回答者の半数以上は今後、利用金額を増やしていきたいと考えている。

   この結果を見る限り、既存ユーザーは今後の利用におおむね好意的だ=下図参照

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   一方で、セキュリティ不安の払拭は課題だろう。前回の記事では、キャッシュレス決済の利用経験の有無に関わらず回答者の50%は「不正利用されるのではないか」とイメージしていたが、QRコード・バーコード決済の利用経験者であっても66%の人はキャッシュレス決済のセキュリティに不安を感じている。特に女性はセキュリティ意識が高いのか、74%、すなわち4人に3人は不安を抱えているのだ。

   セキュリティ不安の解消が重要であることは論を待たないが、特に女性が安心して利用できるセキュリティ体制の構築とその訴求は、一つの差別化ポイントになり得るかもしれない。

   キャンペーンは魅力的でわかりやすい。しかし、未来永劫続くことはないだろう。決済機能の使いやすさや消費者に安心を与えられるセキュリティと、幅広い利用可能店舗網の構築などが、今後は決済手段としての「優劣」をつけ、かつ消費者の心をつかむカギになるのかもしれない。

J.D.POWER
本社は、米国カリフォルニア州。顧客満足度(CS)調査、コンサルティング、CS向上教育・トレーニングの専門機関。独自のインデックス・モデルを使って顧客満足や顧客経験の構造を明らかにして正確に測定・指数化する。世界の19 のオフィスで、800人以上のアナリスト、統計専門家、エコノミスト、コンサルタント、消費者行動のエキスパートからなるチームを組成。インドや日本、中国、シンガポールなどのアジア圏のほか、北米、豪州、ドイツ、英国など、世界中で顧客満足に関わる情報を消費者と企業に提供する。
調査対象は、自動車、金融、保険、携帯電話、ホテルのほか、ITソリューション、OA機器、自動車部品など多岐にわたる。
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