2024年 4月 20日 (土)

「時短は同僚に迷惑、菓子折り持ってこい」上司に言われた女性の投稿が話題に 専門家に聞いた

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   時短で働きながらも資格習得の勉強を頑張る女性が、男性上司との面談でその旨を伝えると、「時短で迷惑をかけているのだから、職場に菓子折りを持ってきたら」と言われて大ショックの投稿が大炎上している。

   キャリアアップの相談も「旦那がいるんだから、頑張らなくてもいいじゃん」と一蹴され二重にショック。回答の中には「上司のいうことが正しい」という意見が大半だが、「菓子折り強要はパワハラだ」という指摘も。

   時短で働く人はキャリアアップの勉強も許されないのか。専門家に聞いた。

  • 時短ママは職場のお荷物?(写真はイメージ)
    時短ママは職場のお荷物?(写真はイメージ)
  • 時短ママは職場のお荷物?(写真はイメージ)

「時短がキャリアアップの勉強をしてはいけないの?」

   話題になっているのは、女性向けサイト「発言小町」(2019年9月27日付)に載った「働くママたち!男性上司からの嫌味」というタイトルの次の投稿だ。

「私は26歳子持ち共働きです。キャリアアップを目指し資格勉強しながら時短で働いています。先日部長面談がありました。そこで、資格勉強していること、キャリアアップ目指していることを部長へ話しました。しかし、部長の返事は私の想像していたものではありませんでした」

   部長は、資格勉強やキャリアの話には耳を貸さず、こう言ったのだった。

「我々のフロアはコミュニケーションが足りない。時短勤務の人が早く帰り、残った仕事を他の人がやって文句が出ている。いざこざが起こるのはよくないよね。だから時短勤務の人は菓子折りを持ってきたりして、周りの人に気遣いをしないとね」

   「菓子折りでも買ってお礼を言え」と言われ、投稿者はがっかりした。そもそも自分の働き方は周りの機嫌取りをしないといけない働き方なのかと。投稿者は、キャリアアップについてさらに部長に相談した。すると、こうだった。

「旦那さん働いているのだから、そんなに頑張らなくていいじゃん。以上でした。え? 私のキャリアに旦那関係なくないっすか? 来年上場予定の企業ですが、辞めようかどうしようか悩んでいます」

と、結んでいる。

   この投稿に対して、「上司の言うことは当然、正論だ」という意見が8割以上に達した。こんな意見が代表的だ。

「部長の言葉は、周りが言えない本音でしょう。実際、時短さんや子持ちさんが迷惑をかけている職場は多いです。とりあえず、菓子折りと『ご迷惑かけてすみません』的な態度を示して損はありませんよ」
「菓子折り持参で機嫌を取れってか!旦那はキャリアに関係ないっしょ!あなたのそのような雰囲気が職場においてドヤ顔のようにとられているのを、上司が心配しているのでは?」
「会社としては、時短は員数外で、とにかく問題を起こさなければいい存在。時短でキャリアアップを主張されても、上司も困ると思いますよ。60%出力の人が120%目指すといっているのと同じ。1人前の働きができるようになってから言ってほしいと思っているのでしょう」

「大手企業なら一発で飛ばされるパワハラ発言」

   投稿者への反発の中には、

「時短の立場を利用して資格の勉強をするなんて周囲に失礼だ。そんな時間があるのなら、フルタイムで働くべきだ」

という意見が非常に多かった。そこでバッシングを受けた投稿者が再び事情説明をした。

「資格勉強の時間は電車の通勤中のみです。通勤時間がとても長いので、参考書を買って読んでいるのです」

   それでも批判の意見はやまず、ついにはこんなアドバイスが――。

「私も時短でキャリアアップの資格の勉強をしていましたが、面談の時には口が裂けても言えませんでした。潤滑油的にちょこちょこ菓子折りを持っていきました。帰るときは全員に声をかけて、申し訳なさそうにしましたよ」

   一方、「時短に対する理解が足りない」「上司の菓子折り発言は完全なパワハラだ」と、投稿者を応援する意見も2割ほど寄せられた。

「一部上場企業に勤務するアラフォーママです。いまどき自腹を切って菓子折りを持って来いという上司がいることに驚愕しました。完全にパワハラです。大手企業ほど、言わせないように上は指導しているのです。私の夫は私以上の大手で役職についていますが、この投稿を見せると、『働き方改革の時代にこんなこと言ったら、うちなら通報されて飛ばされるな』とビックリしていましたよ」
「育児と仕事を両立しながら資格取得の勉強をしているあなたの大変さを応援します。適当に時短して細く長く、と考えている社員より、よっぽど好感が持てます。上司は目先の人手不足しか考えず、あなたの能力に気づかないのです」
「上場企業で働いています。チームメンバー12人のうち時短の方は3人。時短の方には、限られた勤務時間内でできる仕事しか渡されていないので、周りの社員に迷惑をかけることはあり得ません。時短の方は人にもよりますが、限られた時間で成果を出そうと効率的に頑張っている傾向が高いです。だから、時短の方を見て、自分も働き方を変えようと意識する若い人も多いです。時短の方がいるから、必然的に夜の会議をしなくなるなど、良い面もあります」

「時短は職場のお荷物という決めつけは完全な誤解」

   J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に、この「時短の人は職場に菓子折りを持ってくるべき?」論争の意見を求めた。

――今回の投稿に対する反応を読み、率直にどんな感想を持ちましたか?

川上敬太郎さん「投稿者さんが勤める会社が、時短勤務者が当たり前のように活躍している環境であれば、問題にすらならない話だと感じました。一方で、まだまだ日本には同様の課題が多く、意に反して働きづらい環境を受け入れている人がたくさんいるのだと改めて思います」

――「菓子折りをもってこい」とか「旦那がいるのだから」などという上司の発言についてはどう思いますか。「パワハラでアウト」という意見がある一方、「菓子折りはコミュニケーションの大切さを訴えており、正論だ」という意見も結構多くあります。

川上さん「パワハラかどうかは、受け手側がどう捉えたかが重要なので、投稿者さんがパワハラだと感じたのであればパワハラに該当する可能性があると思います。確かに、周囲への気配りや阿吽(あうん)の呼吸というものは、人間関係を円滑にするために大切です。しかし、菓子折りを買うなど金銭を伴うことを強要するとなると、やはりパワハラの可能性が高いと思います」
「また、投稿者さんのキャリアの話なのに、『旦那がいるのだから』という指摘は完全に的外れだと考えます。旦那さんがいるか否かは関係ありません。そのような指摘がなされる背景には、働いて稼ぐのは夫の役割という旧態依然とした夫婦イメージがあり、部長さんはそのイメージに囚われているのではないかと感じます」

――「時短」=「職場のお荷物」という見方から投稿者を批判する意見が大半です。こうした時短に対する見方については、どのように考えていますか。

川上さん「フルタイム勤務こそが基本、という考え方が反転して、時短は職場のお荷物という固定観念をつくってきたと考えます。実際には、フルタイムで働いていてもお荷物の人はたくさんいるはずです。時短は職場のお荷物という決めつけは、優秀な人材が時短勤務しながら成果を出すための土壌づくりを阻害してしまうでしょう」

「時短で成果を上げるには自分をプロデュースする力を」

――投稿者を批判する意見の中に多いのは、「時短なのにキャリアアップの勉強をするのは権利の濫用」という考えです。時短の人が通勤時間中とはいえ、勉強してはいけないのでしょうか。

川上さん「まず原則としては、勤務時間外はお昼の休憩時間であっても、自由に使える時間です。権利の濫用には当たりません。ただ、通勤時間を使ってキャリアアップの勉強をすることに対してまで批判的な声が多いのには、大きく2つの理由があると思います」
「一つは、『時短』=『職場のお荷物』であり、時短勤務者は周囲に迷惑をかけるというイメージが前提になっていること。その前提に立つと、勉強に費やす時間を少しでも勤務時間に当てて迷惑の度合いを下げるべきだということになります。もう一つは、投稿者さんの資格取得及びキャリアアップが、会社や周囲の助けに結びつかないと思われている可能性があることです」

――なるほど。時短で職場に迷惑をかけているだけでなく、勉強時間を転職か何かの自分の利益だけに使っているではないかという反発ですね。

川上さん「そのとおりです。投稿者さん個人の利益にしかならず、会社や周囲の人たちの利益にはつながらないと認識されているとしたら、感情的に批判的な声が出てしまうでしょう。逆に考えると、投稿者さんの資格取得やキャリアアップが、会社や周囲の人たちの利益にもつながることを示すことができれば、周囲の反応も変わってくる可能性があると思います」

――今回の投稿騒ぎのように、時短の人が「職場のお荷物」という思い込みから抜け出るために、成果を出して見せるには何が大切でしょうか。

川上さん「成果を出して周囲に認めてもらうには、まず出すべき成果を明確にすることから始める必要があります。いつまでに、何をどのレベルでこなせばよいのかを洗い出し、上司や同僚と共有して目線を合わせることが第一歩になると考えます。そして、時短でもフルタイム勤務者と遜色ない成果が上げられるよう、ご自身の実力をつけることです。自分という人材をプロデュースする力が問われています。」
「実力のつけ方は、担当職務の内容によっても変わってきますが、仮に1日8時間働いている人が出す成果を100とした場合、いま1日4時間しか働けないのであれば、時間当たりの成果を2倍(生産性を2倍)に引き上げれば成果は変わらない計算になります。実際にはそのように機械的に測れるものではありませんが、考え方として認識した上で、フルタイム勤務者と遜色ない成果が上げられることを客観的に証明できるようにすることだと考えます」

――常に、具体的な成果のラインを意識して、レベルアップを目指すわけですね。

川上さん「はい。投稿者さんがもう少し周囲とうまく協調して、時短勤務者として周囲が認める成果を出し、会社が時短勤務者にとって働きやすい環境となれば、後進たちに大きな希望を与えることになります。もしそれが実現できれば、資格やキャリアアップの勉強の意義は大きいはずです」

(福田和郎)

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