2019年 11月 18日 (月)

【日韓経済戦争】「すわ、軟化の兆しか!」文大統領の母の死に安倍首相が弔電 驚きと期待の韓国紙を読み解く 

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   韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の母親が2019年10月29日に亡くなったが、すぐさま安倍晋三首相が「弔電」を送ったことが、韓国紙を驚かせている。

   韓国側から見て「頑なだった安倍首相の心が軟化した兆しなのか」という期待感が高まっているようだ。いったいどういうことか。韓国紙で読み解くと......。

  • 文在寅大統領と母親のカン・ハンオクさん(中央日報)
    文在寅大統領と母親のカン・ハンオクさん(中央日報)

文大統領「台風お見舞い」に安倍首相「大きな力になる」

   文在寅大統領の母親、姜韓玉(カン・ハノク)さんが亡くなったのは10月29日だった。享年92。死因は「老衰」と発表された。敬虔なカトリック教徒だった故人の遺志もあって、葬儀は与党・共に民主党幹部らを含む政界関係者の弔問や弔花をいっさい辞退する家族葬でいとなまれた。

   その葬儀場に駆け付けたのが、日本の長嶺安政駐韓大使だった。その時の模様を、中央日報(2019年10月31日付)「安倍首相、文大統領の母の死去に弔電...韓日関係と重なって『注目』」が、こう伝えている。

「10月30日、複数の与党関係者によると、長嶺大使はこの日午後5時30分ごろ、文大統領の母、故カン・ハノクさんの葬儀室を訪れた。長峰大使は弔問の途中で文大統領に安倍首相の弔電を手渡した。これは韓国政府が韓日関係の改善に向けた解決法を模索する時点と重なって注目される」

   葬儀場には、長嶺大使のほかに中国の邱国洪大使、ロシアのクーリック大使、米国のハリス大使も弔問に訪れた。文大統領は政界関係者の弔問は辞退するとしていたが、各大使から「ぜひ弔問したい」との意向が伝えられたため、外交官の弔問は受けることにした。一人ずつ弔問を受け、一人当たり約5分程度、立ったまま対話した。

   注目されたのは、その順番。青瓦台(大統領府)関係者によると、弔問は日本、ロシア、中国、米国大使の順に行われたという。母親の葬儀の場とはいえ、文大統領がいかに日本を重視しているかがわかる。

   文大統領は10月14日、日本の台風19号による被害に対してお見舞いと哀悼の意を示すメッセージを安倍首相に送っている。それに対する丁寧な謝意を示す返事も韓国メディアに期待感を抱かせるものだった。中央日報(10月31日付)がこう続ける。

「文大統領のメッセージを受け、安倍首相は10月23日、外交ルートを通じて『文大統領のお見舞いが(日本国民の)大きな力になるだろう』という内容の返答を韓国政府に送ってきた」

   こうした「安倍首相の軟化」を示す兆候もあって、韓国政府には日韓首脳会談に対する期待が高まりつつあった。聯合ニュース(10月30日付)「安倍首相が弔電 文大統領母の死去受け」がこう伝える。

「悪化している韓日関係を巡って韓国政府が解決策を模索するなか、安倍首相が弔電を送ったことで注目が集まる。韓国の李洛淵(イ・ナクヨン)首相は10月24日に東京で安倍氏と会談し、文大統領の親書を手渡した。康京和(カン・ギョンファ)外交部長官(外相)は10月30日、国会で親書の内容について、『首脳間対話はいつも開かれているという立場と、難しい懸案を克服して韓日の首脳が会えればいいという希望を表明したものと承知している』と明らかにしている」

   カン外相は、イ首相が天皇の即位礼に出席するため訪日した際、さまざまな活動を行ったことを明らかにしたうえ、安倍首相との間で「韓日関係を両国が重視しており、現在の難しい状況が持続してはならないという点を、はっきりと引き出したことが成果だった。また、外交当局間の持続的な協議を通じ、懸案を解決する努力を続けることで一致したことも成果だ」と強調した。

   カン外相自身はそうは語らなかったが、そうした「成果」が安倍首相の「弔電」と「台風の見舞いの謝意」につながったのだろうという期待が、韓国各紙の記事の行間にあふれている。

女手ひとつで2男3女を育てた文大統領の母親

   ところで、文在寅大統領の母親、カン・ハノクさんとは、どんな人物だったのか。中央日報(10月30日付)「煉炭配達して文大統領を育てた母親・姜韓玉さん死去」などによると、1950年の朝鮮戦争当時、現在の北朝鮮地域から韓国に逃れてきた「離散家族」の一人だ。その後、長男在寅氏を含む2男3女を生み、育てたが、北朝鮮に父母と妹を残してきた。文大統領が「北朝鮮寄り」の政策をとっているのは、母親の家族を北朝鮮にとられている「人質外交」のせいだと指摘する保守勢力もいる。

   文氏の父親は事業に失敗、早くに病死したため、カン・ハノクさんが女手ひとつで5人の子を育てた。救護物資の衣類を市場の屋台で売り、煉炭を家ごとに配達した。文氏は1日の食事が学校給食のトウモロコシのお粥一椀だけという極貧生活を送り、その学校も授業料が払えず、退学したこともあった。

   文氏の自伝には、「オモニ(お母さん)が引っ張っていた煉炭リヤカーを後ろから押しながら自立心を学んだ」「貧困の中でもお金を最高に思わないようにというオモニの教えが今に役に立っている」という記述がある。

   軍部が市民を弾圧した1980年の「光州事件」で、人権活動家だった文氏は逮捕された。「護送車が出発する瞬間だった。オモニが車の後ろに駆けてきて、腕をかき回しながら、『在寅(ジェイン)!在寅(ジェイン)!』と叫んでいた。一人でオモニを思う時、いつも思い浮かぶ場面だ」と自伝に書いている。

   さて、こうした韓国紙の「期待感」が一気にしぼむ報道が日本メディアから流れた。中央日報(10月30日付)「親書送ったのに...読売『安倍首相、11月に文大統領と首脳会談しない』」が、残念そうにこう伝える。

「安倍晋三首相が11月には文在寅大統領と首脳会談をしない方針だと伝えられた。10月30日の読売新聞によると、日本政府は大法院(最高裁)の強制徴用判決をめぐる韓国側の対応をもう少し『見守る必要がある』という次元からこうした決定をしたということだ」

   10月30日は大法院の判決の1周年にあたる。イ首相が安倍首相との会談で文大統領の親書まで渡し、「凍った川の下でも水は流れる」と対話に期待したが、日本政府は「国際法違反の状態は依然として是正されていない」と、さらに冷たくなっているのだった。

安倍首相の「友軍メディア」が韓国を貶めている

「友軍メディア」を利用していると韓国紙が指摘する安倍晋三首相
「友軍メディア」を利用していると韓国紙が指摘する安倍晋三首相

   中央日報はこう続ける。

「読売新聞は、日本政府内で一時韓国企業と韓国政府が慰謝料全額を支払えば、日本企業が自発的に韓国側に寄付する方式などの打開策も検討されたと伝えた。しかし韓国政府は大法院判決が日本企業の責任を明示しているだけにこうした案を受け入れるのは難しいという立場だ。外交界の一部では『両国が合意案を導出するためにかけ引きする過程で神経戦が激しくなっている。さまざまなアイデアの中で煮詰まっていない案をメディアに流したのではないか』との指摘も出ている」

   つまり、日本政府内の「安易に韓国と妥協してはいけない」という勢力が情報を新聞にリークして対話の可能性をつぶしにかかっているというのだ。

   さらに、翌日の中央日報(10月31日)「文大統領親書など隠密な外交情報、なぜ日本メディアにだけ報道されるのか」は、怒りの矛先を日本の新聞界にぶつけている。

「日本政府関係者によると、文大統領の親書には『近く二人で会って、未来志向の両国関係に向けて議論したい』と書いてあるという。10月25日付読売新聞の記事だ。親書の内容について、当時両国政府は会見で『親書をそのまま公開するのは外交慣例ではない』(韓国)、『親書なので内容を紹介しない』(日本)とした」

   「それなのになぜ親書の内容が日本の新聞に漏れるのだ」と、およそ情報をスクープしようとするはずの新聞記者らしからぬ論法を展開し、こう続ける。

「最高級外交の隠密な内容が日本メディアを通じて報道されるのは初めてではない。9月25日の日米首脳会談の際のトランプ米大統領の発言も同じだ。日米双方が『具体的な対話内容は説明しない』としたのに、フジテレビが『最近韓国は北朝鮮からも信頼されていないようだ』というトランプ大統領の発言を政府関係者発で報道した」
「8月末のG7首脳会議時は首脳らが全員参加した会談場でトランプ大統領が安倍首相を見ながら『韓国の態度はひどい。賢くない。金正恩(キム・ジョンウン)になめられている』と話したという内容が産経新聞で報道された」

   つまり、日本メディアはなぜか、韓国を貶(おとし)めるスクープを連発している。そして、それらをスクープした産経新聞、フジテレビ、読売新聞は「安倍政権の友軍メディア」だと指摘する。安倍政権が8年近く続き、特に首相官邸発の高級情報が友好メディアに集まる現象が加速化しているというのだ。

   特に産経新聞は、7月1日に発表された日本の輸出規制強化措置でもスクープ報道した。当時、日本外務省の核心幹部は中央日報記者の取材に対し、「正直どんな部品が規制強化の対象なのかは、(産経)新聞を見て知った」と打ち明けたという。

   最後に、中央日報はこう書いて悔しがるのだった。

「韓国と関連した日本政府内の動きや方針は、韓国に批判的な保守メディアに集中的に紹介されている。このほか政治部記者の数が段違いに日本の方が多いという点も無視できない要因だ。朝日新聞の場合、首相官邸担当記者だけで12人だ。韓国の新聞社の場合、青瓦台(大統領府)担当記者は多くても2人とは対照的だ。12人にのぼる担当記者が首相官邸内部の核心取材源を明け方から夜遅くまで『密着マーク』しているため高級情報への接近機会は増えるほかない」

   つまり、安倍政権の情報が韓国に批判的な「お友達新聞」に集中的に流れていること、そして、日本の新聞社のほうが、韓国の新聞社より圧倒的に取材力があることが、日韓の対立で日本側に有利に働いているというのだが......。

(福田和郎)

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